リトル君の魔法学園生活

鬼灯

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85_目と愛

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「ん…」

俺は白い天井を見つめる。
さっきのは夢じゃない。確かに記憶だった。

「リトル…」

ヒルエが俺の名前を呼ぶ。ヒルエの方を見ると、苦しそうにベットに座るインディアとコウヤ先生、ミーナ先生がいた。

「イン、ディア…」

「リトル君…凄いね。これは構えてないとキツイ…。中を掻き回されている感覚で魔力が暴走しそうだ」

乱れた呼吸、緩めたネクタイ、見える素肌には汗がにじみ、腕まくりをしたところから緑のバラが少し見えている。


「外傷はほとんどありません。魔力不足ですね。ゆっくり休んでください。インウィディア君も」

ミーナ先生は俺の額に濡れたタオルを置く。気持ちいい。

「リトル、俺は合宿に戻る。この事は先輩に伝えるからな。これは聞いてるんじゃない、決定だ。ヒルエも帰るぞ」

「分かりました…」

忙しいのにまたフィルさんに迷惑をかけてしまった。申し訳ない。


「リトル、ごめん」

ヒルエが謝った。俺は耳を疑う。
ヒルエに謝られたことなんて数えるほどもない。

「なんで…」

「黙って受けとれ、部屋で待ってる」


コウヤ先生とヒルエは転送魔法で戻っていく。ミーナ先生はどこかに行ってしまった。部屋には俺とインディアだけになってしまった。

「見たんでしょ、僕の過去」

「ごめん…」

勝手に見られて気分が良いわけない。

「良いよ、君も見たくて見たいんじゃない。気持ち悪かっただろう、この目…」

インディアは目を隠している。俺はベットから降りてインディアに近づくと、目が見えるように両手で頬を持って顔を上げる。

「気持ち悪くないぞ。俺はお前の目を真っ直ぐ見れるから」

「でも、これは僕の目じゃ…」

「お前の目だよ、今は。インディアの思いにちゃんと反応して目が動いてる。お前自身の目がちゃんと生きてる」

「でも…あ、」


インディアの目からは涙が流れた。

「え、ごめん。泣かせるつもりじゃ!」

俺は慌てて服の袖で涙を拭いた。

「ごめん、拭くもの持ってなくって…」

「あは、僕の目って涙流れるんだ…」

「当たり前だろ、お前の一部なんだから」

「そうだねぇ、今はこの目で満足して良いのかもしれない、自分の求めるものじゃないとしても…」

ガバッ

インディアは俺に抱きつく。肩が震えているのに気づく。泣いているのだ。俺はそっと背中を撫でる。

「それでも、僕は諦められない…ごめんねごめんね」

「それで良いよ、それで良い…」

涙は止まらず俺の肩を濡らしていく。
その感覚を感じながら、
俺はどうしようもない思いにかられる。
何て言ったら良いのか分からない。
このとてつもない不安を…。







コンコン



扉をノックする音が聞こえ、インディアは離れる。

「こんな顔を君以外に見られるのは嫌だから、僕は帰るね。ありがとう」


インディアは転送魔法で去っていった。

「どうぞー」

俺はノックに対して返事をする。
扉を開けて入ってきたのはフィルさんだった。

「フィルさん!?」

「おう、様子見に来たぜ」

「仕事は?」

「まぁ、なんだ、優秀な秘書がいるから」

ということはサボったみたいだ。
自分のためにサボってもらって本当に申し訳ない。

「今日は良いのか…?」

「良くない、フィルさん」

俺の気持ちはフィルさんにはお見通しだったみたいだ。

「我、天命の罰に繋がれし咎人なり願わくば、我…苦しみの海に消えることを…」

涙を流しながら俺がそう言うとフィルさんは優しく頭を撫でる。

「そして、再び大空へ羽ばたくために翼を与えたまえ。汝は愛すべき黄昏の子なり」

「トワイライト…」

「リトル、お前は倒れる前にトワイライトの鍵について呟いてたらしい。覚えているか…?」

俺は首を横に降る。そんな記憶は自分にはない。

「…これからお前は7つの大罪に共鳴する。記憶の共有だ。共鳴は止められない…。7つの大罪以外に共鳴して入り口にされるのを防ぎたい。それは現時点でお前を守ることのできる最低な手段だ。ごめんな」

「フィルさん、そんな顔しないでよ!俺、大丈夫だから」

俺はフィルさんに笑って見せる。

「俺にだけは無理して笑わなくて良い」

「…うん」

優しさに甘える。俺はフィルさんに抱きつく。暖かい温もりは俺の心に一時の安息を与えてくれる。

「何かが動いている…リトル、もうごまかせない。お前はきっとその中心にいる」

「…だよね。それでも、頑張るよ、フィルさん」

「俺もそばにいるから…」


腕の中、俺はそのまま眠りについた。
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