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「これより、エルザームの裁判を開始する!」
「罪状は、『王族に対する不敬罪』だ。さらに、相手は国王陛下その人である。異論はあるか、罪人エルザームよ。」
「何もありません。」
「ではエルザームに最も重い罰を与える事とするが、反対意見のある者はいるか?」
「「「……。」」」
「無いようだな。では『国王陛下への不敬罪』とし、終身刑とする。」
「待て。」
「へ、陛下っ!?何故このような場に…。」
「英雄と呼ばれるほどの魔法使いであるエルザームが、余に不敬を働いたのだ。その結末を見届けなければなるまいよ。」
「左様でございましたか。ですが、終身刑という罰に、異論があるのでしょうか。」
「無論だ。こやつは余の顔に泥を塗ろうとしたのだぞ?この意味が分かるよのう。」
「……罪人エルザームを、死刑とする!即日執行だ。異論のある者はいるか。」
「……そんな…。」
確実に始末しておきたいという国王の意思がよく分かる。
この場に来た時点で、死刑にするつもりだったのだろう。
ここまでが計画だったのだ。
国王という国の最上位者の発言に、意を唱える者などいない。
今回のような場合は、終身刑が最高刑になる。
国王が自ら裁判に来なければ…。
普通ならば有り得ないほど早い裁判の判決と閉廷に、私は拳を握る。
「これにて裁判は閉廷する。罪人エルザームを執行台へと連れて行け!」
「はっ!」
「シェルアにも来てもらう。」
「…っ……分かり…ました。」
「余も見届けよう。それと、この事は王国民に伏せておけ。混乱を防ぐ為だ。」
「かしこまりました。」
死刑の執行台へと徒歩で向かう。
そして……。
「言い残すことはないか。」
「シェルア……幸せになってくれ……──。」
目の前で師匠は殺された。
国王はそれを見て、微かに笑った…。
私は怒りが込み上げる。
しかし、その怒りを鎮めた。
ここで殺しても、何もならないと思ったからだ。
それに、最後に師匠は言葉を発さずに口だけを動かして、私に伝えた。
──復讐はしないように……と。
その場を離れた後、私は国境沿いにいた。
「復讐は師匠が望まない…。でも、師匠を殺したこの国に仕える義理もない。さよなら、私の母国。」
この国を出ることにした。
しかし、他国でもうまくはいかなかった。
だが、他人を傷付けるわけにもいかない。
旅人のように人族の国を渡っていった。
ある時、森を抜けようと自身に強化魔法をかけて走っていた。
すると前に人の姿が見えた。
よく見ると角が生えている。魔族だ。
問答無用で襲いかかってきたので、魔法で縛った。
後ろから息を切らした別の魔族が走ってくる。
こちらの様子は普通のようだ。
「はぁ…はぁ……なっ、これは!?ひひヒト族!?貴方は…いったい……。」
「人に名前を聞くのなら、自分から名乗るべきではありませんか?」
「これは申し訳ない。私は魔族のルガと申します。」
「ルガさんね。私はシェルアというわ。この方は…?」
「この方はシオラ様です。魔族の犯罪者に魔法をかけられてしまい、今は理性を失ってしまっています。暴走状態…とでも言えば良いでしょうか。」
「なるほど。では何故ここに?」
「先程魔法をかけられたところだからです。犯罪者の方は、私の部下達が取り押さえております。」
「そうですか。では少しよろしいでしょうか?」
「何をなさるのですか?」
「見ていて下さい。」
私はシオラという魔族の女性に手をかざす。
そしてかかっている魔法を解いた。
呪いのようなものだったので、解呪で元に戻すことが出来た。
魔法による拘束も解いておいた。
「ん……うぅん…。」
「シオラ様!?」
「貴方は……ルガ?」
「はい!ルガでございます!」
「そちらの方は誰なのですか?」
「この方はシェルアさんです。シオラ様にかけられた魔法を、解いて下さった方です!」
「そう……なのね…。うぅ…っ。」
「大丈夫ですか?!」
