【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒

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4話

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「私を、貴方の配下に加えて下さいませんか?」

「ほほう?それが望みとな。しかし、俺の配下に弱者など要らん。どうしてもと言うのであれば、俺と勝負しろ。」

「それは面白そうですね。受けて立ちましょう。」


私と魔王エギュアスは互いに笑う。
口元が緩んでいると言った方が合っているのだろうか。
周りの魔族達は既に離れている。
そしてエギュアスは結界を張り、魔王城に被害がいかないようにしていた。
互いに見詰め合い、ゼギュアスから動いた。
魔法で威力などを強化した拳で殴りかかってくる。


「はあぁぁぁ!」


ガキンッ!!
その拳は、私の張っていた物理結界に当たった。


「凄いな、人族のシェルア!結界を張っていることは知っていたが、俺の一撃で割れないとはなぁ!」

「随分と余裕があるのですね。この城を守りながら戦闘行為をしているのですから。」

「それは同じだろう?すました顔で俺の攻撃を全て弾いてるんだからな。なんだよ、そのくそ硬ぇ結界はよ。」

「ただの物理結界と魔法防御結界ですが。」

「魔力量が尋常じゃないってことだな。お前も打ってこいよ!」

「では遠慮なく……『炎雷槍』。」

「おいおい、指を鳴らすだけで魔法を放つとはな。魔族であればそう珍しいことではないが、人族がとなると驚きだぜ。魔力操作もかなりのもんだ。」

「お褒めに預かり光栄です。ではもう一発どうぞ。『黒槍牙』。」

「おっ…と、俺の結界を割るとはな!面白い魔法だ。オリジナルか?」

「はい。オリジナルです。」


その後も戦闘は続いた。
10分経っても決着はつかず、私は引き下がることにした。
間合いを詰めてきたエギュアスに対し、私はあえて結界を弱くして受けた。


「流石ですね、魔王エギュアス殿。私の負けです。」

「お前、最後手を抜いたな?」

「あら、何のことでしょう?それよりも、治癒魔法は必要ですか?。」

「いいや、必要ない。やっぱ余裕あるじゃねーか。」

「それで、私は合格ですか?」

「勿論合格だ。俺と対等にやり合える奴なんて、お前くらいだろうな。シェルアが本気を出せば負けていたのは俺かもしれん…。」

「どうでしょうね。」

「配下になってくれるのはありがたいが、良いのか?人族の敵対者ともあろう立場になるのだぞ?──元勇者パーティーの者が、魔族側にいて良いのかよ。」


……やはり、エギュアスは私のことを知っていた。
知っていた上で招き入れ、娘の恩人だからと望みまで聞いてくれたのだ。


「…構いません。それに戦いを経て分かりましたが……エギュアス殿は好戦的ではありますが、平和を望む魔王だと感じました。無駄な戦争は避けると思いますが…。」

「そんな事も分かるのか…くくっ、恐ろしいな。確かに俺は平和を望む魔王だ。しかし魔族領に踏み込み、民を害す者には容赦しない。それが俺なのさ。」

「そんな王が望ましいです。私の母国では民に重税を課し、国王はその税で贅沢をしていたのです。そして、そんな強欲な王に私の師匠は殺されました。」

「なるほどな…。勇者パーティーに居たままなら、殺されていたのは俺だろう。しかし味方であれば、心強いことこの上ない。それに……、シェルアの目的は魔族側になって復讐か?」

「いえ、復讐はしません。ですが勇者の邪魔をしようかと。」

「ほう?」


私は今までの事を全て話した。
赤子のうちに両親を亡くし、師匠に養子として育ててもらったこと。
勇者パーティーでの扱いや追放。
そして今に至るのだ…と。


「そうか……シェルアの師匠の名は?」

「エルザーム、と申します。」

「あの英雄と呼ばれていたエルザームか!?」

「はい…知っておられるのですか?」

「無論だ。魔族領でも、秘密裏に凶暴化した魔物などを討伐してくれていた。我らの影の英雄だ。」

「師匠が……。」

「まさかエルザームの養子であり弟子だったとはな。この強さも納得だ。しかしシェルアの方が、エルザームの数倍は強いが…。」

「師匠に教わった魔法を、自分なりに使いやすくしていった結果です。最適化し、無詠唱を極めました。」

「なるほどな。とはいえ、もうエルザームに会うことは叶わないのだな……。」

「……。」

「下を向いてはいられん。とりあえず、かの国での事情は理解した。お前を歓迎しよう!この王城内の一室を、シェルアの自室とするように。」

「「「はっ!」」」

「そして俺の配下となっている。さらには俺と並ぶ強者だ。人族だからといって、余計な事はするなよ?シェルアに何かした際は、俺を敵に回したと思え。良いな。」

「「「承知致しました!」」」

「ありがとうございます、魔王様。」

「そんな堅苦しい呼び名はやめろ。」

「ですが、私は正式にエギュアス様の配下となったのです。『様』とお呼びするのは当然かと。」

「確かにお前は俺の配下となったが、他の配下共とはわけが違う。それに、俺と互角…或いはそれ以上の強さを持つ者に、敬称をつけられるのは嫌なんだよ。」

「分かりました……では先程までと同じく、『エギュアス殿』と呼ばせていただきます。」

「ああ、それで構わない。それと、敬語も不要だぜ。理由は同じでな。」

「それは…。」

「じゃあ命令だ。俺に畏まった態度はとるなよ。」

「承知致しました……分かったわ。これで良いかしら?」

「無論だ。」


こうして私は、魔族領『魔王エギュアス』の対等だがその配下となったのだった。
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