51 / 55
ライオネル様。
しおりを挟む
ライオネル様はわたしの心をぐちゃぐちゃにする。
優しさが苦手。
だから最近は「仕事が忙しいので」と言ってあまり会わないようにしてきた。
それが一番いい。
そう思って。
他の騎士達も顔馴染みの人たちは遊びに来てくれるけど、前ほどしつこくない。
団長が「セレンは仕事なんだ。邪魔をした者はセレンの治療は二度と受けさせない」と言ってくれたおかげで冷やかしが減った。
仕事帰り、寮に帰る前に一度街へ買い物へ出た。
「セレン?」
パン屋から出てきた時に声をかけてきたのはライオネル様だった。
「あ、お疲れ様です。まだお仕事ですか?」
「今から一度城に戻って報告書をあげるんだ」
「そうですか」
わたしはどうしていいかわからず目を背けた。
「最近俺のこと避けてるよね?」
「そんなことはない……ううん、ごめんなさい、貴方を避けているというより自分自身から逃げてました」
何故かこの人の瞳に映る自分から逃げたくなる。
「何それ?」
「ずっと言い訳して…逃げて、逃げ癖?がついてしまって……貴方の顔を見るとつい自分の弱さを思い出して、現実逃避?してました」
「セレンはさ、生真面目すぎるんだ。もう少し気楽に生きたらいいのに」
「気楽に?」
「うん、俺もう報告書は明日の朝イチ出すことにした。すぐに着替えて来るからそこのカフェで待ってて!」
「えっ?」
なんだか強引にカフェに押し込まれて
「すぐだからね」と言って去って行った。
「とりあえずコーヒーでも飲んでいよう」
コーヒーにたっぷりのミルクと少しの砂糖を入れてゆっくりと飲んだ。窓から人々が急ぎ足で歩く姿が見える。
仕事が終わり家に帰る人、数人でワイワイ言いながら楽しく歩く人、小さな子供達を連れて歩く家族。
一人の時間を大切にして過ごしている独身には少し羨ましくも虚しく感じる。
「もう、ライオネル様遅いんじゃないかしら?」
帰ろうーーどうして彼の言葉に素直に従ってこんなところでボッーと待っているのかしら?
席を立ちお金を払い、店を出た。
ーーあっ、雨が降りそう、急いで帰ろう。
パンの入った紙袋をギュッと握りしめて急いで走り出した。
「待って、遅れてごめん」
ライオネル様がわたしの腕をガシッと掴んだ。
「ライオネル様?」
「酷いな、待っててと言ったのに。傘がないから急ごう。馬車を待たせているから行くよ」
わたしの手を握り「走れる?」と言って二人で馬車が停まっている停車場へ向かった。
雨がひどくなる前になんとか馬車に乗り込めた。
「うわぁ雨がひどくなりそうだ、セレン、タオル使って」
馬車の中にあったタオルを使い、濡れた髪を拭く。
「あまり濡れなくて済んだのでよかった」
「うん、ほんと。でもせっかく連れて行ってあげたいところがあったのに……この雨じゃ行けないな」
「どこに行こうと思ったんですか?」
がっかりした顔がなんとなく気になった。
「ほらあそこに丘があるんだ。あそこから見える景色が綺麗なんだ、特に夕焼け。突然雨が降るなんて、ね?あーあ……」
「たぶん通り雨なのでもう少ししたら止むと思いますよ?」
「うーん、とりあえず向かおうか?」
子供みたいな彼の姿になんだか可愛いと思って思わず「はい」と返事した。
優しさが苦手。
だから最近は「仕事が忙しいので」と言ってあまり会わないようにしてきた。
それが一番いい。
そう思って。
他の騎士達も顔馴染みの人たちは遊びに来てくれるけど、前ほどしつこくない。
団長が「セレンは仕事なんだ。邪魔をした者はセレンの治療は二度と受けさせない」と言ってくれたおかげで冷やかしが減った。
仕事帰り、寮に帰る前に一度街へ買い物へ出た。
「セレン?」
パン屋から出てきた時に声をかけてきたのはライオネル様だった。
「あ、お疲れ様です。まだお仕事ですか?」
「今から一度城に戻って報告書をあげるんだ」
「そうですか」
わたしはどうしていいかわからず目を背けた。
「最近俺のこと避けてるよね?」
「そんなことはない……ううん、ごめんなさい、貴方を避けているというより自分自身から逃げてました」
何故かこの人の瞳に映る自分から逃げたくなる。
「何それ?」
「ずっと言い訳して…逃げて、逃げ癖?がついてしまって……貴方の顔を見るとつい自分の弱さを思い出して、現実逃避?してました」
「セレンはさ、生真面目すぎるんだ。もう少し気楽に生きたらいいのに」
「気楽に?」
「うん、俺もう報告書は明日の朝イチ出すことにした。すぐに着替えて来るからそこのカフェで待ってて!」
「えっ?」
なんだか強引にカフェに押し込まれて
「すぐだからね」と言って去って行った。
「とりあえずコーヒーでも飲んでいよう」
コーヒーにたっぷりのミルクと少しの砂糖を入れてゆっくりと飲んだ。窓から人々が急ぎ足で歩く姿が見える。
仕事が終わり家に帰る人、数人でワイワイ言いながら楽しく歩く人、小さな子供達を連れて歩く家族。
一人の時間を大切にして過ごしている独身には少し羨ましくも虚しく感じる。
「もう、ライオネル様遅いんじゃないかしら?」
帰ろうーーどうして彼の言葉に素直に従ってこんなところでボッーと待っているのかしら?
席を立ちお金を払い、店を出た。
ーーあっ、雨が降りそう、急いで帰ろう。
パンの入った紙袋をギュッと握りしめて急いで走り出した。
「待って、遅れてごめん」
ライオネル様がわたしの腕をガシッと掴んだ。
「ライオネル様?」
「酷いな、待っててと言ったのに。傘がないから急ごう。馬車を待たせているから行くよ」
わたしの手を握り「走れる?」と言って二人で馬車が停まっている停車場へ向かった。
雨がひどくなる前になんとか馬車に乗り込めた。
「うわぁ雨がひどくなりそうだ、セレン、タオル使って」
馬車の中にあったタオルを使い、濡れた髪を拭く。
「あまり濡れなくて済んだのでよかった」
「うん、ほんと。でもせっかく連れて行ってあげたいところがあったのに……この雨じゃ行けないな」
「どこに行こうと思ったんですか?」
がっかりした顔がなんとなく気になった。
「ほらあそこに丘があるんだ。あそこから見える景色が綺麗なんだ、特に夕焼け。突然雨が降るなんて、ね?あーあ……」
「たぶん通り雨なのでもう少ししたら止むと思いますよ?」
「うーん、とりあえず向かおうか?」
子供みたいな彼の姿になんだか可愛いと思って思わず「はい」と返事した。
応援ありがとうございます!
20
お気に入りに追加
1,735
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる