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21話 コーヒーの優しさ
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休日があけて月曜日。サヨリヒメはクェーサーとのひと時が頭から離れずにいた。
今まで幾星霜の時を生きてきたが、その中でも一番楽しい時間だった。特に頭に浮かぶのは、クェーサーの事ばかり。
最も輝く光の名のごとく、彼の姿はサヨリヒメの記憶に眩く残っていた。
「……いやいや、いやいやいや……!」
これではクェーサーに恋しているようではないか。そんな事は断じてない、相手は生まれたばかりの人工知能で、サヨリヒメは神様だ。
AIとあやかしの間に、そんな感情があってはならないんだ。
全く、不用意にクェーサーとデートなんかするんじゃなかった。
「どうしたんだい姫野さん、頭を抱えて、痛いのかい?」
「いえなんでもありません! それよりあの後どうなったんですか? 救さんと進展ありました?」
麻山が反応し、身を乗り出した。
「え? ひかるさんとうとう救君に白状したの?」
「どんな物の言い方だい! ……何もなかったよ、姫野さんと別れた後、サシ飲みして、酔っ払った私を先輩が家に届けて……終わり」
「なんだいつも通りかぁ、ひかるさん頭いいのに言葉が足りないからなぁ」
「これでも既成事実作ろうとしたんだよ、でも酔っ払って動けなかった……」
「頭いいのに肝心な所でアホなんだよなぁ……」
「うぎゅう……」
御堂は突っ伏し、撃沈した。
「あっ、おかえりあんたぁ~」
と、作業場から白瀬の声が。彼女の夫が営業から帰ってきたのだ。
白瀬は作業の手を止め、夫を出迎えに行っている。結婚5年目なのに、2人はとても仲睦まじい。御堂とサヨリヒメは二人を眺め、
『いいなぁ……』
同時に呟いてしまい、今度はサヨリヒメが御堂と麻山に見られた。
「姫野さんも好きな人いるの?」
「ほぅ、これは私も興味があるねぇ。人の恋路に首突っ込んだんだ、自分だけ安全圏でのうのうとするのは卑怯だよねぇ」
「違います違います! あれはその、ああいうのではなくてっ」
人工知能に気があるなんて知られたらなんて言われる事か。しかも御堂はクェーサーの親みたいな人だぞ。
「はいはい、小休止はそこまでにしてね。姫野さん困ってるでしょう、仕事に戻ってね」
羽山が手を叩き、サヨリヒメを助けてくれた。御堂と麻山が「ちぇっ」と残念そうに去っていく。
「すいません社長」
「いいんだよ。コーヒーでも飲んで落ち着こうか、淹れてくるよ」
「社長がそんな事をしなくても、私が淹れます」
「コーヒーを淹れるのは私の趣味なんだ。自慢の腕を振るう丁度いい機会だよ」
羽山からコーヒーを受け取り、サヨリヒメはほっとした。
彼の優しさが、コーヒーを通して身に染みた。
今まで幾星霜の時を生きてきたが、その中でも一番楽しい時間だった。特に頭に浮かぶのは、クェーサーの事ばかり。
最も輝く光の名のごとく、彼の姿はサヨリヒメの記憶に眩く残っていた。
「……いやいや、いやいやいや……!」
これではクェーサーに恋しているようではないか。そんな事は断じてない、相手は生まれたばかりの人工知能で、サヨリヒメは神様だ。
AIとあやかしの間に、そんな感情があってはならないんだ。
全く、不用意にクェーサーとデートなんかするんじゃなかった。
「どうしたんだい姫野さん、頭を抱えて、痛いのかい?」
「いえなんでもありません! それよりあの後どうなったんですか? 救さんと進展ありました?」
麻山が反応し、身を乗り出した。
「え? ひかるさんとうとう救君に白状したの?」
「どんな物の言い方だい! ……何もなかったよ、姫野さんと別れた後、サシ飲みして、酔っ払った私を先輩が家に届けて……終わり」
「なんだいつも通りかぁ、ひかるさん頭いいのに言葉が足りないからなぁ」
「これでも既成事実作ろうとしたんだよ、でも酔っ払って動けなかった……」
「頭いいのに肝心な所でアホなんだよなぁ……」
「うぎゅう……」
御堂は突っ伏し、撃沈した。
「あっ、おかえりあんたぁ~」
と、作業場から白瀬の声が。彼女の夫が営業から帰ってきたのだ。
白瀬は作業の手を止め、夫を出迎えに行っている。結婚5年目なのに、2人はとても仲睦まじい。御堂とサヨリヒメは二人を眺め、
『いいなぁ……』
同時に呟いてしまい、今度はサヨリヒメが御堂と麻山に見られた。
「姫野さんも好きな人いるの?」
「ほぅ、これは私も興味があるねぇ。人の恋路に首突っ込んだんだ、自分だけ安全圏でのうのうとするのは卑怯だよねぇ」
「違います違います! あれはその、ああいうのではなくてっ」
人工知能に気があるなんて知られたらなんて言われる事か。しかも御堂はクェーサーの親みたいな人だぞ。
「はいはい、小休止はそこまでにしてね。姫野さん困ってるでしょう、仕事に戻ってね」
羽山が手を叩き、サヨリヒメを助けてくれた。御堂と麻山が「ちぇっ」と残念そうに去っていく。
「すいません社長」
「いいんだよ。コーヒーでも飲んで落ち着こうか、淹れてくるよ」
「社長がそんな事をしなくても、私が淹れます」
「コーヒーを淹れるのは私の趣味なんだ。自慢の腕を振るう丁度いい機会だよ」
羽山からコーヒーを受け取り、サヨリヒメはほっとした。
彼の優しさが、コーヒーを通して身に染みた。
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