恋に似ていた

美里

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俊の部屋の玄関で、もう一度倫太郎は、久しぶりだな、と言った。
 俊は、夏以来だもんな、と応えた。その口調は明らかに苛立っていて、倫太郎は怪訝そうに俊を見た。
 なんでもない、と、なにも訊かれないうちに俊は口の中で呟いた。
 そうならいいけど、と、倫太郎は肩をすくめた。
 ビールでも飲みに行くか、とは、どちらも言わなかった。
 俊は一瞬言おうとしたのだ。でも、口に出す前にその言葉を飲み込んだ。
 だって、俊は越前にはなれない。
 消耗されるだけの関係性に、今更ビールなんてオプションを付けてみても虚しいだけだ。
 くく、と、倫太郎が小さく笑った。
 それは、秘密の話を打ち明ける前の、小さな子どもみたいに。
 けれど、もちろん、倫太郎が俊に何かを打ち明けることはなく。ただ彼は笑みを引っ込めると、俊の肩を押してベッドの方へ追いやった。
 俺なんて消耗品なんだろう。
 出かけた言葉をまた飲み込んだ。
 多分倫太郎には、俊や、その他の男たちを消耗している自覚なんかない。越前とその他を区別している自覚すらないだろう。
 ベッドの前で倫太郎は、子どもの遊びの延長みたいに服を脱いだ。
 その仕草は夏の間と変わらないのに、自分が惨めに思えて仕方がないのは、越前の存在を知ってしまったからだろう。
 俊も、やけくそみたいに服を脱いだ。目の前のただの男の身体に、どうして自分が欲情するのかこれ以上考えたくなくて。
 ベッドにもつれ込み、肌を重ねてしまえば、体温は夏の間と同じだった。
 それならば、行為だってなにが変わるわけでもない。
 どうして、と、行為が終わった後俊は訊いた。訊くつもりなんてなかったのに、性交後の火照った身体が勝手に言葉を絞り出していた。
 どうして、今日俺を呼び止めたのか。
 すると倫太郎は、裸でベッドに寝そべったままへらりと笑って、順番、と言った。
 「順番的に、今日が俊の番だったんだよな。」
 順番ってなんだよ、と、問い詰めたかった。
 それなのに俊は、どうでも良さそうに頷くしかなかった。
 きっと、俊はすれ違った男たちとひとまとめにされ、手帳に番号でも振られて名前が書き込んであるのだろう。
 「……越前は。」
 負け惜しみみたいな問いをした。少しでも倫太郎の表情を崩させたかった。その手段が越前しかないことが、バカみたいだった。
 「越前?」
 きょとんと首を傾げた倫太郎は、いっそ無邪気にすら見えた。
 けれどその無邪気な顔をした生き物は、にやっと笑って言ったのだ。
 「越前は背番号一番。」


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