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抵抗は無駄です!

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「詰めが甘い……先程ケルレーム公爵様はそうおっしゃいましたね。しかしどこの詰めが甘いのでしょう?」

「……前言撤回だな。陛下は全てを見据えていたということか。いや……これら全ては、『賢華』と『情報屋』の考えだな。私を逃がさぬ為の……。」

「ええ。強大な権力を持つ公爵ともあろう方が、自身の逃げ道を用意していないはずはありません。そこで貴方を逃がさぬ為にも、私達自らが協力すると申し出ました。」

「……なるほどな。」

「そして現在、私を中心に一定の距離は魔法が使用不可となっています。無論、私は使えますが。無駄な抵抗は止め、大人しくすることをおすすめします。抵抗されるようであれば、骨の数本折ることになりますから。」

「なっ…!?」

「証拠は全て揃っているのです。言い逃れは出来ないと覚悟して下さい。」


私は一部の証拠書類を見せる。
公爵は「そんな馬鹿な!」という顔をしているが、これは紛れもなく公爵家から見つかった書類である。


「そんなもの……」

「そんなもの?他国への密輸、武器の横流し!その他多数ある。さあ、どれについての釈明から始める?」

「ちっ……。やはり、あれから目をつけられていたのだな。」

「無論です。」

「ではケルレーム公爵。拘束させていただく。アース殿もだ。」

「はあっ!」


公爵とアースは、剣を振り上げ立ち向かってきた。
腕は確かで、兵達よりも少し強い。
しかし人数はこちらの方が多い為、問題なく応戦できている。


「まだ抵抗するか!ヴァリフィア様!」

「承知したわ。『魔光縛』。」

「なっ!?」
「何だこれは!?」

「魔法にて捕縛させていただきました。魔光縛には、対象の魔法を使用不可にする効果もあります。今度こそ抵抗は無駄です。」

「くそっ……。」

「っ……。」

「では参りましょう。魔光縛は完全に動けないので、皆さんが運んで下さいませんか?」

「それは構いませんが……触れても大丈夫でしょうか…?」

「問題ありませんよ。対象以外が触れても、何も起きませんから。」

「分かりました。では我々が運びましょう。」

「ええ。よろしくお願いします。」


歯を食いしばり、先程同様憎々しげに私を見つめる公爵。
それはアースも同じだった。
私は2人と一瞬目を合わせ、身を翻して馬車へと乗り込むのだった。
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