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「私を、貴方の配下に加えて下さいませんか?」
「ほほう?それが望みとな。しかし、俺の配下に弱者など要らん。どうしてもと言うのであれば、俺と勝負しろ。」
「それは面白そうですね。受けて立ちましょう。」
私と魔王エギュアスは互いに笑う。
口元が緩んでいると言った方が合っているのだろうか。
周りの魔族達は既に離れている。
そしてエギュアスは結界を張り、魔王城に被害がいかないようにしていた。
互いに見詰め合い、ゼギュアスから動いた。
魔法で威力などを強化した拳で殴りかかってくる。
「はあぁぁぁ!」
ガキンッ!!
その拳は、私の張っていた物理結界に当たった。
「凄いな、人族のシェルア!結界を張っていることは知っていたが、俺の一撃で割れないとはなぁ!」
「随分と余裕があるのですね。この城を守りながら戦闘行為をしているのですから。」
「それは同じだろう?すました顔で俺の攻撃を全て弾いてるんだからな。なんだよ、そのくそ硬ぇ結界はよ。」
「ただの物理結界と魔法防御結界ですが。」
「魔力量が尋常じゃないってことだな。お前も打ってこいよ!」
「では遠慮なく……『炎雷槍』。」
「おいおい、指を鳴らすだけで魔法を放つとはな。魔族であればそう珍しいことではないが、人族がとなると驚きだぜ。魔力操作もかなりのもんだ。」
「お褒めに預かり光栄です。ではもう一発どうぞ。『黒槍牙』。」
「おっ…と、俺の結界を割るとはな!面白い魔法だ。オリジナルか?」
「はい。オリジナルです。」
その後も戦闘は続いた。
10分経っても決着はつかず、私は引き下がることにした。
間合いを詰めてきたエギュアスに対し、私はあえて結界を弱くして受けた。
「流石ですね、魔王エギュアス殿。私の負けです。」
「お前、最後手を抜いたな?」
「あら、何のことでしょう?それよりも、治癒魔法は必要ですか?。」
「いいや、必要ない。やっぱ余裕あるじゃねーか。」
「それで、私は合格ですか?」
「勿論合格だ。俺と対等にやり合える奴なんて、お前くらいだろうな。シェルアが本気を出せば負けていたのは俺かもしれん…。」
「どうでしょうね。」
「配下になってくれるのはありがたいが、良いのか?人族の敵対者ともあろう立場になるのだぞ?──元勇者パーティーの者が、魔族側にいて良いのかよ。」
……やはり、エギュアスは私のことを知っていた。
知っていた上で招き入れ、娘の恩人だからと望みまで聞いてくれたのだ。
「…構いません。それに戦いを経て分かりましたが……エギュアス殿は好戦的ではありますが、平和を望む魔王だと感じました。無駄な戦争は避けると思いますが…。」
「そんな事も分かるのか…くくっ、恐ろしいな。確かに俺は平和を望む魔王だ。しかし魔族領に踏み込み、民を害す者には容赦しない。それが俺なのさ。」
「そんな王が望ましいです。私の母国では民に重税を課し、国王はその税で贅沢をしていたのです。そして、そんな強欲な王に私の師匠は殺されました。」
「なるほどな…。勇者パーティーに居たままなら、殺されていたのは俺だろう。しかし味方であれば、心強いことこの上ない。それに……、シェルアの目的は魔族側になって復讐か?」
「いえ、復讐はしません。ですが勇者の邪魔をしようかと。」
「ほう?」
私は今までの事を全て話した。
赤子のうちに両親を亡くし、師匠に養子として育ててもらったこと。
勇者パーティーでの扱いや追放。
そして今に至るのだ…と。
「そうか……シェルアの師匠の名は?」
「エルザーム、と申します。」
「あの英雄と呼ばれていたエルザームか!?」
「はい…知っておられるのですか?」
「無論だ。魔族領でも、秘密裏に凶暴化した魔物などを討伐してくれていた。我らの影の英雄だ。」
「師匠が……。」
「まさかエルザームの養子であり弟子だったとはな。この強さも納得だ。しかしシェルアの方が、エルザームの数倍は強いが…。」
「師匠に教わった魔法を、自分なりに使いやすくしていった結果です。最適化し、無詠唱を極めました。」
「なるほどな。とはいえ、もうエルザームに会うことは叶わないのだな……。」
「……。」
「下を向いてはいられん。とりあえず、かの国での事情は理解した。お前を歓迎しよう!この王城内の一室を、シェルアの自室とするように。」
「「「はっ!」」」
「そして俺の配下となっている。さらには俺と並ぶ強者だ。人族だからといって、余計な事はするなよ?シェルアに何かした際は、俺を敵に回したと思え。良いな。」
「「「承知致しました!」」」
「ありがとうございます、魔王様。」
「そんな堅苦しい呼び名はやめろ。」
「ですが、私は正式にエギュアス様の配下となったのです。『様』とお呼びするのは当然かと。」
「確かにお前は俺の配下となったが、他の配下共とはわけが違う。それに、俺と互角…或いはそれ以上の強さを持つ者に、敬称をつけられるのは嫌なんだよ。」
「分かりました……では先程までと同じく、『エギュアス殿』と呼ばせていただきます。」
「ああ、それで構わない。それと、敬語も不要だぜ。理由は同じでな。」
「それは…。」
「じゃあ命令だ。俺に畏まった態度はとるなよ。」
「承知致しました……分かったわ。これで良いかしら?」
「無論だ。」
こうして私は、魔族領『魔王エギュアス』の対等だがその配下となったのだった。
「ほほう?それが望みとな。しかし、俺の配下に弱者など要らん。どうしてもと言うのであれば、俺と勝負しろ。」
「それは面白そうですね。受けて立ちましょう。」
私と魔王エギュアスは互いに笑う。
口元が緩んでいると言った方が合っているのだろうか。
周りの魔族達は既に離れている。
そしてエギュアスは結界を張り、魔王城に被害がいかないようにしていた。
互いに見詰め合い、ゼギュアスから動いた。
魔法で威力などを強化した拳で殴りかかってくる。
「はあぁぁぁ!」
ガキンッ!!
その拳は、私の張っていた物理結界に当たった。
「凄いな、人族のシェルア!結界を張っていることは知っていたが、俺の一撃で割れないとはなぁ!」
「随分と余裕があるのですね。この城を守りながら戦闘行為をしているのですから。」
「それは同じだろう?すました顔で俺の攻撃を全て弾いてるんだからな。なんだよ、そのくそ硬ぇ結界はよ。」
「ただの物理結界と魔法防御結界ですが。」
「魔力量が尋常じゃないってことだな。お前も打ってこいよ!」
「では遠慮なく……『炎雷槍』。」
「おいおい、指を鳴らすだけで魔法を放つとはな。魔族であればそう珍しいことではないが、人族がとなると驚きだぜ。魔力操作もかなりのもんだ。」
「お褒めに預かり光栄です。ではもう一発どうぞ。『黒槍牙』。」
「おっ…と、俺の結界を割るとはな!面白い魔法だ。オリジナルか?」
「はい。オリジナルです。」
その後も戦闘は続いた。
10分経っても決着はつかず、私は引き下がることにした。
間合いを詰めてきたエギュアスに対し、私はあえて結界を弱くして受けた。
「流石ですね、魔王エギュアス殿。私の負けです。」
「お前、最後手を抜いたな?」
「あら、何のことでしょう?それよりも、治癒魔法は必要ですか?。」
「いいや、必要ない。やっぱ余裕あるじゃねーか。」
「それで、私は合格ですか?」
「勿論合格だ。俺と対等にやり合える奴なんて、お前くらいだろうな。シェルアが本気を出せば負けていたのは俺かもしれん…。」
「どうでしょうね。」
「配下になってくれるのはありがたいが、良いのか?人族の敵対者ともあろう立場になるのだぞ?──元勇者パーティーの者が、魔族側にいて良いのかよ。」
……やはり、エギュアスは私のことを知っていた。
知っていた上で招き入れ、娘の恩人だからと望みまで聞いてくれたのだ。
「…構いません。それに戦いを経て分かりましたが……エギュアス殿は好戦的ではありますが、平和を望む魔王だと感じました。無駄な戦争は避けると思いますが…。」
「そんな事も分かるのか…くくっ、恐ろしいな。確かに俺は平和を望む魔王だ。しかし魔族領に踏み込み、民を害す者には容赦しない。それが俺なのさ。」
「そんな王が望ましいです。私の母国では民に重税を課し、国王はその税で贅沢をしていたのです。そして、そんな強欲な王に私の師匠は殺されました。」
「なるほどな…。勇者パーティーに居たままなら、殺されていたのは俺だろう。しかし味方であれば、心強いことこの上ない。それに……、シェルアの目的は魔族側になって復讐か?」
「いえ、復讐はしません。ですが勇者の邪魔をしようかと。」
「ほう?」
私は今までの事を全て話した。
赤子のうちに両親を亡くし、師匠に養子として育ててもらったこと。
勇者パーティーでの扱いや追放。
そして今に至るのだ…と。
「そうか……シェルアの師匠の名は?」
「エルザーム、と申します。」
「あの英雄と呼ばれていたエルザームか!?」
「はい…知っておられるのですか?」
「無論だ。魔族領でも、秘密裏に凶暴化した魔物などを討伐してくれていた。我らの影の英雄だ。」
「師匠が……。」
「まさかエルザームの養子であり弟子だったとはな。この強さも納得だ。しかしシェルアの方が、エルザームの数倍は強いが…。」
「師匠に教わった魔法を、自分なりに使いやすくしていった結果です。最適化し、無詠唱を極めました。」
「なるほどな。とはいえ、もうエルザームに会うことは叶わないのだな……。」
「……。」
「下を向いてはいられん。とりあえず、かの国での事情は理解した。お前を歓迎しよう!この王城内の一室を、シェルアの自室とするように。」
「「「はっ!」」」
「そして俺の配下となっている。さらには俺と並ぶ強者だ。人族だからといって、余計な事はするなよ?シェルアに何かした際は、俺を敵に回したと思え。良いな。」
「「「承知致しました!」」」
「ありがとうございます、魔王様。」
「そんな堅苦しい呼び名はやめろ。」
「ですが、私は正式にエギュアス様の配下となったのです。『様』とお呼びするのは当然かと。」
「確かにお前は俺の配下となったが、他の配下共とはわけが違う。それに、俺と互角…或いはそれ以上の強さを持つ者に、敬称をつけられるのは嫌なんだよ。」
「分かりました……では先程までと同じく、『エギュアス殿』と呼ばせていただきます。」
「ああ、それで構わない。それと、敬語も不要だぜ。理由は同じでな。」
「それは…。」
「じゃあ命令だ。俺に畏まった態度はとるなよ。」
「承知致しました……分かったわ。これで良いかしら?」
「無論だ。」
こうして私は、魔族領『魔王エギュアス』の対等だがその配下となったのだった。
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