13 / 79
13 エリカの鼓動は跳ねた
しおりを挟む
「他の令嬢もですが、ミランダが男性にもてるからって、やっかみで彼女に嫌がらせをするんです。それが最近エスカレートしてきて……特にヴァイオレットは、ティモシーの件もあり酷いものでした」
その時のことを思い出したのか、エリカが苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「私がヴァイオレットに叩かれた時点で、”叩かれた。顔に傷をつけられた”って騒ぎを大きくするつもりでした。殿下が仰った通り、ヴァイオレットは女性たちを吊るし上げて、あちこちに恨みを買っています。こちらに非はありませんし、私たちに同情が集まって、もうミランダに手を出せなくなると思ったんです。でもまさか、断罪できるとまでは思いませんでした。ダニエル殿下のお陰です。ありがとうございました」
「……パーティー会場から離れたこんな場所で、気づいてくれる人がいなかったら、どうするつもりだったんだ?」
「ちょうど衛兵が巡回する時間でしたから」
「ああ――」
確かに自分も衛兵から、”ちょっとした騒ぎになっている”と報告を受けて、様子を見にやって来たのだ。
「そうか。ただ、彼女の装飾過多な扇で、しかもあの勢いで叩かれたらただではすまなかった筈だ」
「それは覚悟の上です。いっそのこと傷ついたほうが、ヴァイオレットも言い逃れができなくなります。自分で言うのもなんですが、平凡な器量ですから少しくらい傷がついても大したことはないと思いました」
「君の行為は、まるで姫君を守る騎士のようだが、絶対にだめだ。一生残る傷になるかもしれないし、そうしたらミランダは君の傷を見るたびに罪悪感に苛まれるんじゃないか?」
「あ……」
エリカの顔には”いま気づいた”と書いてあった。
エリカは一見して、何て事ないように言っている。しかしヴァイオレットが扇を振り下ろそうとした時、彼女がギュッと目を瞑って小さく震えていたのをダニエルは見逃さなかった。
(友達思いのいい娘だ。怖かっただろうに……)
その時ダニエルの中に、エリカの事を守ってやりたいという想いが芽生えた。
王子であるダニエルに媚びもせず、飾らずに話すところも好ましい。彼は久かたぶりに肩の力を抜いて、女性と普通に話せた気がした。
エリカが澄んだ瞳でダニエルを見上げる。
「ダニエル様に助けて頂いた時は心から安堵いたしました。私たちの味方になって下さったことも、大変嬉しく思っております」
感謝の気持ちがこもった、溢れんばかりの笑みを向けられて、ダニエルは魅せられたようにエリカを見つめた。
じっと見つめられたエリカは、戸惑いがちに顔を俯ける。白い首筋がほんのりと紅く染まっているのが初々しい。
「もう二度とこんな事をしてはいけない。何かあったら、必ず私に言うんだ。君たちは最優先で部屋に通すよう、臣下に伝えておく」
「はい、ありがとうございます」
お礼を言うエリカの頬に、ダニエルの手が伸びてきた。
ピクっと肩を揺らして、エリカが目を瞬かせる。
「叩かれなくて、この愛らしい顔に傷がつかなくて本当に良かった――」
優しく触れる掌に、愛おし気な眼差しに……エリカの鼓動は大きく跳ねた。
「王子、お時間です」
「ああ、分かった」
ダニエルは名残惜し気に、エリカから手を離す。
「それではこれで失礼するよ」
二人して王子を見送った後……
”はうっ―”……とミランダが、身を捩らせながら溜息を吐いた。
「ダニエル王子、格好良かった。いいなぁ、エリカ。頬に触れられて」
「わたしはとても……心臓に悪かった……」
「でも今はそれよりも、エリカありがとう! 私のために!!」
感激の涙で顔をぐしゃぐしゃにしたミランダが、ドンッとぶつかるようにしてエリカに抱きついた。
その時のことを思い出したのか、エリカが苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「私がヴァイオレットに叩かれた時点で、”叩かれた。顔に傷をつけられた”って騒ぎを大きくするつもりでした。殿下が仰った通り、ヴァイオレットは女性たちを吊るし上げて、あちこちに恨みを買っています。こちらに非はありませんし、私たちに同情が集まって、もうミランダに手を出せなくなると思ったんです。でもまさか、断罪できるとまでは思いませんでした。ダニエル殿下のお陰です。ありがとうございました」
「……パーティー会場から離れたこんな場所で、気づいてくれる人がいなかったら、どうするつもりだったんだ?」
「ちょうど衛兵が巡回する時間でしたから」
「ああ――」
確かに自分も衛兵から、”ちょっとした騒ぎになっている”と報告を受けて、様子を見にやって来たのだ。
「そうか。ただ、彼女の装飾過多な扇で、しかもあの勢いで叩かれたらただではすまなかった筈だ」
「それは覚悟の上です。いっそのこと傷ついたほうが、ヴァイオレットも言い逃れができなくなります。自分で言うのもなんですが、平凡な器量ですから少しくらい傷がついても大したことはないと思いました」
「君の行為は、まるで姫君を守る騎士のようだが、絶対にだめだ。一生残る傷になるかもしれないし、そうしたらミランダは君の傷を見るたびに罪悪感に苛まれるんじゃないか?」
「あ……」
エリカの顔には”いま気づいた”と書いてあった。
エリカは一見して、何て事ないように言っている。しかしヴァイオレットが扇を振り下ろそうとした時、彼女がギュッと目を瞑って小さく震えていたのをダニエルは見逃さなかった。
(友達思いのいい娘だ。怖かっただろうに……)
その時ダニエルの中に、エリカの事を守ってやりたいという想いが芽生えた。
王子であるダニエルに媚びもせず、飾らずに話すところも好ましい。彼は久かたぶりに肩の力を抜いて、女性と普通に話せた気がした。
エリカが澄んだ瞳でダニエルを見上げる。
「ダニエル様に助けて頂いた時は心から安堵いたしました。私たちの味方になって下さったことも、大変嬉しく思っております」
感謝の気持ちがこもった、溢れんばかりの笑みを向けられて、ダニエルは魅せられたようにエリカを見つめた。
じっと見つめられたエリカは、戸惑いがちに顔を俯ける。白い首筋がほんのりと紅く染まっているのが初々しい。
「もう二度とこんな事をしてはいけない。何かあったら、必ず私に言うんだ。君たちは最優先で部屋に通すよう、臣下に伝えておく」
「はい、ありがとうございます」
お礼を言うエリカの頬に、ダニエルの手が伸びてきた。
ピクっと肩を揺らして、エリカが目を瞬かせる。
「叩かれなくて、この愛らしい顔に傷がつかなくて本当に良かった――」
優しく触れる掌に、愛おし気な眼差しに……エリカの鼓動は大きく跳ねた。
「王子、お時間です」
「ああ、分かった」
ダニエルは名残惜し気に、エリカから手を離す。
「それではこれで失礼するよ」
二人して王子を見送った後……
”はうっ―”……とミランダが、身を捩らせながら溜息を吐いた。
「ダニエル王子、格好良かった。いいなぁ、エリカ。頬に触れられて」
「わたしはとても……心臓に悪かった……」
「でも今はそれよりも、エリカありがとう! 私のために!!」
感激の涙で顔をぐしゃぐしゃにしたミランダが、ドンッとぶつかるようにしてエリカに抱きついた。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ
猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。
当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。
それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。
そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。
美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。
「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」
『・・・・オメエの嫁だよ』
執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?
悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?
いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー
これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。
「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」
「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」
冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。
あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。
ショックで熱をだし寝込むこと1週間。
目覚めると夫がなぜか豹変していて…!?
「君から話し掛けてくれないのか?」
「もう君が隣にいないのは考えられない」
無口不器用夫×優しい鈍感妻
すれ違いから始まる両片思いストーリー
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です
くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」
身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。
期間は卒業まで。
彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる