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3話 奪う楽しみ(妹視点)
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婚約者を奪った時のお姉様のあの顔といったら、かつてないほどに最高だったわぁ。
最初は、宝石を奪うことから始まった。
友人から貰ったという宝石を奪った時、お姉様は絶望に満ちた顔をしていた。
私はその顔が好きになったの。
毎日行くと、すぐに楽しみがなくなってしまうので、5日に1回と決めて部屋を訪ねた。
そして一つずつ、宝石を奪っていったのよ。
お姉様は、毎回良い反応をしてくれる。
泣きそうな顔をするけれど、私には何も言ってこない。
ただ言われるがままに、私に宝石を手渡す。
宝石が無くなると、今度は服を奪った。
その後も5日に1回、必ず何か1つは奪ってやったのよ。
私のお人形さんのように、言ったら何でもしてくれる。
言うことを聞かなければ泣けばいい。
泣けばお父様が来て、お姉様から奪ってくれる。
そんな生活を続け、4年が経った。
「どうしましょう……お姉様から奪えるものが無くなってしまったわ。楽しみにしていたのに……。そうだわ!1番お姉様が悲しみそうなものを奪ってしまいましょう!」
その後の1年間は、適当なものを奪う事にしたわ。
そして私はお姉様の婚約者、ガイディアス様に近づいたの。
最初は不快という感情が顔に出ていたガイディアス様だったけれど、私の努力のおかげで少しずつ愛してくれるようになったわ。
1年も待った。
やっとお姉様の地獄に落ちたような顔が見られると、私は楽しみで楽しみで仕方がなかった。
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」
その言葉を聞いた時、私はガイディアス様の腕に身を寄せる。
「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」
今にも泣きそうな顔をして、会場を去っていくお姉様。
家に戻ったら、どう声をかけてあげましょうか。
(ふふっ、楽しみね。)
さらに絶望のどん底へと落としてあげようと思ったのだけれど、帰った時にお姉様の姿はなかった。
お父様もお母様も慌てふためいている。
「すまないシファナ、サリーエがいない!急いで探させる!」
「ごめんね、シファナ。でも絶対に戻らせるから。」
「ええ。お願いしますわね、お父様、お母様。」
少し苛ついたのだけれど、笑顔を取り繕ってそう言った。
すると私の機嫌が悪くないと判断したお父様達は、安心していた。
本当はとても機嫌が悪いのだけれど。
結局、数日が経ってもお姉様が帰って来ることはなかった。
その代わりに、手紙が一通届いた。
「ご当主様!奥様!お手紙が届いております!」
「今そんな事はどうでも良い!さっさとサリーエを探さんか!」
「いえ、それが……このお手紙を見ていただければ…。」
お父様は手紙を手に取ると、目を見開いていたのよ──
最初は、宝石を奪うことから始まった。
友人から貰ったという宝石を奪った時、お姉様は絶望に満ちた顔をしていた。
私はその顔が好きになったの。
毎日行くと、すぐに楽しみがなくなってしまうので、5日に1回と決めて部屋を訪ねた。
そして一つずつ、宝石を奪っていったのよ。
お姉様は、毎回良い反応をしてくれる。
泣きそうな顔をするけれど、私には何も言ってこない。
ただ言われるがままに、私に宝石を手渡す。
宝石が無くなると、今度は服を奪った。
その後も5日に1回、必ず何か1つは奪ってやったのよ。
私のお人形さんのように、言ったら何でもしてくれる。
言うことを聞かなければ泣けばいい。
泣けばお父様が来て、お姉様から奪ってくれる。
そんな生活を続け、4年が経った。
「どうしましょう……お姉様から奪えるものが無くなってしまったわ。楽しみにしていたのに……。そうだわ!1番お姉様が悲しみそうなものを奪ってしまいましょう!」
その後の1年間は、適当なものを奪う事にしたわ。
そして私はお姉様の婚約者、ガイディアス様に近づいたの。
最初は不快という感情が顔に出ていたガイディアス様だったけれど、私の努力のおかげで少しずつ愛してくれるようになったわ。
1年も待った。
やっとお姉様の地獄に落ちたような顔が見られると、私は楽しみで楽しみで仕方がなかった。
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」
その言葉を聞いた時、私はガイディアス様の腕に身を寄せる。
「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」
今にも泣きそうな顔をして、会場を去っていくお姉様。
家に戻ったら、どう声をかけてあげましょうか。
(ふふっ、楽しみね。)
さらに絶望のどん底へと落としてあげようと思ったのだけれど、帰った時にお姉様の姿はなかった。
お父様もお母様も慌てふためいている。
「すまないシファナ、サリーエがいない!急いで探させる!」
「ごめんね、シファナ。でも絶対に戻らせるから。」
「ええ。お願いしますわね、お父様、お母様。」
少し苛ついたのだけれど、笑顔を取り繕ってそう言った。
すると私の機嫌が悪くないと判断したお父様達は、安心していた。
本当はとても機嫌が悪いのだけれど。
結局、数日が経ってもお姉様が帰って来ることはなかった。
その代わりに、手紙が一通届いた。
「ご当主様!奥様!お手紙が届いております!」
「今そんな事はどうでも良い!さっさとサリーエを探さんか!」
「いえ、それが……このお手紙を見ていただければ…。」
お父様は手紙を手に取ると、目を見開いていたのよ──
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