室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

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第1章 月森ヶ丘自由学園

次兄ジルタニアスは飄々と告げる

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「んで、どうするんだ?キリアンと崙も連れて行くか?」

満は崙を労る黒髪を束ねた少年を見てクリフェイドに聞く

「…どうする?とりあえず、崙とキリアンは下ろすべきだろ」

クリフェイドの考えにキリアンと呼ばれた黒髪を束ねた少年もそれに頷く

「えぇ、お願いします。ですが、まだ中国へ滞在する気は…? 我々ファミリーは貴方々を大いに歓迎しますが‥」

キリアンの言葉にクリフェイドは直ぐさま反応した

「いや、いい…。熱烈な歓迎はちょっと、な?それに、これ以上の面倒事は、ごめんだ。スクワット・ブランドンがいないのなら、足を運んだだけ、時間の浪費だと思ったりもしたが…… 、まぁアシスの奴を奪還しただけでも良しとしようか」

ふと、クリフェイドは、すっかり日が堕ちた空を見上げ…


 そよ風を感じながら目を閉じた――‥。



──────………
───……


PiPiPiPiPi…

      ピッ、

「…俺だ」

突然鳴り出す携帯にアクシオン・シュバルクは携帯を取るなり眉を吊り上げた

「…なんだって!?クリフェイドがお前の学園に通っている、だと!?」

携帯から漏れる相手の声を聞くなり、ヒューはすぐにわかった。

(…ジルタニアスか)

「なぜ、俺にそのことを報告しなかったんだ!!」

息子が自分の知らぬところで日本の学園に通っていたことが何よりショックな父、アクシオン‥。電話相手に怒鳴るも、相手は飄々と続ける。

『やだなぁ‥父さん。そう、カッカしないでよ?糖分摂った方がいいんじゃない?

あ!怒らないでよ?僕だって、僕の経営する学園の、学園長の不祥事を暴くことで忙しかったんだよ??』


「………」

アクシオンは無言。

『…なのにさぁ、何故か弟が暴いてくれちゃってるし、公に生中継されてるし。まあ、それは別にいいんだけどね。まさか、クリフェイドが僕の学園に入学してくるなんて思いもしなかったんだよ。…ま、学園長に任せっぱなしだった僕も悪いんだろうけど』

ごめんねぇ~?なんて、電話ごしに謝罪を入れる相手の男は全くもって、反省ゼロだった。

アクシオンに対し、こんなにも飄々とモノを言える奴はそうそういるもんじゃない…

 それもそのはず、何を隠そうこの男…

「ジルタニアス」

『あれ?今の兄さんの声?それじゃあ、兄さんもそこにいるの?』

ジルタニアス・シュバルク。シュバルク家の次男坊。アクシオンの息子であり、ヒューの実弟。そして、クリフェイドの義兄に当たる月森ヶ丘自由学園の理事長だった。

「…それにしても、何故お前が日本に? 英国のフォルティア学院はどうした??」

英国にあるフォルティア学院もまたジルタニアスが経営している学園の一つ…。父、アクシオンは理由を知っていたようだが、兄のヒューは聞いていないのか、アクシオンから受け取った携帯で相手に問う

『あっれ~?兄さん聞いてない??僕、去年から日本で経営してた学園の理事長やり始めたんだけど‥』

「……聞いてないぞ?」

『おかしいなぁ?まぁいいや。別に大した理由はないんだけどね。ただ、日本の四季とか伝統とか文化とか、前々から興味深かったんだよね。

んで、思い切って、こっちの学園の理事長を務めることにしたんだ。Σあっ!フォルティア学院のことなら大丈夫だよ?向こうの学院は僕の第一秘書に任せてるし、何かと報告もさせてるしね』

ヒューが声を発する隙もなく、ジルタニアスのマシンガントークは尚も続く。

『あっ!そうそう…クリフェイドは僕が学園の理事長をやってること知らないと思うよ?』

「………なぜ、そう思うんだ?」

『ん~……。だってさぁ、あのクリフェイドだよ?僕らの顔を見るなり、"げんなりする"あの子だよ??僕がクリフェイドの通う学園の理事長だって知ってたら、他の学園に行ってるだろうし‥

知ったら知ったで、すぐにでも退学を申し出ると思うよ。まぁ、この僕がそんなの認めるわけないけど』


…そんな彼らの会話を聞いて伊集院たちは思った。


(いろんな意味で個性の濃い人達だな…)

それと同時にクリフェイドに軽く同情を抱く。そして、クリフェイドの立場を自分らに置き換えてみた彼らは思わず身震いする

――家出したくなる気持ちもわからなくない

などと、彼らが揃いも揃って同じことを思ったことなどシュバルク一家は知るはずもなかった――…。
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