7 / 11
7話 噂は事実へ
しおりを挟む
馬車に乗っている時、気になっていたことをメルヴァント殿下にお聞きした。
「殿下、とある噂を耳にしたのですが…。」
「それは、『親が妹ばかりを着飾らせ、さらに妹は姉の全てを奪った』と言うやつかい?」
「はい…。」
「私の側近に君の過去のことを話したんだよ。そしたらそれを聞いていたメイドが、広めたらしくてね。もっと注意しておくべきだった…すまない。」
「いえ、殿下が謝ることではありませんわ。お気になさらずに。」
「やはり君は優しいな…。」
どこの貴族か知られていない為、伯爵家への直接的な影響は無いようだ。
しかし、噂は時に人生を大きく変えるものだ……。
「殿下、サリーエ様、着きました。」
「ご苦労。」
「お疲れ様です。」
私達は護衛2人を連れて伯爵家へと入る。
するとすぐにお父様が来た。
「どんな面をして戻ってきたのだ、サリーエ!」
「本日は大切な報告があり、参った次第です。」
「報告だと…?」
「初めまして、ルザリシャルエ伯爵。私はルアと申します。」
「貴様か!?サリーエを連れていった張本人は!」
「本名はメルヴァント・ディア・イジェガルドと申します。サリーエとの婚約を、ご報告に参りました。」
「何だと!?第二王子殿下、サリーエとの婚約など、私は断じて認めんぞっ!」
お父様はそう叫んだ。
お母様とシファナも、怒鳴り声を聞いて駆けつける。
怒りにものを言っていたがために、咄嗟に言葉が出たようだ。
そんなお父様に、私は告げる。
「報告に参ったと私は申し上げましたわ。もう決定事項なのです。陛下は認めておられます。お父様に拒否権はありませんわ。」
「知るか!私は認めん!」
「ルザリシャルエ伯爵。報告は以上ですので、帰らせていただきます。」
「待て!貴様、勝手なことは許さん!」
あろうことか、殿下の胸ぐらを掴んだ。
さらには殴りかかろうとする。
当然護衛の騎士がお父様の首元へ剣を向けた。
「今すぐ殿下を離せ!」
「っっ!」
お父様が殿下を離すと同時に、騎士が手を縛る。
「第二王子殿下への不敬罪で、このまま王城へと連行する!」
2人を置き去りに、お父様は私達と共に王城へと向かった。
不敬罪は、死刑以外ない。
しかし、お父様は殿下の意向により終身刑となった。
そしてそれは瞬く間に、貴族社会で知られていった。
貴族社会で知られた話──
『ルザリシャルエ伯爵は、第二王子との婚約という大変光栄な事を、認めないと叫んだ挙句に王子に暴力を振るい、不敬罪で終身刑となった。
さらに、妹が姉のものを奪い続けたという噂は、ルザリシャルエ伯爵の次女、シファナが行っていた本当の事であり、長女サリーエはそれを責めないと言った。
《責めるということは、自分がされていた事を相手にするのと変わらない。》
そう言ったサリーエの優しさに第二王子は見惚れ、婚約を申し込んだ。
サリーエは、海のように広く、深い優しさを持った、見目麗しく素晴らしい方である。』
少し事実とは違うが、大方間違っていない。
この一件で、シファナは地獄を見ることになる…。
「殿下、とある噂を耳にしたのですが…。」
「それは、『親が妹ばかりを着飾らせ、さらに妹は姉の全てを奪った』と言うやつかい?」
「はい…。」
「私の側近に君の過去のことを話したんだよ。そしたらそれを聞いていたメイドが、広めたらしくてね。もっと注意しておくべきだった…すまない。」
「いえ、殿下が謝ることではありませんわ。お気になさらずに。」
「やはり君は優しいな…。」
どこの貴族か知られていない為、伯爵家への直接的な影響は無いようだ。
しかし、噂は時に人生を大きく変えるものだ……。
「殿下、サリーエ様、着きました。」
「ご苦労。」
「お疲れ様です。」
私達は護衛2人を連れて伯爵家へと入る。
するとすぐにお父様が来た。
「どんな面をして戻ってきたのだ、サリーエ!」
「本日は大切な報告があり、参った次第です。」
「報告だと…?」
「初めまして、ルザリシャルエ伯爵。私はルアと申します。」
「貴様か!?サリーエを連れていった張本人は!」
「本名はメルヴァント・ディア・イジェガルドと申します。サリーエとの婚約を、ご報告に参りました。」
「何だと!?第二王子殿下、サリーエとの婚約など、私は断じて認めんぞっ!」
お父様はそう叫んだ。
お母様とシファナも、怒鳴り声を聞いて駆けつける。
怒りにものを言っていたがために、咄嗟に言葉が出たようだ。
そんなお父様に、私は告げる。
「報告に参ったと私は申し上げましたわ。もう決定事項なのです。陛下は認めておられます。お父様に拒否権はありませんわ。」
「知るか!私は認めん!」
「ルザリシャルエ伯爵。報告は以上ですので、帰らせていただきます。」
「待て!貴様、勝手なことは許さん!」
あろうことか、殿下の胸ぐらを掴んだ。
さらには殴りかかろうとする。
当然護衛の騎士がお父様の首元へ剣を向けた。
「今すぐ殿下を離せ!」
「っっ!」
お父様が殿下を離すと同時に、騎士が手を縛る。
「第二王子殿下への不敬罪で、このまま王城へと連行する!」
2人を置き去りに、お父様は私達と共に王城へと向かった。
不敬罪は、死刑以外ない。
しかし、お父様は殿下の意向により終身刑となった。
そしてそれは瞬く間に、貴族社会で知られていった。
貴族社会で知られた話──
『ルザリシャルエ伯爵は、第二王子との婚約という大変光栄な事を、認めないと叫んだ挙句に王子に暴力を振るい、不敬罪で終身刑となった。
さらに、妹が姉のものを奪い続けたという噂は、ルザリシャルエ伯爵の次女、シファナが行っていた本当の事であり、長女サリーエはそれを責めないと言った。
《責めるということは、自分がされていた事を相手にするのと変わらない。》
そう言ったサリーエの優しさに第二王子は見惚れ、婚約を申し込んだ。
サリーエは、海のように広く、深い優しさを持った、見目麗しく素晴らしい方である。』
少し事実とは違うが、大方間違っていない。
この一件で、シファナは地獄を見ることになる…。
1,085
あなたにおすすめの小説
強欲な妹が姉の全てを奪おうと思ったら全てを失った話
桃瀬さら
恋愛
幼い頃、母が言った。
「よく見ていなさい。将来、全て貴方の物になるのよ」
母の言葉は本当だった。姉の周りから人はいなくなり、みんな私に優しくしてくれる。
何不自由ない生活、宝石、ドレスを手に入れた。惨めな姉に残ったのは婚約者だけ。
私は姉の全てを奪いたかった。
それなのに、どうして私はこんな目にあっているの?
姉の全てを奪うつもりが全てを失った妹の話。
殿下をくださいな、お姉さま~欲しがり過ぎた妹に、姉が最後に贈ったのは死の呪いだった~
和泉鷹央
恋愛
忌み子と呼ばれ、幼い頃から実家のなかに閉じ込められたいた少女――コンラッド伯爵の長女オリビア。
彼女は生まれながらにして、ある呪いを受け継いだ魔女だった。
本当ならば死ぬまで屋敷から出ることを許されないオリビアだったが、欲深い国王はその呪いを利用して更に国を豊かにしようと考え、第四王子との婚約を命じる。
この頃からだ。
姉のオリビアに婚約者が出来た頃から、妹のサンドラの様子がおかしくなった。
あれが欲しい、これが欲しいとわがままを言い出したのだ。
それまではとても物わかりのよい子だったのに。
半年後――。
オリビアと婚約者、王太子ジョシュアの結婚式が間近に迫ったある日。
サンドラは呆れたことに、王太子が欲しいと言い出した。
オリビアの我慢はとうとう限界に達してしまい……
最後はハッピーエンドです。
別の投稿サイトでも掲載しています。
頭の中が少々お花畑の子爵令嬢が朝から茶番を始めたようです
月
恋愛
ある日、伯爵令嬢のグレイスは頭の中が少しだけお花畑の子爵令嬢の茶番に付き合わされることになる。
グレイスを糾弾しているはずが、巻き込まれて過去を掘り返されていくクラスメイトたち……。
そこへグレイスの婚約者のリカルド殿下がきて……?
