夜は異世界で舞う

穂祥 舞

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16 熱誠

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「ハルさん、俺もういきそう、なんだけど……ちょっと、ちんこ復活してる?」
「え?」

 耳許で吐息混じりに言われて下を見ると、晴也のものが緩く立ち上がり、晶の腹に触れそうになっていた。

「ほんとだ」
「でもごめん、もう無理……ひいひい言わせてやるつもりが俺がひいひい言ってるよ」
「いいよ、俺そんな何回もいかして貰わなくてもいい」

 晴也が言うと、晶は嬉しそうに笑う。

「ハルさんは優しい……あっ」
「早くいっちゃえ」

 軽くキスするつもりが、晶に首を押さえつけられて、深々と舌を交わらせる羽目になった。頭の中が白濁してくる。晶は夢中で晴也を貪り、もう話す余裕が無い様子だった。
 下から突き上げる動きが深く、速くなり、お互いの体温が上がる。ああ、気持ちいいかもしれない。晴也も晶との口づけに夢中になる。
 晶は晴也の背中を強く抱きしめ、ああっ、とひとつ声を上げた。晴也の中で晶のものが、また熱く膨らんだようだった。彼はびくびくと身体を震わせて、かすれた声で晴也の名を呼ぶ。晴也が彼の前髪に手を入れると、熱い額は汗で湿っていた。中で擦れていたものの動きが止まったので、昇り詰めたのだなと理解した。
 こんなに夢中になって自分を抱いてくれる晶が、愛おしい。晴也は広い背中を撫でながら、彼の呼吸が静まるのを待った。いい匂いが立ち上がり、晴也の満足感を増幅させた。
 晴也の中で、晶のものが少しずつ滾りを治めていくのがわかる。やがて彼は晴也の中から、名残惜しそうに出て行った。熱い圧迫感が、するりと抜ける。

「ハルさんごめん、先にいって……」
「気にするなよ、身体拭いて休もう」
「だめだ、すぐによくするから」

 晶はコンドームを外した。ティッシュにくるんでゴミ箱に入れると、右手にまたローションを出す。

「感謝のお返しだよ」

 晶に仰向けに押し倒され、晴也はわっと叫んだ。彼はローションまみれの手で晴也のものを掴み、優しく手を動かす。ローションがぬるぬる動く感触に、晴也は震えた。

「ひゃっ、何これ、あっ……!」
「たまにはいいだろ、すぐにいけるよ」

 晶は唇を重ねてきながら、手の動きを大きくした。引き始めつつあった気持ち良さが、津波になってぶつかってきたような気がした。内腿がきゅっとなり、背筋がぞくぞくする。晴也は晶の口の中でうんうん言いながら、あっという間に昇り詰めてしまう。
 あっ、今度こそ汚した。晴也は一瞬飛ばしていた意識を自分に戻して、下を見る。晶はティッシュを用意していたが、その引き締まった腹部には、晴也の漏らしたものが飛び散っているように見えた。

「ショウさん、ごめん……」

 晶はえ? と言いながら、晴也のものについたローションを拭う。敏感になっているので、思わずうっ、と声が出てしまった。

「ふふ、可愛いなぁ、俺の小鳥ちゃんは」

 晴也は顔を熱くした。

「……またうんこ引っ掛けたよ」
「ああ、これはうんこじゃないぞ、聖水だ」

 晴也は言葉を失った。この変態。手の甲をつねってやると、晶はあんっ、と変な声を出した。それが可笑しくて、晴也は笑う。晶は晴也の上に乗っかってきて、抱きしめてくれた。笑い声が硬い胸の中から聞こえる。
 何かよくわからないけど、大好きだ。処女を捧げた恋人の温かい腕の中で、晴也は叫びたいのを必死でこらえていた。すると代わりに鼻の奥がつんとして、熱い涙が溢れ出た。



 もう一度晴也が目覚めると、カーテンの向こうが明るくなってきたのが視界に入った。微かに雀の鳴き声が聞こえてくる。
 2人で軽くシャワーを浴び、身体をきれいにしたのが、夜中の2時半だった。3時間ほど熟睡していたようだ。
 晶は瞼を落とし、すうすうと安らかな寝息を立てていた。さっきは浴室の中で、晴也が泣くものだから、尻の穴やその他のところに痛みがあるのかとずっと気にしてくれていた。かなり申し訳なかった。
 心配をかけないようにしないと。晴也は晶の無防備な寝顔を見ながら、考える。感じ方が全然違ったり、迷惑をかけたくなくて取った行動が裏目に出たりして、一人のひとと深く交際するのは、やはり難しい。でも……楽しいのかもしれない。
 晶は自分のことを、天使だとか女神だとか言うけれど、それは贔屓目が過ぎると思う。晴也にとっては晶こそが、水の底に沈んでいた自分に、浮き上がって来いと粘り強く手を差し伸べてくれた天使だ。

「好き」

 晴也は整った顔に向かって言ってみる。熟睡している晶は、瞼さえ動かさなかった。

「……何とか言えよ馬鹿」

 いやいや、こんなことを言いたいのではない。晴也は一人で肩をもぞもぞ動かして、黒い髪に軽く触れた。そして小さく言う。

「いつもありがとう……帰ってきてからもよろしく! 以上」

 晶は少し首を動かしたが、やはり寝ている。別に返事が欲しい訳ではないので、晴也は温かい頬に指先で触れてから、目を閉じた。今日はゴールデンウィークの最終日で、晶の離日前の最後の休日だ。何をして過ごそうか?
 晴也は温もりと柔らかい匂いがもたらす幸福感に息をついたが、そっと晶が瞼を上げて黒い瞳を覗かせたことには、全く気づいていなかった。彼は頬と耳を染めて、寝直そうとする晴也を起こさないよう、必死で笑いを堪えていた。
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