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44話  アーバン

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 ◇ ◆ ◇  アーバン

 仕事が休みの時にアダムさんの働く職場に顔を出してみた。

 俺は今街の警護に当たる第3部隊に移ってはいるが、王城内にある騎士団が本部だ。

 だから王城内に行くことも多い。

 アダムさんは書記官として働く優秀な人だ。

 休み時間なら会ってもらえるかもしれないと一か八か会いに行ってみた。

 俺の顔を見て一瞬嫌な顔をしたが、いつか会いに来るだろうと向こうもわかっていたようだ。

「すみません、休み時間に無理やり会いにきました」

 俺の顔を見て諦めたように溜息を吐いた。

「わかっていました、僕が貴方を見て思わず声を上げてしまったのですから」

「ではお話を聞かせていただけますか?」

「僕が何を知っているのかわかっているのですか?」

「たぶん……兄のことを何かご存知ではないかと思っております」

「………たまたまある街でお会いしました。ただ記憶がないようで……今は幸せに暮らしているようです。そっとしてあげては貰えませんか?」

「はあー、だったらわたしに気づかないようにしてくれればよかったのでは?」

「すみません、貴方がエドワードの行方を探していると噂で聞いたばかりだったので。つい見かけて動揺しました」

「……嘘が苦手そうですもんね」

「すみません」
 頭を掻きながら苦笑いするアダムさん。

 人の良さそうなこの人をこれ以上責めるわけにもいかないが、兄の居場所はどうしても知りたい。

「兄に会うかどうかは別として出来れば生きているのかだけでも確認したいのです。
 兄が忘れていたとしても家族なんです」

「僕は……今のエドワードと記憶を失う前のエドワードは別人じゃないかと思ってしまいました」

「と言うと顔が違ってるとか?雰囲気が違うとか?」

「なんて言うのか……以前のエドワードは常に優秀で真面目で優しさに溢れていました。どこを取っても完璧な男でした。
 でも今回見かけたエドワードは少し疲れて見えたけど、張り詰めたものがありませんでした。もちろん大変な仕事をしているのもあり疲れてはいましたが、なんと言うか……人情味があって自然な優しさが見えたんです、それに生き生きとしていました」

「兄はいつも完璧でわたしの憧れです、だけど今は違うのですか?」

「今のエドワードは記憶がないので長男として気が張ることもなく周りに優秀であることを求められることがないので、自分の能力で仕事が出来ていて楽しそうでした」

「…そう言っ…てたのですか?」

 アダムさんは首を横に振った。

「僕もエドワードほどではないけど常に人と比べられて優秀であることを求められて暮らしてきたからわかるんです。彼のあの自然な笑顔を初めて見て、彼は今幸せなら邪魔はしたくないと思いました」

 俺は兄貴の背中を見てずっと追い越してみたい、いつか追いつきたいと思って頑張っていた。

 だけど……本人にしか分からない苦悩があったのだろうか?

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