「身体に力が入らないわ。えっと……シェルア様。助けてくれてありがとうございます。こんな状態でごめんなさいね。」
「いえ、無理なされずに。感謝は十分に伝わっておりますから。それと、『様』はやめていただけますか?その……えっと…。」
「分かりました。シェルアさんと呼ばせて下さい。ぜひお礼がしたいのですが、魔族領にお越し下さいませんか?」
「それは構いませんが……私は人族です。魔族にとって、その……。」
「そんな事は関係ありません。人族も魔族も同じです。人族に優しい魔族がいるように、魔族に優しい人族もいます。貴女様のように。もし文句のある魔族がいるのならば、私が許しません。」
「そう……ですか。分かりました。同行させていただきます。」
「はいっ!魔族領ヴァンジェスガはすぐそこです。」
私はご好意に甘えることにした。
しかし、シオラに連れられた場所は……
「これって……。」
「魔王城ヘルヴァンです。父に報告をしてくるので、少しお待ち下さい。」
「え、ええ…。」
父とはまさか……と思った。
そしてそれは的中する。
「お待たせ致しました。父が会いたいと申しているのですが…。」
「私もお会いしたく存じます。ご案内願えますか?」
「はい。転移します。」
転移すると、目の前に巨大な扉が現れた。
そしてゆっくりと開かれる。
いかにもな道を歩いていくと、かなり強そうな魔族が座っていた。
否、この魔族は強い!
「よくぞ来てくれた。俺は魔王、エギュアスという。」
「私は人族のシェルアと申します。」
「話は聞いている。我が娘シオラを助けてくれた事、感謝するぞ。」
「いえ、当然の事をしたまでです。」
「心優しい人族だな。せめてもの感謝の証として、何か贈り物をしたい。望むものはあるか?」
エギュアスは、魔王に相応しい風格と強さがある。
欲しいものは何も無いが、『望むこと』なら思いついた。
「魔王エギュアス様。」
「様など付けんで良い。」
「では、エギュアス殿……?」
「何だ?」
「私を、貴方の配下に加えて下さいませんか?」
「罪状は、『王族に対する不敬罪』だ。さらに、相手は国王陛下その人である。異論はあるか、罪人エルザームよ。」
「何もありません。」
「ではエルザームに最も重い罰を与える事とするが、反対意見のある者はいるか?」
「「「……。」」」
「無いようだな。では『国王陛下への不敬罪』とし、終身刑とする。」
「待て。」
「へ、陛下っ!?何故このような場に…。」
「英雄と呼ばれるほどの魔法使いであるエルザームが、余に不敬を働いたのだ。その結末を見届けなければなるまいよ。」
「左様でございましたか。ですが、終身刑という罰に、異論があるのでしょうか。」
「無論だ。こやつは余の顔に泥を塗ろうとしたのだぞ?この意味が分かるよのう。」
「……罪人エルザームを、死刑とする!即日執行だ。異論のある者はいるか。」
「……そんな…。」
確実に始末しておきたいという国王の意思がよく分かる。
この場に来た時点で、死刑にするつもりだったのだろう。
ここまでが計画だったのだ。
国王という国の最上位者の発言に、意を唱える者などいない。
今回のような場合は、終身刑が最高刑になる。
国王が自ら裁判に来なければ…。
普通ならば有り得ないほど早い裁判の判決と閉廷に、私は拳を握る。
「これにて裁判は閉廷する。罪人エルザームを執行台へと連れて行け!」
「はっ!」
「シェルアにも来てもらう。」
「…っ……分かり…ました。」
「余も見届けよう。それと、この事は王国民に伏せておけ。混乱を防ぐ為だ。」
「かしこまりました。」
死刑の執行台へと徒歩で向かう。
そして……。
「言い残すことはないか。」
「シェルア……幸せになってくれ……──。」
目の前で師匠は殺された。
国王はそれを見て、微かに笑った…。
私は怒りが込み上げる。
しかし、その怒りを鎮めた。
ここで殺しても、何もならないと思ったからだ。
それに、最後に師匠は言葉を発さずに口だけを動かして、私に伝えた。
──復讐はしないように……と。
その場を離れた後、私は国境沿いにいた。
