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50話。
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「ダリアちゃん!外出どうだった?」
「はい、坊っちゃまのおかけで楽しく過ごせました」
「良かった……うん、うん、そうやって少しずつまた外に出られるようになって行くわよ」
涙ぐんで喜んでくれるマリアさん。
絵本作家と編集者という仕事上の付き合いでしかないのにいつもわたしのことを気にかけてくれる優しいお姉さんみたいな人。
一緒にお茶をしたり、わたしが怪我を負っていた時は心配して何度も顔を出してくれた。
今も完全には元に戻らない右足。見た目は普通に歩いているように見えるけどよく見ると少し引き摺ってしまう。
傷跡も完全には綺麗にならなくて少し皮膚が引き攣ったところがある。そのせいで歩く時に皮膚が突っ張って歩きにくい。
まあ、お嫁に行く予定もないし誰かに見せるわけでもないし、これが貴族令嬢なら傷ものだとか言われるのかもしれないけど平民のわたしは特に困ることはない。
入浴の時だけ……少し憂鬱になるけど……
「もしも、外へまた出てみたいと思えるなら一緒に本屋へ行かない?あなたの書いた絵本が売っているところを見て欲しいの」
「わたしの絵本……」
そう言えば仕上がった絵本は持っているけど、売られているところは見たことがない。
わたしの絵本を読んでくれる人がいる。
『わたしなんか……』いつも下ばかり向いていたわたし。自信がなかった。
両親がいなくておばあちゃんと二人だけの生活。貧しくても平気だったけど、小さな頃はよく周りにバカにされてロードが守ってくれた。
カッコよくて優しいロード。人見知りでだんだんロードとしか話さなくなり、いつもキラキラと眩しいロードと比べてしまってさらに『わたしなんて……』と思うようになった。
ロードのそばにいると『ロードが気の毒』とか『幼馴染だからってどうしていつもそばにいるの?』と言われて、それでも離れたくないくらい好きで、でも諦めなきゃいけなくて、カリナさんとロードがとても似合っていて……
わたしってほんとバカだよね。いつも人に頼って、助けられてばかりで。周りに恵まれてることにも気がつかないなんて……
「マリアさん、わたし、もっと強くなりたい。すぐに諦めたり逃げたり、そんな自分を変えたいです」
「ダリアちゃんは最初の頃よりもちゃんと自分の言いたいことを人に言えるようになったと思うわ。絵本のことも初めはわたし達の意見を全て受け入れるだけだったのに、今はちゃんと自分の考えも言っててくれるわ。だから絵本もどんどんいい物が出来ているじゃない。自信を持ちなさい」
「自信……持ってもいいのかな……」
「そんなの誰の許可もいらないわよ。周りのことなんて気にしない。もっと我儘に生きなさい。ダリアちゃんは辛いことがあり過ぎて心が疲れてしまっているのよね」
ダリアさんは少し考えて……
「うん、本屋へ行きましょう。そして帰りにカフェへ行かない?美味しいケーキを食べたら嫌なことなんて忘れてしまうわ。うんうん、そうしよう、ねっ?」
そのまま強引に外へと連れ出された。
もちろん徒歩ではなく馬車で。
「まだ歩いて回るのは怖いでしょう?」
そう言って用意してくれた馬車に乗り込み、街へと向かった。
坊っちゃまと祭りに行って以来、外には出ていなかったのでやはり少し緊張したけど、前持って行くことが決まっているよりも突然の方が構えなくていいのかもしれない。
馬車の中ではマリアさんがずっと話しかけてくれた。
最近の洋服の流行や今人気のお菓子。楽しい話が続きわたしもつい夢中で話を聞いていた。
「あっ、着いたみたいね」
馬車が停まり、そこからはお店まで歩くことになる。
マリアさんの手を思わず握る。
「大丈夫、マリアさんがずっとそばに居るから!」ニコッと笑い、わたしの手を握り返してくれた。
庭を毎日坊っちゃまと散歩していたとはいえ、体力が落ちているわたしは人混みの中早く歩くことができない。
マリアさんはわたしに合わせてゆっくりと歩いてくれた。人に体が当たってしまう。
その度にビクビクして俯いてしまう。
「いってぇな。しっかり歩けよ」
男性にぶつかり怒られた。
「すみません」何度も頭を下げて謝った。
マリアさんにも嫌な思いをさせてしまった。
「マリアさん、ご迷惑かけてすみません」
「ダリアちゃん、ちょっとぶつかったくらいであんなこと言われて謝らなくていいの!ほんっと、男のくせにけつの穴が小さいんだから!」
「へっ?」
マリアさんの大胆な捨て台詞にわたしは驚きながらもなぜか可笑しくなって笑ってしまった。