※10,000文字以下の短編です
妹に婚約者を取られてしまい、家を追い出されました。しかしそれは幸せの始まりだったようです
hikari
恋愛
姉妹3人と弟1人の4人きょうだい。しかし、3番目の妹リサに婚約者である王太子を取られてしまう。二番目の妹アイーダだけは味方であるものの、次期公爵になる弟のヨハンがリサの味方。両親は無関心。ヨハンによってローサは追い出されてしまう。
婚約破棄ですって?私がどうして婚約者になったのか知らないのかしら?
花見 有
恋愛
「ダーシャ!お前との婚約を破棄する!!」
伯爵令嬢のダーシャ・パレデスは、婚約者であるアーモス・ディデス侯爵令息から、突然に婚約破棄を言い渡された。
婚約破棄ですって?アーモス様は私がどうして婚約者になったのか知らないのかしら?
甘やかされて育ってきた妹に、王妃なんて務まる訳がないではありませんか。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラフェリアは、実家との折り合いが悪く、王城でメイドとして働いていた。
そんな彼女は優秀な働きが認められて、第一王子と婚約することになった。
しかしその婚約は、すぐに破談となる。
ラフェリアの妹であるメレティアが、王子を懐柔したのだ。
メレティアは次期王妃となることを喜び、ラフェリアの不幸を嘲笑っていた。
ただ、ラフェリアはわかっていた。甘やかされて育ってきたわがまま妹に、王妃という責任ある役目は務まらないということを。
その兆候は、すぐに表れた。以前にも増して横暴な振る舞いをするようになったメレティアは、様々な者達から反感を買っていたのだ。
〖完結〗妹は私の物が大好きなようです。
藍川みいな
恋愛
カサブランカ侯爵家に双子として生まれた、姉のブレアと妹のマリベル。
妹は姉の物を全て欲しがり、全て譲ってきたブレア。
ある日、ダリアル公爵家長男のエルヴィンとの縁談が来た。
ダリアル公爵は姉のブレアを名指しし、ブレアとエルヴィンは婚約をした。
だが、マリベルはブレアの婚約者エルヴィンを欲しがり、ブレアを地下に閉じこめ、ブレアになりすまし結婚した...。
主人公ブレアがあまり出てきません。
本編6話+番外編1話で完結です。
毎日0時更新。
実家に帰ったら平民の子供に家を乗っ取られていた!両親も言いなりで欲しい物を何でも買い与える。
佐藤 美奈
恋愛
リディア・ウィナードは上品で気高い公爵令嬢。現在16歳で学園で寮生活している。
そんな中、学園が夏休みに入り、久しぶりに生まれ育った故郷に帰ることに。リディアは尊敬する大好きな両親に会うのを楽しみにしていた。
しかし実家に帰ると家の様子がおかしい……?いつものように使用人達の出迎えがない。家に入ると正面に飾ってあったはずの大切な家族の肖像画がなくなっている。
不安な顔でリビングに入って行くと、知らない少女が高級なお菓子を行儀悪くガツガツ食べていた。
「私が好んで食べているスイーツをあんなに下品に……」
リディアの大好物でよく召し上がっているケーキにシュークリームにチョコレート。
幼く見えるので、おそらく年齢はリディアよりも少し年下だろう。驚いて思わず目を丸くしているとメイドに名前を呼ばれる。
平民に好き放題に家を引っかき回されて、遂にはリディアが変わり果てた姿で花と散る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる