【完結】わたしが嫌いな幼馴染の執着から逃げたい。

たろ

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元夫の執着からは……逃げだ………?最終話①

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「姉上、ルイス兄様が来られていますよ」

「ルイス!どうだった?」

「うん、今回の商談は上手く行ったよ。大口の注文が取れた。ウェルシヤ国にまた連絡して生産量を上げてもらわないといけないな」

「わかったわ、メルリナ達に連絡をするわ。わたしウェルシヤ国に来月帰る予定だし、向こうの工房を見に行くつもりなの」

 王立学園に通っていた時の友人が魔道具師になった。彼女の紹介でいくつかの工房と掛け合い新しい魔道具を作りオリソン国に輸入している。その仲介者になってくれているのが幼い頃からの親友でもあるメルリナだった。

 メルリナは今度ヴァードと結婚をすることになっている。その結婚式に呼ばれウェルシヤ国に久しぶりに帰ることになっていた。

 主に生活雑貨で魔法石を使ったコンロやお湯を温めるポット、湯船に薪を使わずに水を温める道具など、まだまだ値段は高いが購入したいと言ってくれる人は多く、生産が追いつかないほどだ。

 魔法石への魔力を込める作業は、企業秘密でこれはオリソン国だけですることになっている。

 誰でも簡単にできるわけではなく、魔法使いでもやはり得意な者しかできないことがわかった。

 今はミルヒーナ達家族とついて来た使用人達が行っている。

 ウェルシヤ国に才能のありそうな人を探すのが今はミルヒーナの仕事でもある。
 魔力量がわかるミルヒーナは、魔力の種類も見分けられるようになって来た。

 火、水、風、土の適性はもちろん魔力を扱うのが得意な人をなんとなく見つけられる。

「どうやったらわかるのですか?」
 ガトラに何度となく聞かれるものの答えはいつも一緒。

「う~ん、なんとなく?」

 としか答えられない。

 ただ『あっ……この人わたしと同じ』だと感じて石に魔力を流してもらうとやはり魔力が込められ魔法石になる。

 そんな人を見つけたらとりあえずオリソン国に来ないか勧誘してみる。

 まぁ十人に一人が頷いてくれるくらいでなかなかやはり国を移動してはくれない。かと言ってウェルシヤ国でその仕事をさせるのはまだまだ難しい。

 ミルヒーナが指導しなければみんな上手くならない。それに企業秘密でまだみんな魔法石の作り方を知らないし、簡単には教えられない。



 ウェルシヤ国を離れて5年が経った。ミルヒーナももう22歳になろうとしていた。ウェルシヤ国ならもう行き遅れと言われる歳だが、オリソン国では女性も働く人が多くまだまだ結婚していない人も多いので、家族の心配をよそに本人は呑気に仕事を楽しんでいた。

「リラ、街に出かけるわ」

「今日はどちらへ?」

「うーん、そうね……孤児院に行って様子を見て、それからオリエ様にお会いしに行こうと思ってるの」

「オリエ様?わたしもついて行ってもよろしいですか?」

「ふふ、そのつもりよ」


 リラはオリエの子供と遊ぶのが毎回楽しみでついて来たがる。それを知っているミルヒーナも必ず声をかけて出かける。

 オリソン国はミルヒーナにとって危険な場所は少なく一人で行動することも多いが、オリエやカトリーヌのところへ行く時はリラも一緒に行くことが多い。

「今日はカトリーヌ様も来られていると言ってたわ。新しい魔道具を使ってみた感想を聞く予定なの」

「あ、あの、姿を紙に写す魔道具ですね?」

「そう、可愛い子供達の姿をずっと紙に残せるなんて素敵よね?」

「あれはオリソン国だけではなくいろんな国で売れると思いますよ。だって絵姿なんて比べ物になりませんもの。本物の人が紙の中にいるのですもの、あれは素晴らしいです!」

「その前に孤児院に行って子供達が何度も水汲みをしないでいいように、水を吸うホースの魔道具の様子を先に見に行かないとね?」

「あの魔道具もすごいですよね?孤児院では井戸で何度も水を汲んで洗濯や掃除、食事、水浴びなどしないといけないから少し大きくなった子達はその作業だけで半日の時間を使わないといけないと言ってましたもの。少しでも子供達の作業が楽になる魔道具が出来たらとミルヒーナ様が考えて、それを魔道具師が本当に作り出して、素晴らしいことですよね?」

