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忠告しましょう
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私は瞬間移動した先の公爵家の主に一礼する。
驚き、警戒している様子だったが、気にせず近づいて行く。
「初めまして。ツィレイル王国、ラーノンス侯爵家が長女、ヴァリフィア・ラーノンスと申します。急な訪問、お許し下さい。状況が状況ですので。」
「っ…。何用かな、隣国の侯爵令嬢よ。我が公爵家に不法に侵入した事、咎めれば罰を受けるのは其方であるぞ。」
一瞬の動揺を見せたが、隠すように笑顔を取り繕った。
そんな公爵に対し、私は少し目を細める。
睨んでいるとも言うのだろうか。
公爵は明らかに怯えている。
「私に刺客を向けてくるのはお止め下さい。」
「何の事だ?」
「恍けないでいただきたいですね。」
パチンと私が指を鳴らすと、誰もいない場所から人が現れる。
透明化で姿を隠していた、私が印を付けた暗殺者だ。
「っっ…!」
「その程度で私が気付かないとでもお思いですか?」
「これは驚いたな。我が精鋭の透明化を見破るとは。」
「例え不可視になっていたとしても、存在そのものを無くす事は出来ませんから。」
私の言っている意味が分かっていない様子だった。
いくら魔力操作が上手い者でも、生命探知には引っかかるのだ。
…生きているのだから。
「……さて、先程も言った通り、刺客を向けてくるのはお止め下さい。無意味なのですから。」
「……。」
「残り十数人の暗殺者達も、今は拘束しております。亡き者にする事は容易ですが、そのような事は出来ればしたくないのです。引いて下さるのであれば、今回の事は咎めないでおきましょう。」
最初の時とは、立場が一転した。
公爵は不法侵入を咎める事が出来ない。
自身もその相手の命を奪わんとしているのだから。
「……分かった。すまなかった、ラーノンス侯爵令嬢よ。」
「謝罪を受け入れましょう。この件に関しては、他言無用という事で。もう一つだけ。…今後私には一切関わらないと、誓っていただけますか?」
「何故だ?」
「刺客を送るような相手に、以後関わるなと言うのは当然ではありませんか?」
「…それもそうか……。しかし、それは出来ない。こちらも事情があるのでな。」
「ならば、貴方を貴族から引きずり下ろす事になりますが、よろしいのですか?」
「可能ならばやってみよ……と言いたいところだが、そなたはそれが簡単に出来るのだろうな。」
「……。」
無言で佇む。
その様子を見て、納得したように公爵は目を瞑った。
「…今後、そなたには関わらないと誓おう。」
二つ名は伊達ではないと思った。
少しの脅しも、効果覿面だ。
「ありがとうございます。この言は、失礼ながらしっかりと魔道具にて、証拠として残させていただきました。」
「なっ!」
「当然です。言葉だけの誓いなど、証拠が無ければ意味がありませんから。…最後に一度、忠告しておきます。これ以上何もしないよう願います。もし誓いを破るようならその時は……。」
公爵の顔が青ざめていくのがわかった。
恐らく、私が録音していなければ簡単に誓いを破っていただろう。
証拠が無いのだから無効だ、と言って。
「では私はこれにて失礼致します。」
そして私は暗殺者達を拘束している森へと瞬間移動で向かい、事の経緯を全て話した。
『魔光縛』を解くと、彼ら直ぐに隣国の公爵家へと戻って行った。
(ふぅ……やっとゆっくり出来るなぁ。緊張したよ…隣国の大公爵と会話するなんて、普通なら有り得ないんだから。)
私が寮へと戻ると、その入口にディルジアがいた--
驚き、警戒している様子だったが、気にせず近づいて行く。
「初めまして。ツィレイル王国、ラーノンス侯爵家が長女、ヴァリフィア・ラーノンスと申します。急な訪問、お許し下さい。状況が状況ですので。」
「っ…。何用かな、隣国の侯爵令嬢よ。我が公爵家に不法に侵入した事、咎めれば罰を受けるのは其方であるぞ。」
一瞬の動揺を見せたが、隠すように笑顔を取り繕った。
そんな公爵に対し、私は少し目を細める。
睨んでいるとも言うのだろうか。
公爵は明らかに怯えている。
「私に刺客を向けてくるのはお止め下さい。」
「何の事だ?」
「恍けないでいただきたいですね。」
パチンと私が指を鳴らすと、誰もいない場所から人が現れる。
透明化で姿を隠していた、私が印を付けた暗殺者だ。
「っっ…!」
「その程度で私が気付かないとでもお思いですか?」
「これは驚いたな。我が精鋭の透明化を見破るとは。」
「例え不可視になっていたとしても、存在そのものを無くす事は出来ませんから。」
私の言っている意味が分かっていない様子だった。
いくら魔力操作が上手い者でも、生命探知には引っかかるのだ。
…生きているのだから。
「……さて、先程も言った通り、刺客を向けてくるのはお止め下さい。無意味なのですから。」
「……。」
「残り十数人の暗殺者達も、今は拘束しております。亡き者にする事は容易ですが、そのような事は出来ればしたくないのです。引いて下さるのであれば、今回の事は咎めないでおきましょう。」
最初の時とは、立場が一転した。
公爵は不法侵入を咎める事が出来ない。
自身もその相手の命を奪わんとしているのだから。
「……分かった。すまなかった、ラーノンス侯爵令嬢よ。」
「謝罪を受け入れましょう。この件に関しては、他言無用という事で。もう一つだけ。…今後私には一切関わらないと、誓っていただけますか?」
「何故だ?」
「刺客を送るような相手に、以後関わるなと言うのは当然ではありませんか?」
「…それもそうか……。しかし、それは出来ない。こちらも事情があるのでな。」
「ならば、貴方を貴族から引きずり下ろす事になりますが、よろしいのですか?」
「可能ならばやってみよ……と言いたいところだが、そなたはそれが簡単に出来るのだろうな。」
「……。」
無言で佇む。
その様子を見て、納得したように公爵は目を瞑った。
「…今後、そなたには関わらないと誓おう。」
二つ名は伊達ではないと思った。
少しの脅しも、効果覿面だ。
「ありがとうございます。この言は、失礼ながらしっかりと魔道具にて、証拠として残させていただきました。」
「なっ!」
「当然です。言葉だけの誓いなど、証拠が無ければ意味がありませんから。…最後に一度、忠告しておきます。これ以上何もしないよう願います。もし誓いを破るようならその時は……。」
公爵の顔が青ざめていくのがわかった。
恐らく、私が録音していなければ簡単に誓いを破っていただろう。
証拠が無いのだから無効だ、と言って。
「では私はこれにて失礼致します。」
そして私は暗殺者達を拘束している森へと瞬間移動で向かい、事の経緯を全て話した。
『魔光縛』を解くと、彼ら直ぐに隣国の公爵家へと戻って行った。
(ふぅ……やっとゆっくり出来るなぁ。緊張したよ…隣国の大公爵と会話するなんて、普通なら有り得ないんだから。)
私が寮へと戻ると、その入口にディルジアがいた--
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