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第五話 大人への階段
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ドレスを脱いで、着替えてベッドにもぐりこもうとして、腹痛の原因がようやくわかった。
知識だけはあったけれど、こんなタイミングで月が満ちるだなんて。
「お嬢様、おめでとうございます。大人の仲間入りですね」
汚してしまった服を着替えさせ、温かいものや痛み止めの薬を持ってきたり、と色々と世話をしてくれたメイドに祝いの言葉を言われても嬉しくない。
体が成熟して、大人になっていく痛みとは、このように辛いものなのか。
こんな痛みを受け止めていかなければいけないなんて、大人になんてなりたくない。
それに、……自分から血の匂いとかはしなかっただろうか。
あんなに無防備にデュークの傍にいたのだから、もしかして彼は気づいたかもしれない。
「大丈夫なの?」
私の体調が悪いということをメイドから聞いたのか、ヨーランダお姉さまが部屋まで顔を出してくださった。
枕を抱きしめながら体を丸めている自分の背中から腰にかけてさすってくれる。
きっと私が知らないところで、お姉さまもこの辛さに苦しんでいたのかもしれない、とその温かな手のひらを感じながらそう思った。
「ごめんなさい、デュークにも迷惑かけたわ」
お姉さまから頼まれたことすらちゃんとこなすことができず、しょぼんとしてしまったら、姉が慌てたように声を上げている。
「そんなの気にしちゃダメよ。具合が悪い時はお互い様なのだし。貴方が具合悪いのに気づかなかったわ、今日は用事を色々といいつけてごめんなさい」
具合が悪いことを黙っていた自分が悪いと思うので、その辺りに関してはお互い様だ。
不幸中の幸いなのは、自分の不調の原因を彼が知らなかったことだ。
このことを彼に知られたらきっと気まずさの極みだっただろう。
私がデュークに迷惑をかけたのは今に始まったことではないのだけれど、会う度に悪い印象ばかりを彼に与えているような気がする。
「すぐに慣れてくるわ。痛みに慣れるというのではなく、どのように対処すれば楽にしのげるかを覚えるというか。将来、貴方がお母様になるために必要なことなの。嫌なものだと思わないでね」
そっとお姉さまに抱きしめられる。
ふわりと花のような香りがした。
こんな痛みを受け止め、受け入れられているお姉さまは随分と大人だと思った。
お姉さまはいつも、どんな時でもいい匂いで優しくて。
デュークが持っていた綺麗な刺繍を思い出す。とても見事な薔薇の意匠のものだった。
習い始めの自分は、まだ誰かにあげられるようなレベルではなくて、ましてやそれを思う人に差し上げるようなことはできない。
いつか自分も刺繍の腕が上がって、誰か思う人に、あのようなハンカチをプレゼントする日が来るのだろうか。
それでも自分が刺繍の腕が上がったとしても、お姉さまはもっと上のステージに上がっていて、私が追いかけるばかりで、いつまでもたどりつけない場所に行ってしまうのだろうけれど。
お姉さまに比べたら、私なんて軍記物が好きで血の生臭い匂いがお似合いな、つまらない小娘なのだろうと思えたら涙が零れそうになってしまって、お姉さまの前でこらえるのに必死だった。
知識だけはあったけれど、こんなタイミングで月が満ちるだなんて。
「お嬢様、おめでとうございます。大人の仲間入りですね」
汚してしまった服を着替えさせ、温かいものや痛み止めの薬を持ってきたり、と色々と世話をしてくれたメイドに祝いの言葉を言われても嬉しくない。
体が成熟して、大人になっていく痛みとは、このように辛いものなのか。
こんな痛みを受け止めていかなければいけないなんて、大人になんてなりたくない。
それに、……自分から血の匂いとかはしなかっただろうか。
あんなに無防備にデュークの傍にいたのだから、もしかして彼は気づいたかもしれない。
「大丈夫なの?」
私の体調が悪いということをメイドから聞いたのか、ヨーランダお姉さまが部屋まで顔を出してくださった。
枕を抱きしめながら体を丸めている自分の背中から腰にかけてさすってくれる。
きっと私が知らないところで、お姉さまもこの辛さに苦しんでいたのかもしれない、とその温かな手のひらを感じながらそう思った。
「ごめんなさい、デュークにも迷惑かけたわ」
お姉さまから頼まれたことすらちゃんとこなすことができず、しょぼんとしてしまったら、姉が慌てたように声を上げている。
「そんなの気にしちゃダメよ。具合が悪い時はお互い様なのだし。貴方が具合悪いのに気づかなかったわ、今日は用事を色々といいつけてごめんなさい」
具合が悪いことを黙っていた自分が悪いと思うので、その辺りに関してはお互い様だ。
不幸中の幸いなのは、自分の不調の原因を彼が知らなかったことだ。
このことを彼に知られたらきっと気まずさの極みだっただろう。
私がデュークに迷惑をかけたのは今に始まったことではないのだけれど、会う度に悪い印象ばかりを彼に与えているような気がする。
「すぐに慣れてくるわ。痛みに慣れるというのではなく、どのように対処すれば楽にしのげるかを覚えるというか。将来、貴方がお母様になるために必要なことなの。嫌なものだと思わないでね」
そっとお姉さまに抱きしめられる。
ふわりと花のような香りがした。
こんな痛みを受け止め、受け入れられているお姉さまは随分と大人だと思った。
お姉さまはいつも、どんな時でもいい匂いで優しくて。
デュークが持っていた綺麗な刺繍を思い出す。とても見事な薔薇の意匠のものだった。
習い始めの自分は、まだ誰かにあげられるようなレベルではなくて、ましてやそれを思う人に差し上げるようなことはできない。
いつか自分も刺繍の腕が上がって、誰か思う人に、あのようなハンカチをプレゼントする日が来るのだろうか。
それでも自分が刺繍の腕が上がったとしても、お姉さまはもっと上のステージに上がっていて、私が追いかけるばかりで、いつまでもたどりつけない場所に行ってしまうのだろうけれど。
お姉さまに比べたら、私なんて軍記物が好きで血の生臭い匂いがお似合いな、つまらない小娘なのだろうと思えたら涙が零れそうになってしまって、お姉さまの前でこらえるのに必死だった。
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