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23.欺瞞

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 俺達が護衛隊の隊舎へ伺うと担架の上に死体らしき物の上にボロ布が被せられ、放置されていた。

 周りを護衛隊員に囲まれていると、人集りがさっと引いて……

「くっくっくっ……騎士団はどこを調べていたのだ? まったく……無能の集まりとは貴様らのこと。もっと仕事に励んだら、どうだ?」

 ヘンリー殿下が現れ、いつものように嫌みを吐いてくる。隊長のアランも側におり……

「雁首揃えて、どこを探し回っていたのやら、税金泥棒とはお前らのことを指す。しっかり俺達を見習えよ、マグロの夫さんよ」

「その他のことはアランの言う通りだ……面目ない。だが、俺の婚約者を悪く言うのは止めてもらおう」

 俺が威圧するようにアランを睨むと気圧されたのか……

「お、おう……」

 そんな返事を返した。殿下達の嫌みを受け流しつつ、機嫌を伺い、問う。

「殿下、亡骸の確認をしたいのですが……」
「勝手に見るがいい! だが、貴様らの期待するようなものは何もないぞ、はーっはっはっはっ!!!」

 アーシャの証言では犯人はヘンリーであることは間違いない……だが、その犯人は俺達の目の前で驕り高ぶっている。

 ヨルギス達が検分しているが、首を振っていた。

「団長……顔は焼かれてましたが局部は男性の平均くらいでした。極端に小さい物ではありません」

 そんな風に俺に小声で耳打ちしている。


 人身御供か……


 俺達は護衛隊舎をあとにしようとするが……後ろからゲラゲラと嘲笑う声が響いていた。

「団長……俺、悔しいです!」

 ヨルギスが瞼に涙を浮かべ、奴らを背にする。俺は信頼出来る部下の肩を抱き……

「俺もだ! それだけじゃない。他の騎士団も皆同じだろう。だが、今は堪えろ」
「はい……」

 騎士団長室に戻り、考えていた。

 犯人が粗チンだと知ってるのはアーシャだけ。護衛隊から差し出された犯人とされた死体と違うのは明白だ。

 俺達が把握してる限り、襲われた若い娘で生きている者はいない。たとえ、助かったとしても証言を得るのは難しいだろう……

 露出狂に乱暴されたなんて、言おうものなら醜聞そのもの……未婚なら結婚出来なくなるし、結婚してるなら、離婚ものだ……

 アーシャが証言したところでヘンリー憎しから出た世迷い言として、信じてもらえる訳がない。

 くそっ!!!

 全部、ヘンリーの思った通りに進んでいたんだ……

 俺はダンッ! と机を握った拳で叩いてしまっていた。そんなときに……

「ヴェル! 大変だ! 護衛隊が討伐に出発しちまったぞ」

 ソフィーが部屋のドアから叫んだ。俺は急いで窓から外を眺めると石畳を踏み鳴らし、護衛隊の隊員達が馬や徒歩で進軍している。

 しまった! あいつら、集まってたやつらは全員、軍装だった……それに死体からは腐敗臭も……既に捕縛し、殺していたのに敢えて公表せずに俺達を街の警備で疲弊させてから、準備万端で村の討伐に出掛けたのか……

「ソフィー、第三で動ける奴はいるか?」

「あ~? んなもん、ヴェルんとこと変わんねえよ。精々、あたしを入れて四、五人てとこ。非番まで休まずに仕事させちまったからなぁ……」

「そうか、お前のところもか……」

「ヨルギス、お前、斥候スカウトは得意だったよな?」
「はい! 任せて下さい! こそこそ動くのには自信があります」

「あいつらの様子を探ってきてくれ! 但し、何があっても絶対に動くなよ」
「了解です! 早速、追走してきます」
「済まない……だが、よろしく頼む」

「ヨルギス! 終わったら、あたしがご褒美くれてやんよ」
「はは、ソフィー団長、期待してます」

 そう言うと頼れる俺の片腕は支度を済ませ、護衛隊を追走に出掛けたのだった。
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