街を歩くのは少し怖いけど、マリアさんと歩くのは楽しいかも……
本屋の前に着いて扉を開けようとしたら……
「はい、坊っちゃまのおかけで楽しく過ごせました」
「良かった……うん、うん、そうやって少しずつまた外に出られるようになって行くわよ」
涙ぐんで喜んでくれるマリアさん。
絵本作家と編集者という仕事上の付き合いでしかないのにいつもわたしのことを気にかけてくれる優しいお姉さんみたいな人。
一緒にお茶をしたり、わたしが怪我を負っていた時は心配して何度も顔を出してくれた。
今も完全には元に戻らない右足。見た目は普通に歩いているように見えるけどよく見ると少し引き摺ってしまう。
傷跡も完全には綺麗にならなくて少し皮膚が引き攣ったところがある。そのせいで歩く時に皮膚が突っ張って歩きにくい。
まあ、お嫁に行く予定もないし誰かに見せるわけでもないし、これが貴族令嬢なら傷ものだとか言われるのかもしれないけど平民のわたしは特に困ることはない。
入浴の時だけ……少し憂鬱になるけど……
「もしも、外へまた出てみたいと思えるなら一緒に本屋へ行かない?あなたの書いた絵本が売っているところを見て欲しいの」
「わたしの絵本……」
そう言えば仕上がった絵本は持っているけど、売られているところは見たことがない。
わたしの絵本を読んでくれる人がいる。
『わたしなんか……』いつも下ばかり向いていたわたし。自信がなかった。
両親がいなくておばあちゃんと二人だけの生活。貧しくても平気だったけど、小さな頃はよく周りにバカにされてロードが守ってくれた。
カッコよくて優しいロード。人見知りでだんだんロードとしか話さなくなり、いつもキラキラと眩しいロードと比べてしまってさらに『わたしなんて……』と思うようになった。
ロードのそばにいると『ロードが気の毒』とか『幼馴染だからってどうしていつもそばにいるの?』と言われて、それでも離れたくないくらい好きで、でも諦めなきゃいけなくて、カリナさんとロードがとても似合っていて……
わたしってほんとバカだよね。いつも人に頼って、助けられてばかりで。周りに恵まれてることにも気がつかないなんて……
「マリアさん、わたし、もっと強くなりたい。すぐに諦めたり逃げたり、そんな自分を変えたいです」
「ダリアちゃんは最初の頃よりもちゃんと自分の言いたいことを人に言えるようになったと思うわ。絵本のことも初めはわたし達の意見を全て受け入れるだけだったのに、今はちゃんと自分の考えも言っててくれるわ。だから絵本もどんどんいい物が出来ているじゃない。自信を持ちなさい」
「自信……持ってもいいのかな……」
「そんなの誰の許可もいらないわよ。周りのことなんて気にしない。もっと我儘に生きなさい。ダリアちゃんは辛いことがあり過ぎて心が疲れてしまっているのよね」
ダリアさんは少し考えて……
「うん、本屋へ行きましょう。そして帰りにカフェへ行かない?美味しいケーキを食べたら嫌なことなんて忘れてしまうわ。うんうん、そうしよう、ねっ?」
そのまま強引に外へと連れ出された。
もちろん徒歩ではなく馬車で。
「まだ歩いて回るのは怖いでしょう?」
そう言って用意してくれた馬車に乗り込み、街へと向かった。
坊っちゃまと祭りに行って以来、外には出ていなかったのでやはり少し緊張したけど、前持って行くことが決まっているよりも突然の方が構えなくていいのかもしれない。
馬車の中ではマリアさんがずっと話しかけてくれた。
最近の洋服の流行や今人気のお菓子。楽しい話が続きわたしもつい夢中で話を聞いていた。
「あっ、着いたみたいね」
馬車が停まり、そこからはお店まで歩くことになる。
マリアさんの手を思わず握る。
「大丈夫、マリアさんがずっとそばに居るから!」ニコッと笑い、わたしの手を握り返してくれた。
庭を毎日坊っちゃまと散歩していたとはいえ、体力が落ちているわたしは人混みの中早く歩くことができない。
マリアさんはわたしに合わせてゆっくりと歩いてくれた。人に体が当たってしまう。
その度にビクビクして俯いてしまう。
「いってぇな。しっかり歩けよ」
男性にぶつかり怒られた。
「すみません」何度も頭を下げて謝った。
マリアさんにも嫌な思いをさせてしまった。
「マリアさん、ご迷惑かけてすみません」
「ダリアちゃん、ちょっとぶつかったくらいであんなこと言われて謝らなくていいの!ほんっと、男のくせにけつの穴が小さいんだから!」
「へっ?」
マリアさんの大胆な捨て台詞にわたしは驚きながらもなぜか可笑しくなって笑ってしまった。
街を歩くのは少し怖いけど、マリアさんと歩くのは楽しいかも……
本屋の前に着いて扉を開けようとしたら……
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