黄金郷の夢

文月 沙織

文字の大きさ
41 / 150

陥穽 五

しおりを挟む
「エリス、どけよ」
 エリスを下がらせて、アーミナは褥にあがると、連珠の持ち手の銀輪を取り、アベルの臀部に近づける。香油のかおりがたちのぼる。アベルは脚にしずくが落ちるのを感じて、身をすくめた。
「うう……」
 油で濡れたアーミナの方手が、臀部の一番やわらかい箇所に触れてきた。
「あっ、ああ……!」
 肉を割られる恐怖と羞恥にアベルはふるえずにいられない。刀剣や弓矢を前にしたとしても、ふるえるたことなど一度もなかったというのに。
「じっとしていろよ。ふーん……、綺麗な色だな。汚れのない桃色だな。……やや濃い、桃色の蕾、というところかな。エリス、おまえ、ここを少し持っていろよ」
「わかった」
 少年宦官たちは場違いなほど気楽な口調で役割分担をきめる。アベルの額の汗は多くなる。いや、額だけでなく、背にも肩にも腰にも脚にも恐怖と恥辱の汗が噴きだす。
「さ、入れるぞ。覚悟はいいな?」
「あっ、ああ、待って、待ってくれ!」
 今まで散々辱しめを受けてはいても、そこをいじられるのは初めてで、さすがにアベルは悲鳴をあげずにいられない。いや、最初の夜に王に指で刺激されたことはあったが……、今はそれ以上の恐怖が迫ってきている。
「うるさい。騎士のくせに、つくづく往生際が悪いな。潔く負けを認めろよ。ほら、入れるぞ」
(ああ……)
 そこに、小さな、固い、濡れた物があてがわれたのをアベルは感じた。
「う、うわぁ!」
 
 ぷつり――、という音なき音がアベルの耳に響いた。

「あっ、あっ、やめ、やめ、やめろ! やめろ!」
 アベルは目の前が文字どおり真っ暗になったのを感じて、恥も見栄もわすれて、叫んでしまう。
「大袈裟だな、こんな豆粒程度のもので。ほら、いくぞ」
「ひっ、ひぃっ!」

 ぷつり、ぷつり――。

「ああっ! ああっ! ああっ! やめ、やめてくれ、やめて!」
 少年宦官たちは苦笑した。
 アーミナのいうように、トパーズの大きさは本当に小さな物で、わずか数粒入れられただけでアベルの反応は大げさに思えたのだ。
「うるさいよ! これぐらいでぴぃぴぃ泣くなんて、とんだ見かけ倒しだな」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

処理中です...