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キース様のお屋敷。
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キース様に愛していると言われた。
ドキドキしてその夜は眠れなかった。
次の日、キース様がわたしの部屋に迎えにきてくれた。
「俺はしばらく王宮に泊まり込みになる。俺の屋敷で攫われてしまったから怖いかもしれないけど君を攫う協力をした使用人達は捕まえた。新たに使用人全て身辺調査をして安心して過ごせるようにしたし、母上が隣の別邸を俺たちが住めるように改装してくれているんだ。良かったら改装が終わるまで母上と過ごしてはくれないだろうか?」
「アシュア様がお嫌でなければわたしはお邪魔させてほしいです」
「母上はエレファ様と親友だった。君のことを娘のように思っているんだ。君にエレファ様のことをいろいろ話したいと言っていた」
「お母様の昔の話聞いてみたいです」
王妃様やアシュア様とは学生の頃からの友人だと聞いている。お母様がこの国に留学している時に仲良くなったらしい。その頃のお話をアシュア様はしてくださった。
そしてお父様ともこのころ知り合っている。
これが不幸の始まりだったのかも。
もしお父様と恋をしなければこんな辛い思いはしなかっただろう。
ブラン王国のお祖父様はこんな酷いことをされたことは知らない。
亡くなった時、「こちらで一緒に暮らそう」と言ってくれたけどわたしは幼かったし、母の思い出の屋敷で暮らしたかった。
あの気持ち悪い記憶がなかったのもあるけど。
意地であの屋敷で暮らしたけど、楽しい日々なんてなかった。
でもお母様はわたしを守ってくれていた。お祖父様の悪の手から。
わたしに最後の力を振り絞って守ってくれた。
幼い頃お母様が御伽話のように話してくれた。
「お母様の生まれた国にはね、魔法があったの。もしかしたらダイアナにも魔法を使う力があるかもね?」
お母様の膝に座りわたしの頭を優しく撫でながら微笑んで話してくれた。
「わたしにも魔法が使えたらお母様の病気治すのに!」
「そんな力があったら貴女のために使ってほしいわ」
「だってお母様とっても苦しそう。お父様もお顔出してくれないし」
この頃のわたしはお父様の浮気もお祖父様が酷いことをしていることもまだ知らなかった。
サリーのことだって優しい人だと思っていた。
まだわたしの世界は綺麗なままだった。お母様が亡くなるなんて思いもしなかったし。
お母様が亡くなってからの日々はあやふやな記憶の中で意地だけで過ごすことになった。
お義母様には期待はしていなかった。
家族になっても優しく接してもらったことはなかった。異母弟妹ともほぼ接することはなかった。
四人はとても仲の良い家族。わたしだけが一人常に外れていた。
意地になってあの屋敷にいた意味は今になってはないも同じ。
ブラン王国のお祖父様達のところへ行けばよかったのかもと思いつつも、この国にいたからキース様と出会えたのだと今は思うようにしている。
お祖父様にどこまで報告しようかと悩んでいた。
全てを思い出しお母様の日記も見つかった。今まではわたしとお父様の不仲は知っていて「こちらにおいで」と言ってくれていたけど、真実は知らない。
もし全てを知ったらブラン王国はこの国をどうするのだろう。お祖父様やお父様に対しては許すはずもないだろう。そしてこの国に対しても……国際問題になるかもしれない。
だからお母様は「お父様に達にはわからないように何も伝えていない」と日記に書いていた。
わたしを守る力を使う時に、お祖父様達にも真実が伝わらないようにしていたようだ。
この国との関係を自分のせいで悪化させたくないと日記に書かれていた。
一人犠牲になったお母様……
「アシュア様……わたし、お父様と会って話をしたいと思っています」
キース様の実家に身を寄せて、わたしは穏やかに過ごしている。
キース様の兄嫁のリファ様、そして3歳のルーシー様とも仲良くさせてもらっている。
でもお父様とのことは逃げてはいられない。いつかは話さなければと思っている。
「ダニエルに会うこと自体は反対しないわ。だけど一人で会いに行くのはやめて。キースの仕事がもう少ししたら落ち着くはずよね?」
「はい、もう少ししたらお屋敷に帰って来れると伝言がありました」
