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- 乙女ゲームの世界観と宿命 -

『バクの善意と黒い笑み』

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『ん?ああ、よかった。涙、止まったみたいだね』

くすっと微笑むバク。だけど、その爽やかな笑顔が… 少し腹黒く見えたのはなぜでしょうか。


『それは… 褒め言葉として受け取っておくね』

…Σはっ そうでした。バクは心の中が読めたんですね。

『ふぅ、まったくキミって子は…。人の善意をなんだと思って…』


ぶつぶつと呟くバクはそれでも僕に笑みを向けてくれる。

『……ひとつ、聞きたいんだけど。』

「?なんですか??」


『そのクラスの人気者が妹の目の前でキミと付き合ってるって言ったときのことなんだけど、彼、キミが彼の側によくいるから相思相愛だと思ってたんだよね?なんでそんな奴の側にいたのか、そこが気になって…』

バクの疑問に僕はまた溜め息を吐いた。

「そんなつもりはありませんでした。
…よくいるでしょう?周りを巻き込む人間って。それが彼で。僕はその巻き添えを喰らっていつも巻き込まれてる… 被害者でした」

相思相愛とか、とんだ誤解ですよと腹立たしさに思わず声のトーンが下がる…。

『ああ、なるほどね…。いるね、確かにそういうヤツ』

それは… 災難だったねぇ、と苦笑するバクは慰めるように僕の頭を撫でてくれる。それがどうにも、擽ったくて… 落ち着かなくて、思わず身を竦めてしまう。

それに気づいたバクはパッと手を離した。


『ま、でも。それはきっと… 本当の友達じゃなかったんだよ』

「え?」

思わず聞き返す僕にバクは笑う


『だって、本当の友達とか親友なら… 何がなんでも信じるもんでしょ?たとえ、相手がクラスの人気者でもね?僕は友達とか親友ってのはそういうものだと思うよ。だから、きっとそれは… キミにとって本当の友達とか親友じゃなかったんだよ』

笑顔で言われても… 僕としては、もの凄く複雑なんですが。でも、確かにそう言われてみれば… そ、う… なのかな?


なんだか、バクに絆されてるような気がしますが… 僕の気のせいでしょうか?

『そうだよ。でも、もし辛いのなら… キミがその記憶を望まないのなら、僕が消してあげようか?』

・・・え?

すみません。今、一瞬、思考が停止してしまいました。すみませんが、もう一度お願いします。


『どうしたの?そんな怖い表情して。
だから、キミがその記憶を望まないのなら僕が消してあげるよって言ってるんだけど。

   あ、言ってなかったっけ?

僕が一番得意なのって、記憶操作なんだよ』


笑顔で爆弾発言を落とすバクに、目が点になる。
・・・え゙ッ!?それ、笑顔で言うことじゃないですよね!?とんだ爆弾発言ですよね!?

あれ?固まってる??…なんて、呑気に僕の顔の前で手を振ってるバク。自分がなんつー物騒な発言をしたのかイマイチ理解してないようですね…。

「いえ、だ… 大丈夫なんで。遠慮しておきます」

頬が引き攣りながらも、遠慮の言葉を告げる僕にバクはただ不思議そうに首を傾げていた。
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