【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒

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11話

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余はテイナーシュ王国の国王。
今の時代の国王で、本当に良かったと思っている。
何故ならば、この国から勇者が産まれてきたからだ。
たったそれだけで、隣国に対する発言力も高くなる。
さらにその勇者が余の親戚、つまりは王族にあたる者ときた。
これ以上ない最高の知らせだった。

しかし、勇者ではなく『英雄』という者が現れた。
力で勝てる者など、おそらくいないだろう。
奴の名はエルザーム。
平民だったのだが功績を挙げ続けた為、名誉貴族にするほかなかった。
奴のことを利用してやろうと思っていたのだが、まつりごとには関わりたくないと言う。
余が奴を利用しようとした計画を、尽く潰された。
頭も切れるようだ。
面倒な事この上ない。


「陛下。ご報告があります。」

「何だ?」

「英雄エルザームを名誉貴族にして以降、革命を望む平民達の動きが、活発になっております。」

「ちっ。余に歯向かわんとする愚民どもが。エルザームを始末出来ればのう…。お前もそうは思わんか?」

「ご命令とあらば。」

「そうだな……一つ良いことを思いついた。エルザームを呼べ。すぐにだ。良いな?」

「陛下の御心のままに。」


余の側近には洗脳魔法をかけてある。
何もかも余の言いなりだ。
平民どもにはあらゆることに関する税を払わせている。
そして3年前に一度、税を高くした。
大体1.5倍ほどだな。
そして今年になってからもさらに引き上げてやった。
何故そこまで高くするのかの理由は、金が足りないからだ。
余の別邸やその他宝石などを買っていたら、すぐに金がなくなる。
ならば平民どもから税として、金を奪ってやれば良い。
余が国民を他国との条約を締結させたりして守っているのだ。
税が高くなろうと、払うのは当然だろう。
そして命令して30分とたたぬ間にエルザームが余の部屋へと来た。


「国王陛下。エルザームです。」

「来たか。入れ。」

「はっ。失礼致します。」

「お前に命令する。勇者パーティーに相応しい、魔法の才のある者を推薦しろ。」

「と、おっしゃいますと…?」

「勇者の力を持つゼイスが、冒険者として活動を開始することは知っているな。」

「存じ上げております。」

「パーティーメンバーを決めなければならない。お前は魔法使いであり、英雄として弟子の一人でもいるだろう。故に、魔法に秀でた者を推薦しろ。分かったな?」

「……承知致しました。」

「よう帰って良いぞ。」

「はっ。失礼致します。」


エルザームは去っていった。
険しくも、悲しそうな表情だった。
これが私の計画の始まりだと気付いているだろう。
しかし、国王には逆らえない。
だからこそ、奴は何も言い返さなかった。
愚かで滑稽な『英雄』よな。
確実に始末しておきたいものだ。


「くくくっ……。これで、これで余に逆らおうとする者共が数日後にはいなくなる。全ては余の掌の上なのだ!」


そして数日後、計画通りに事は進み、ついにエルザームが処刑された。
これ以上ないほどの満足感。
余の地位は保証されたも同然だろう。
エルザームが姿を消せば、愚民どもの勢いは落ちる。
極秘に処刑させたのは、余が殺したのだと言われ、謀反を起こさせないためだ。
全て完璧。
しかし、側近がとある内容を報告してきた。


「陛下。エルザームの養子であるシェルアが、国を出たようです。」

「血が繋がっていないとはしかし、私の休暇に合わせ、同じように休暇を取ってくれているのだ。いえ、父親を目の前で処刑されたのだ。この国を恨み、出ていったのであろうよ。予想していた通りだ。」

「左様でございますか。」


シェルアの事つう、余になんの問題もないだろうと放置した。
そして勇者達が魔族領へと向かい、一度隣国に引き返したという報告を受けたのだが、それよりも気になる噂が余に伝えられた。


「ご報告申し上げます!ゼイス様率いる勇者パーティーの皆様が、魔族領へ侵攻した後、相手の転移魔法『瞬間移動』によって隣国へと戻されたそうです!」

「そうか。上位魔法を操る魔族がいるのだな。」

「それが、魔族ではないそうです。」

「魔族ではない?」

「はい。魔王と対等に戦える人族であり、シェルアと名乗ったそうです。その者が魔族側に与し、現在『総軍団長』なる地位についているとのことです。」

「シェルア……まさか…!?」


余が初めて嫌な予感を感じ取った瞬間だった。
だがシェルアは初級魔法しか使えないと聞いていた。
しかしそれでは魔王と対等に戦えるはずがない。
実力を隠していたのかと、怒りが込み上げてくる。
復讐をしようとでも言うのか?
エルザームはシェルアに復讐はするなと言っておったが故に、それはないだろうと考えを改める。


「ゼイスは今どうしている?」

「はっ。隣国にて待機しておられます。明後日、もう一度魔族領へと向かわれるそうです。」

「そうか…。」


余はゼイスを信じる事にした。
きっと明後日にシェルアを、魔王を討ってくれるのだと。
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