14 / 36
2
しおりを挟む
呆然と突っ立っている夕と違い、陽子はすぐに行動を開始した。ブーツのまま堂々と畳敷きの部屋を横切り、作り付けの押し入れの襖を開けたのだ。
「秘密の手紙の隠し場所って言うのは、こういうとこって決まってるんですよ。」
歌うように言いながら、陽子が押入れの天井をごそごそと探し出す。そして、あ、と短く声を上げた。
どうした、と、夕も押入れに駆け寄る。
すると陽子は、得意げに30センチ四方くらいの薄い板を押し入れから取り出した。
「ここから天井裏に行けるようになってるみたいですね。」
ここ、と、彼女が頭のてっぺんで示した先には、押し入れの天井に四角く穴が空いていた。その中は、ただ真っ暗い。
「こういうとこに手紙かなにかが……、」
そのどこに通じているのかも分からない真っ黒の穴に、陽子は臆せず頭を突っ込んだ。そして、一つの小箱を手に戻ってきた。
「秘密の箱?」
陽子の両手には少し余るくらいの大きさのその箱は、きれいに水色の千代紙が貼られ、年月を超えて大切に保管されていたことが伺えた。
「開けますね。」
夕の心の準備が整う前に、陽子が容赦なくその小箱を開けた。
中にはまず、一枚の和紙が。
そこには筆書きでただ二文字、面影、と書かれていた。
「面影?」
陽子が大きな目を瞬かせる。
「これ、藤さんの字ですか?」
問われた夕も、藤の筆跡など知っているわけもない。でも、多分そうだろう、と首を縦に振った。
繊細に整ったその筆の跡は、藤の印象にとてもよく似ていた。おそらくは、藤の手だろう。
陽子が軽く頷き、その紙をのける。
するとその下から出てきたのは、大量の写真だった。
「……夕さま?」
写真を文机一面に広げ、陽子が首をひねる。
その写真にはどれも、確かに夕によく似た男の姿が映されていた。けれど、夕にはすぐにそれが自分ではないと分かる。
「……親父だよ。」
そこにいたのは、若い頃の夕の父親だった。9つや10くらいから、はたちくらいまで、大量の写真が集められていた。
なぜこんなものを藤は天井裏に隠していたのだろう。
夕は首を傾げた。
自分の旦那の写真だ。そんなもの、写真立てに入れるなり、屏風に貼り付けるなりして、いくらでも持っておけばいい。それなのに、なぜ天井裏なんかに。
「秘密の手紙の隠し場所って言うのは、こういうとこって決まってるんですよ。」
歌うように言いながら、陽子が押入れの天井をごそごそと探し出す。そして、あ、と短く声を上げた。
どうした、と、夕も押入れに駆け寄る。
すると陽子は、得意げに30センチ四方くらいの薄い板を押し入れから取り出した。
「ここから天井裏に行けるようになってるみたいですね。」
ここ、と、彼女が頭のてっぺんで示した先には、押し入れの天井に四角く穴が空いていた。その中は、ただ真っ暗い。
「こういうとこに手紙かなにかが……、」
そのどこに通じているのかも分からない真っ黒の穴に、陽子は臆せず頭を突っ込んだ。そして、一つの小箱を手に戻ってきた。
「秘密の箱?」
陽子の両手には少し余るくらいの大きさのその箱は、きれいに水色の千代紙が貼られ、年月を超えて大切に保管されていたことが伺えた。
「開けますね。」
夕の心の準備が整う前に、陽子が容赦なくその小箱を開けた。
中にはまず、一枚の和紙が。
そこには筆書きでただ二文字、面影、と書かれていた。
「面影?」
陽子が大きな目を瞬かせる。
「これ、藤さんの字ですか?」
問われた夕も、藤の筆跡など知っているわけもない。でも、多分そうだろう、と首を縦に振った。
繊細に整ったその筆の跡は、藤の印象にとてもよく似ていた。おそらくは、藤の手だろう。
陽子が軽く頷き、その紙をのける。
するとその下から出てきたのは、大量の写真だった。
「……夕さま?」
写真を文机一面に広げ、陽子が首をひねる。
その写真にはどれも、確かに夕によく似た男の姿が映されていた。けれど、夕にはすぐにそれが自分ではないと分かる。
「……親父だよ。」
そこにいたのは、若い頃の夕の父親だった。9つや10くらいから、はたちくらいまで、大量の写真が集められていた。
なぜこんなものを藤は天井裏に隠していたのだろう。
夕は首を傾げた。
自分の旦那の写真だ。そんなもの、写真立てに入れるなり、屏風に貼り付けるなりして、いくらでも持っておけばいい。それなのに、なぜ天井裏なんかに。
10
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
窓のない部屋の、陽だまりみたいな君
MisakiNonagase
BL
都心の高層ビル、その「内臓」とも言える地下一階のメール室。
そこで働く山﨑智之は、目立たず、期待されず、淡々と郵便物を捌く「透明人間」のような毎日を愛していた。自分は低スペックで、華やかな地上には居場所がない。そう、諦めていた。
そんな彼の静寂を破ったのは、二十二階の住人、若きエース・風巻隼人だった。
完璧なルックス、圧倒的な成果、羨望の眼差しを一身に浴びる彼が、なぜか地下のメール室に足繁く通い始める。
「五分だけ、ここにいさせてくれないか」
一通の郵便物から始まった、五分間だけの秘密の共有。
次第に剥き出しになっていく隼人の孤独と、それを無自覚に包み込んでしまう智之の温度。
住む世界が違う二人が、窓のない部屋で見つけたのは、名前のつかない「救済」だった。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる