4 / 16
4話
しおりを挟む
「私を、貴方の配下に加えて下さいませんか?」
「ほほう?それが望みとな。しかし、俺の配下に弱者など要らん。どうしてもと言うのであれば、俺と勝負しろ。」
「それは面白そうですね。受けて立ちましょう。」
私と魔王エギュアスは互いに笑う。
口元が緩んでいると言った方が合っているのだろうか。
周りの魔族達は既に離れている。
そしてエギュアスは結界を張り、魔王城に被害がいかないようにしていた。
互いに見詰め合い、ゼギュアスから動いた。
魔法で威力などを強化した拳で殴りかかってくる。
「はあぁぁぁ!」
ガキンッ!!
その拳は、私の張っていた物理結界に当たった。
「凄いな、人族のシェルア!結界を張っていることは知っていたが、俺の一撃で割れないとはなぁ!」
「随分と余裕があるのですね。この城を守りながら戦闘行為をしているのですから。」
「それは同じだろう?すました顔で俺の攻撃を全て弾いてるんだからな。なんだよ、そのくそ硬ぇ結界はよ。」
「ただの物理結界と魔法防御結界ですが。」
「魔力量が尋常じゃないってことだな。お前も打ってこいよ!」
「では遠慮なく……『炎雷槍』。」
「おいおい、指を鳴らすだけで魔法を放つとはな。魔族であればそう珍しいことではないが、人族がとなると驚きだぜ。魔力操作もかなりのもんだ。」
「お褒めに預かり光栄です。ではもう一発どうぞ。『黒槍牙』。」
「おっ…と、俺の結界を割るとはな!面白い魔法だ。オリジナルか?」
「はい。オリジナルです。」
その後も戦闘は続いた。
10分経っても決着はつかず、私は引き下がることにした。
間合いを詰めてきたエギュアスに対し、私はあえて結界を弱くして受けた。
「流石ですね、魔王エギュアス殿。私の負けです。」
「お前、最後手を抜いたな?」
「あら、何のことでしょう?それよりも、治癒魔法は必要ですか?。」
「いいや、必要ない。やっぱ余裕あるじゃねーか。」
「それで、私は合格ですか?」
「勿論合格だ。俺と対等にやり合える奴なんて、お前くらいだろうな。シェルアが本気を出せば負けていたのは俺かもしれん…。」
「どうでしょうね。」
「配下になってくれるのはありがたいが、良いのか?人族の敵対者ともあろう立場になるのだぞ?──元勇者パーティーの者が、魔族側にいて良いのかよ。」
……やはり、エギュアスは私のことを知っていた。
知っていた上で招き入れ、娘の恩人だからと望みまで聞いてくれたのだ。
「…構いません。それに戦いを経て分かりましたが……エギュアス殿は好戦的ではありますが、平和を望む魔王だと感じました。無駄な戦争は避けると思いますが…。」
「そんな事も分かるのか…くくっ、恐ろしいな。確かに俺は平和を望む魔王だ。しかし魔族領に踏み込み、民を害す者には容赦しない。それが俺なのさ。」
「そんな王が望ましいです。私の母国では民に重税を課し、国王はその税で贅沢をしていたのです。そして、そんな強欲な王に私の師匠は殺されました。」
「なるほどな…。勇者パーティーに居たままなら、殺されていたのは俺だろう。しかし味方であれば、心強いことこの上ない。それに……、シェルアの目的は魔族側になって復讐か?」
「いえ、復讐はしません。ですが勇者の邪魔をしようかと。」
「ほう?」
私は今までの事を全て話した。
赤子のうちに両親を亡くし、師匠に養子として育ててもらったこと。
勇者パーティーでの扱いや追放。
そして今に至るのだ…と。
「そうか……シェルアの師匠の名は?」
「エルザーム、と申します。」
「あの英雄と呼ばれていたエルザームか!?」
「はい…知っておられるのですか?」
「無論だ。魔族領でも、秘密裏に凶暴化した魔物などを討伐してくれていた。我らの影の英雄だ。」
「師匠が……。」
「まさかエルザームの養子であり弟子だったとはな。この強さも納得だ。しかしシェルアの方が、エルザームの数倍は強いが…。」
「師匠に教わった魔法を、自分なりに使いやすくしていった結果です。最適化し、無詠唱を極めました。」
「なるほどな。とはいえ、もうエルザームに会うことは叶わないのだな……。」
「……。」
「下を向いてはいられん。とりあえず、かの国での事情は理解した。お前を歓迎しよう!この王城内の一室を、シェルアの自室とするように。」
「「「はっ!」」」
「そして俺の配下となっている。さらには俺と並ぶ強者だ。人族だからといって、余計な事はするなよ?シェルアに何かした際は、俺を敵に回したと思え。良いな。」
「「「承知致しました!」」」
「ありがとうございます、魔王様。」
「そんな堅苦しい呼び名はやめろ。」
「ですが、私は正式にエギュアス様の配下となったのです。『様』とお呼びするのは当然かと。」
「確かにお前は俺の配下となったが、他の配下共とはわけが違う。それに、俺と互角…或いはそれ以上の強さを持つ者に、敬称をつけられるのは嫌なんだよ。」
「分かりました……では先程までと同じく、『エギュアス殿』と呼ばせていただきます。」
「ああ、それで構わない。それと、敬語も不要だぜ。理由は同じでな。」
「それは…。」
「じゃあ命令だ。俺に畏まった態度はとるなよ。」
「承知致しました……分かったわ。これで良いかしら?」
「無論だ。」
こうして私は、魔族領『魔王エギュアス』の対等だがその配下となったのだった。
「ほほう?それが望みとな。しかし、俺の配下に弱者など要らん。どうしてもと言うのであれば、俺と勝負しろ。」
「それは面白そうですね。受けて立ちましょう。」
私と魔王エギュアスは互いに笑う。
口元が緩んでいると言った方が合っているのだろうか。
周りの魔族達は既に離れている。
そしてエギュアスは結界を張り、魔王城に被害がいかないようにしていた。
互いに見詰め合い、ゼギュアスから動いた。
魔法で威力などを強化した拳で殴りかかってくる。
「はあぁぁぁ!」
ガキンッ!!
その拳は、私の張っていた物理結界に当たった。
「凄いな、人族のシェルア!結界を張っていることは知っていたが、俺の一撃で割れないとはなぁ!」
「随分と余裕があるのですね。この城を守りながら戦闘行為をしているのですから。」
「それは同じだろう?すました顔で俺の攻撃を全て弾いてるんだからな。なんだよ、そのくそ硬ぇ結界はよ。」
「ただの物理結界と魔法防御結界ですが。」
「魔力量が尋常じゃないってことだな。お前も打ってこいよ!」
「では遠慮なく……『炎雷槍』。」
「おいおい、指を鳴らすだけで魔法を放つとはな。魔族であればそう珍しいことではないが、人族がとなると驚きだぜ。魔力操作もかなりのもんだ。」
「お褒めに預かり光栄です。ではもう一発どうぞ。『黒槍牙』。」
「おっ…と、俺の結界を割るとはな!面白い魔法だ。オリジナルか?」
「はい。オリジナルです。」
その後も戦闘は続いた。
10分経っても決着はつかず、私は引き下がることにした。
間合いを詰めてきたエギュアスに対し、私はあえて結界を弱くして受けた。
「流石ですね、魔王エギュアス殿。私の負けです。」
「お前、最後手を抜いたな?」
「あら、何のことでしょう?それよりも、治癒魔法は必要ですか?。」
「いいや、必要ない。やっぱ余裕あるじゃねーか。」
「それで、私は合格ですか?」
「勿論合格だ。俺と対等にやり合える奴なんて、お前くらいだろうな。シェルアが本気を出せば負けていたのは俺かもしれん…。」
「どうでしょうね。」
「配下になってくれるのはありがたいが、良いのか?人族の敵対者ともあろう立場になるのだぞ?──元勇者パーティーの者が、魔族側にいて良いのかよ。」
……やはり、エギュアスは私のことを知っていた。
知っていた上で招き入れ、娘の恩人だからと望みまで聞いてくれたのだ。
「…構いません。それに戦いを経て分かりましたが……エギュアス殿は好戦的ではありますが、平和を望む魔王だと感じました。無駄な戦争は避けると思いますが…。」
「そんな事も分かるのか…くくっ、恐ろしいな。確かに俺は平和を望む魔王だ。しかし魔族領に踏み込み、民を害す者には容赦しない。それが俺なのさ。」
「そんな王が望ましいです。私の母国では民に重税を課し、国王はその税で贅沢をしていたのです。そして、そんな強欲な王に私の師匠は殺されました。」
「なるほどな…。勇者パーティーに居たままなら、殺されていたのは俺だろう。しかし味方であれば、心強いことこの上ない。それに……、シェルアの目的は魔族側になって復讐か?」
「いえ、復讐はしません。ですが勇者の邪魔をしようかと。」
「ほう?」
私は今までの事を全て話した。
赤子のうちに両親を亡くし、師匠に養子として育ててもらったこと。
勇者パーティーでの扱いや追放。
そして今に至るのだ…と。
「そうか……シェルアの師匠の名は?」
「エルザーム、と申します。」
「あの英雄と呼ばれていたエルザームか!?」
「はい…知っておられるのですか?」
「無論だ。魔族領でも、秘密裏に凶暴化した魔物などを討伐してくれていた。我らの影の英雄だ。」
「師匠が……。」
「まさかエルザームの養子であり弟子だったとはな。この強さも納得だ。しかしシェルアの方が、エルザームの数倍は強いが…。」
「師匠に教わった魔法を、自分なりに使いやすくしていった結果です。最適化し、無詠唱を極めました。」
「なるほどな。とはいえ、もうエルザームに会うことは叶わないのだな……。」
「……。」
「下を向いてはいられん。とりあえず、かの国での事情は理解した。お前を歓迎しよう!この王城内の一室を、シェルアの自室とするように。」
「「「はっ!」」」
「そして俺の配下となっている。さらには俺と並ぶ強者だ。人族だからといって、余計な事はするなよ?シェルアに何かした際は、俺を敵に回したと思え。良いな。」
「「「承知致しました!」」」
「ありがとうございます、魔王様。」
「そんな堅苦しい呼び名はやめろ。」
「ですが、私は正式にエギュアス様の配下となったのです。『様』とお呼びするのは当然かと。」
「確かにお前は俺の配下となったが、他の配下共とはわけが違う。それに、俺と互角…或いはそれ以上の強さを持つ者に、敬称をつけられるのは嫌なんだよ。」
「分かりました……では先程までと同じく、『エギュアス殿』と呼ばせていただきます。」
「ああ、それで構わない。それと、敬語も不要だぜ。理由は同じでな。」
「それは…。」
「じゃあ命令だ。俺に畏まった態度はとるなよ。」
「承知致しました……分かったわ。これで良いかしら?」
「無論だ。」
こうして私は、魔族領『魔王エギュアス』の対等だがその配下となったのだった。
26
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。
鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。
さらに、偽聖女と決めつけられる始末。
しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!?
他サイトにも重複掲載中です。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。
まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」
ええよく言われますわ…。
でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。
この国では、13歳になると学校へ入学する。
そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。
☆この国での世界観です。
【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる