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少しだけの歩み寄り?

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 白い結婚のままわたしはまだ頑張っている。

 最近は彼がわたしに会いにくることが増えた。

 え?それはお互い歩み寄っているから?

 違う、違う。
 だってほとんど仕事のことだもの。

『この書類間違ってない?』
『早くこちらの予算を出してくれないと準備が出来ない』とか、どちらかと言うとわたしの間違いや仕事の遅れに対しての小言のような気がする。


「だったら少しはわたしの代わりにしたらいいじゃない!」

 と言ったら「俺の仕事は君の倍はある」と冷たく言われた。

 確かに最近お義父様はお忙しくて領地へ行ってしまったきり。そのぶん、公爵代行としてスティーブ様は忙しそうにしていた。

 だから不機嫌な顔が更に不機嫌になってわたしに会いにくる。
 流石のイザベラ様もスティーブ様に纏わりつかない。

 空気の読める令嬢で良かった。これ以上機嫌が悪くなると私も仕事がしづらい。

 机の上にあるサンドイッチを口に入れながらペラペラと使用人達からの陳情書を見る。

 厨房の器具が壊れかけている。
 屋敷の壁の一部のペンキが剥げている。
 そろそろ公爵夫人主催のお茶会の準備がありますがご要望はありますか。

 そんなもの、知るか!

 執事に言え!
 そんなことくらい使用人達で対処しろ!
 お義母様に聞け!

「はあー、もっと効率よく仕事を回せるように仕事内容を明確にして振り分ける必要があるわ」

 それからは夜な夜などの仕事は誰がするべきか書き出していった。

 それだけで2週間程かかったが、
「よし!出来た!」
 時計を見るとまだ夜の9時。

 スティーブ様の部屋に行ってみることにした。

「はい?」

「失礼します」

 彼の部屋に入るのは二度目。
 エディ様の高熱の時以来。

「中に入ってもよろしいかしら?」

「あ、あ、うん、どうぞ」

「遅くにすみません。この書類を見ていただきたいのです」

 わたしは整理して振り分けた仕事内容、その効率性、そしてそれぞれに使う予算、その仕事内容を月に一度当主またはそれに準ずる者がチェックをすることで無駄な仕事を省き効率性を挙げられるのではと提案した事を書き添えて渡した。

 彼が読んでくれている間、暇だったので彼の部屋をチラチラと見回していた。

「セレンはオレの部屋に興味があるの?」

「へっ?」ーー変な声が出た!恥ずかしすぎる。

「あ……ううん、なんだか落ち着かなくて……同じ作りなのに置いてある家具とかでこんなに雰囲気って変わるのかなって思っていたの」

「あーー、うん、確かに君の部屋とオレの部屋は作りは同じだもんな」

「うん、壁紙もカーテンも同じなの、なのにこんなに変わるものなのね」

「失礼致します」
侍女がお茶とお菓子を運んで来てくれた。

「ありがとう」わたしはお茶をいただきながらスティーブ様の反応を待っていた。

「うん、考え方はいいと思う。まだまだ変更点は多いけど。及第点はいってるよ」

「あのー、わたしテストの採点をしてもらっているわけではないのですけど………」

「あっ、すまない、うん、女性ならではの目の付け所だと思う。俺はこんなこと考え付かなかった。確かに無駄を省くことは大切だよね。もう少し思案して実行してみよう」

書類から目を離すとフッと笑った。

「……スティーブ様って……笑うんだ………」


「はっ?君、俺が笑わないと思っていたの?」

「だっていつも不機嫌で冷たい目でわたしを見ているし……あ、イザベラ様やエディ様の前では優しい顔をするから……わたしのことが嫌いなだけ?……かな」

ズキッ。。???

う、う、うん?


ーー今変な気分になった?

「別にセレンのことが嫌いなわけではない。ただ今更……どんな顔をして君と向き合えばいいのか……」

「えっ?嫌いなのではないのですか??」
思わず食い入るように、目を見開いて、驚いた顔をして、大きな声で聞いた。

「……嫌いじゃない……謝りたいと……思ってはいた…んだ……ず……っと」

「ふふ、スティーブ様?今更ですよ?」

「わかってる……」









「えっ?今更謝りたかった?」
マリアナが執務室で大きな声で叫んだ。

「シーッ!もう少し小さな声で」

「ご、ごめん。だってあんな酷い態度を取ってきて何馬鹿なこと言ってるの?」

「だよね?」

「ねえ許せるの?許すの?わたしは嫌だからね?あと二ヶ月我慢したら白い結婚だったことを理由に離縁できるの。わかってる?」

「もちろんよ。それだけを希望にここで過ごしてきたのだもの」

「わたしが養ってあげるから、さっさと離縁しなさい」

「マリアナ、ありがとう。でもマリアナだってもうすぐ結婚するんでしょう?」

「わたしが結婚するのは幼馴染のハンクよ?セレンとも友人じゃない。任せなさい」

「……わたしお邪魔虫になってハンクに恨まれたくないわ」

「そんなことさせないわ!大丈夫よ」

マリアナはドンと胸を叩いてわたしを見た。



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