「復讐は師匠が望まない…。でも、師匠を殺したこの国に仕える義理もない。さよなら、私の母国。」
この国を出ることにした。
しかし、他国でもうまくはいかなかった。
だが、他人を傷付けるわけにもいかない。
旅人のように人族の国を渡っていった。
ある時、森を抜けようと自身に強化魔法をかけて走っていた。
すると前に人の姿が見えた。
よく見ると角が生えている。魔族だ。
問答無用で襲いかかってきたので、魔法で縛った。
後ろから息を切らした別の魔族が走ってくる。
こちらの様子は普通のようだ。
「はぁ…はぁ……なっ、これは!?ひひヒト族!?貴方は…いったい……。」
「人に名前を聞くのなら、自分から名乗るべきではありませんか?」
「これは申し訳ない。私は魔族のルガと申します。」
「ルガさんね。私はシェルアというわ。この方は…?」
「この方はシオラ様です。魔族の犯罪者に魔法をかけられてしまい、今は理性を失ってしまっています。暴走状態…とでも言えば良いでしょうか。」
「なるほど。では何故ここに?」
「先程魔法をかけられたところだからです。犯罪者の方は、私の部下達が取り押さえております。」
「そうですか。では少しよろしいでしょうか?」
「何をなさるのですか?」
「見ていて下さい。」
私はシオラという魔族の女性に手をかざす。
そしてかかっている魔法を解いた。
呪いのようなものだったので、解呪で元に戻すことが出来た。
魔法による拘束も解いておいた。
「ん……うぅん…。」
「シオラ様!?」
「貴方は……ルガ?」
「はい!ルガでございます!」
「そちらの方は誰なのですか?」
「この方はシェルアさんです。シオラ様にかけられた魔法を、解いて下さった方です!」
「そう……なのね…。うぅ…っ。」
「大丈夫ですか?!」
「身体に力が入らないわ。えっと……シェルア様。助けてくれてありがとうございます。こんな状態でごめんなさいね。」
「いえ、無理なされずに。感謝は十分に伝わっておりますから。それと、『様』はやめていただけますか?その……えっと…。」
「分かりました。シェルアさんと呼ばせて下さい。ぜひお礼がしたいのですが、魔族領にお越し下さいませんか?」
「それは構いませんが……私は人族です。魔族にとって、その……。」
「そんな事は関係ありません。人族も魔族も同じです。人族に優しい魔族がいるように、魔族に優しい人族もいます。貴女様のように。もし文句のある魔族がいるのならば、私が許しません。」
「そう……ですか。分かりました。同行させていただきます。」
「はいっ!魔族領ヴァンジェスガはすぐそこです。」
私はご好意に甘えることにした。
しかし、シオラに連れられた場所は……
「これって……。」
「魔王城ヘルヴァンです。父に報告をしてくるので、少しお待ち下さい。」
「え、ええ…。」
父とはまさか……と思った。
そしてそれは的中する。
「お待たせ致しました。父が会いたいと申しているのですが…。」
「私もお会いしたく存じます。ご案内願えますか?」
「はい。転移します。」
転移すると、目の前に巨大な扉が現れた。
そしてゆっくりと開かれる。
いかにもな道を歩いていくと、かなり強そうな魔族が座っていた。
否、この魔族は強い!
「よくぞ来てくれた。俺は魔王、エギュアスという。」
「私は人族のシェルアと申します。」
「話は聞いている。我が娘シオラを助けてくれた事、感謝するぞ。」
「いえ、当然の事をしたまでです。」
「心優しい人族だな。せめてもの感謝の証として、何か贈り物をしたい。望むものはあるか?」
エギュアスは、魔王に相応しい風格と強さがある。
欲しいものは何も無いが、『望むこと』なら思いついた。
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「様など付けんで良い。」
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「何だ?」
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