「リラったらそんなに褒めてくれても何も出ないわよ?」

「えー?」
 がっかりしたリラを見ながらクスクス笑うミルヒーナ。

「孤児院に行ったらみんなでクッキーを食べましょうね?」

「みんな喜んでくれるといいですね?」




 孤児院に行った後オリエの屋敷へ向かいお茶をしながらミルヒーナはみんなとゆっくり会話を楽しんだ。

 その間リラはオリエとカトリーヌの子供達と絵本を読んだりお庭を散歩したりして遊んで過ごした。

「ミルのおかげでオリソン国はかなり発展したわ」
 オリエが遊んでいる子供達を優しく見守りながら言った。

「この国は一度大きな争いがあって親を亡くした子供達も多いので、孤児院はいつも人手が足りないの。
 わたし達も出来ることはしてあげたいと活動はしているけどまだまだ行き届かないことも多いわ。あなたの開発した魔道具が子供達の負担が少しでも減ることができて感謝しているの」

「わたしは、金銭的には苦労をしたことはありません。でも魔法ありきの国で育ったのでわたしのように魔法が使えない人には住みにくい国でした。
 今はわたしも魔法が使えますが子供の頃はとても苦労しました。魔法が使えなくても魔道具を使えれば暮らしは少しだけど豊かになります。
 まだまだみんなには行き渡らないけど少しでも利益を上げて、その利益を孤児院や生活の苦しい人たちのために使えたらと思っています。だから是非お金持ちの人を紹介してくださいね?」

「もちろんよ。イアンにも頼んでいるわ」

「うちもイーサンにお願いしてるから任せてちょうだい」

「ありがとうございます!」

「だって子供達の姿を映せる魔道具はとても素晴らしいと思うわ。みんな欲しがっているもの、多少お値段が張っても買ってくれるわよ」

「実家の両親に送ってあげたら喜んでくれたわ」

「うちもそうよ、次は動いている姿を記録する魔道具があるともっといいわよね?犯罪者を捕まえるのにいいかも」
 オリエの言葉に思わず目が輝いた。

「さすが元騎士様ですね?」

「考えてみます」と返事をして、今度ウェルシヤ国に帰ったら、みんなと話し合ってみることに決めた。

「ねぇ、今度ウェルシヤ国に帰るって言ってたわよね?ミルはあの元夫君のリヴィとはどうなったの?」
 カトリーヌがニコリと微笑んだ。

「………彼はまだ諦めてくれません。いまだに結婚もせずわたしの誕生日に合わせて求婚してくるんです」

「知ってるわよ。もうそろそろ諦めて捕まりなさい」

「わたしもイアンに最後は捕まってしまったわ」

「オリエ様は元々ずっと好きだったのでしょう?わたしとリヴィは幼馴染でそこに愛はなかったんです」

「でもリヴィにはずっとあったんでしょう?いいの?リヴィが諦めて他の女性と結婚しても?」

「そうね、それでもいいと思うならそろそろはっきりと引導を渡してあげたほうがいいと思うわ」

「………………わからないんです…だって嫌われてると思ってたら好きだったと言われて……でももう別々の道を進んで5年以上経って…今更?ですよね」

「ミルはまだリヴィに対して自覚がないのね?」

「自覚?とは?」

「ウェルシヤ国に帰ったら、リヴィに会ってみなさい。もう4年間会っていないのでしょう?リヴィも毎回結婚の申し込みだけしてフラれてるんだもの。根性があるのかないのか、会いには来ないのは何故なのかしら?」

「会いには来てくれてるんです……ただわたしが結婚の申し込みなら会わないと拒否してるんです」

「えっ?そうなの?」

「もうフラれてるのと同じじゃない。リヴィは諦めるべきね」

「わたしもそう思うわ。ウェルシヤ国に帰ったらはっきりと振って来なさい」

「………そう…ですよね?」

 ミルヒーナはいつもリヴィに対して自分でもどうすればいいのかわからず、はっきりと答えを出せないでいた。








◆ ◆ ◆


ごめんなさい。

サラッと終わらせるつもりが、サラッと終わらず………

長すぎて2話に分けることになりました。










 
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