「それまで待ってちょうだい、また何か事件でも起きたら嫌だわ」
「わかりました」
リファ様が話を変えようと別の話をわたしにしてきた。
「ダイアナ、キースが帰ってきたらそろそろ花嫁衣装のドレスも決めないといけないんじゃない?」
「あら、そうね?王妃とも話していたのよ?どんなドレスがいいかしら?」
「……わたしは特に希望はありません。おしゃれの仕方ってよくわからないのです」
考えてみたらあの屋敷でまともに服を買ってもらったことがない。生活全般に対してはそれなりに与えられてはいた。でもお父様は無関心だったのでわたしのために自分から服を買ってくれるとか誕生日だからと何か買ってくれるとかはなかった。必要なものだけ、サリーやトムに声をかけて用意してもらっていた。
あの頃のわたしはほんと意地だけであの屋敷にいたのよね。
あんなお父様でも彼の愛情を求めていた。意地を張りながらもわたしのことに関心を寄せて欲しかった。
だけどまともにわたしをみてはもらえなかった。お祖父様に操られていたとは言え、わたしへの態度は許せるものではなかった。
今お父様は治療を始めた。
長年お祖父様に精神を抑え込まれ操られていた。ミリア様はお父様に媚薬を使い続けていた。
そのためお父様は未だに情緒不安定なところがある。
それでも今も公爵。お祖父様の財産も受け継ぎこの国では一番の高位貴族になってしまった。
お祖父様の財産に対してはかなり差し押さえられたらしい。それでも莫大な財産を持っていたお祖父様。私利私欲に駆られ自分の欲だけを求めてきたお祖父様。
彼は反省することもなく一生を過ごすのだろうか?人の苦しみを少しでもこれから感じて生きて欲しい。
お父様は少しは変わったのだろうか?また無関心でわたしに冷たいままなのだろうか?
治療を始めたお父様にお会いするのはキース様が帰ってきてから。それまではこの暖かい場所で静かに過ごそう。
「ダイアナ、18歳の女の子なのよ?幸せにならなくっちゃ。もちろんキースが幸せにしてくれるわ。だけど貴女自身ももう貴女を幸せにしてあげて。我慢も意地を張る必要もないわ」
アシュア様はそう言うと笑顔で言った。
「デザイナーを呼ばなくっちゃ。貴女に似合う素敵なウエディングドレスを作りましょう。そして綺麗な貴女をキースに見せて驚かせましょうね」
ドキドキしてその夜は眠れなかった。
次の日、キース様がわたしの部屋に迎えにきてくれた。
「俺はしばらく王宮に泊まり込みになる。俺の屋敷で攫われてしまったから怖いかもしれないけど君を攫う協力をした使用人達は捕まえた。新たに使用人全て身辺調査をして安心して過ごせるようにしたし、母上が隣の別邸を俺たちが住めるように改装してくれているんだ。良かったら改装が終わるまで母上と過ごしてはくれないだろうか?」
「アシュア様がお嫌でなければわたしはお邪魔させてほしいです」
「母上はエレファ様と親友だった。君のことを娘のように思っているんだ。君にエレファ様のことをいろいろ話したいと言っていた」
「お母様の昔の話聞いてみたいです」
王妃様やアシュア様とは学生の頃からの友人だと聞いている。お母様がこの国に留学している時に仲良くなったらしい。その頃のお話をアシュア様はしてくださった。
そしてお父様ともこのころ知り合っている。
これが不幸の始まりだったのかも。
もしお父様と恋をしなければこんな辛い思いはしなかっただろう。
ブラン王国のお祖父様はこんな酷いことをされたことは知らない。
亡くなった時、「こちらで一緒に暮らそう」と言ってくれたけどわたしは幼かったし、母の思い出の屋敷で暮らしたかった。
あの気持ち悪い記憶がなかったのもあるけど。
意地であの屋敷で暮らしたけど、楽しい日々なんてなかった。
でもお母様はわたしを守ってくれていた。お祖父様の悪の手から。
わたしに最後の力を振り絞って守ってくれた。
幼い頃お母様が御伽話のように話してくれた。
「お母様の生まれた国にはね、魔法があったの。もしかしたらダイアナにも魔法を使う力があるかもね?」
お母様の膝に座りわたしの頭を優しく撫でながら微笑んで話してくれた。
「わたしにも魔法が使えたらお母様の病気治すのに!」
「そんな力があったら貴女のために使ってほしいわ」
「だってお母様とっても苦しそう。お父様もお顔出してくれないし」
この頃のわたしはお父様の浮気もお祖父様が酷いことをしていることもまだ知らなかった。
サリーのことだって優しい人だと思っていた。
まだわたしの世界は綺麗なままだった。お母様が亡くなるなんて思いもしなかったし。
お母様が亡くなってからの日々はあやふやな記憶の中で意地だけで過ごすことになった。
お義母様には期待はしていなかった。
家族になっても優しく接してもらったことはなかった。異母弟妹ともほぼ接することはなかった。
四人はとても仲の良い家族。わたしだけが一人常に外れていた。
意地になってあの屋敷にいた意味は今になってはないも同じ。
ブラン王国のお祖父様達のところへ行けばよかったのかもと思いつつも、この国にいたからキース様と出会えたのだと今は思うようにしている。
お祖父様にどこまで報告しようかと悩んでいた。
全てを思い出しお母様の日記も見つかった。今まではわたしとお父様の不仲は知っていて「こちらにおいで」と言ってくれていたけど、真実は知らない。
もし全てを知ったらブラン王国はこの国をどうするのだろう。お祖父様やお父様に対しては許すはずもないだろう。そしてこの国に対しても……国際問題になるかもしれない。
だからお母様は「お父様に達にはわからないように何も伝えていない」と日記に書いていた。
わたしを守る力を使う時に、お祖父様達にも真実が伝わらないようにしていたようだ。
この国との関係を自分のせいで悪化させたくないと日記に書かれていた。
一人犠牲になったお母様……
「アシュア様……わたし、お父様と会って話をしたいと思っています」
キース様の実家に身を寄せて、わたしは穏やかに過ごしている。
キース様の兄嫁のリファ様、そして3歳のルーシー様とも仲良くさせてもらっている。
でもお父様とのことは逃げてはいられない。いつかは話さなければと思っている。
「ダニエルに会うこと自体は反対しないわ。だけど一人で会いに行くのはやめて。キースの仕事がもう少ししたら落ち着くはずよね?」
「はい、もう少ししたらお屋敷に帰って来れると伝言がありました」
「それまで待ってちょうだい、また何か事件でも起きたら嫌だわ」
「わかりました」
リファ様が話を変えようと別の話をわたしにしてきた。
「ダイアナ、キースが帰ってきたらそろそろ花嫁衣装のドレスも決めないといけないんじゃない?」
「あら、そうね?王妃とも話していたのよ?どんなドレスがいいかしら?」
「……わたしは特に希望はありません。おしゃれの仕方ってよくわからないのです」
考えてみたらあの屋敷でまともに服を買ってもらったことがない。生活全般に対してはそれなりに与えられてはいた。でもお父様は無関心だったのでわたしのために自分から服を買ってくれるとか誕生日だからと何か買ってくれるとかはなかった。必要なものだけ、サリーやトムに声をかけて用意してもらっていた。
あの頃のわたしはほんと意地だけであの屋敷にいたのよね。
あんなお父様でも彼の愛情を求めていた。意地を張りながらもわたしのことに関心を寄せて欲しかった。
だけどまともにわたしをみてはもらえなかった。お祖父様に操られていたとは言え、わたしへの態度は許せるものではなかった。
今お父様は治療を始めた。
長年お祖父様に精神を抑え込まれ操られていた。ミリア様はお父様に媚薬を使い続けていた。
そのためお父様は未だに情緒不安定なところがある。
それでも今も公爵。お祖父様の財産も受け継ぎこの国では一番の高位貴族になってしまった。
お祖父様の財産に対してはかなり差し押さえられたらしい。それでも莫大な財産を持っていたお祖父様。私利私欲に駆られ自分の欲だけを求めてきたお祖父様。
彼は反省することもなく一生を過ごすのだろうか?人の苦しみを少しでもこれから感じて生きて欲しい。
お父様は少しは変わったのだろうか?また無関心でわたしに冷たいままなのだろうか?
治療を始めたお父様にお会いするのはキース様が帰ってきてから。それまではこの暖かい場所で静かに過ごそう。
「ダイアナ、18歳の女の子なのよ?幸せにならなくっちゃ。もちろんキースが幸せにしてくれるわ。だけど貴女自身ももう貴女を幸せにしてあげて。我慢も意地を張る必要もないわ」
アシュア様はそう言うと笑顔で言った。
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