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サヴァリッシュ王国
監禁
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「ん…。」
体の節々が痛い。
だけどだんだんとぼやけた視界が良好になっていく。
「起きたか」
アレフガートさんの声だ。
久しぶりに聞いたからかどことなく固く感じだけれど、いつもの深みのある落ち着く声。
そばで僕の手を握っててくれたらしい。なんだか何処となく暗い眼をしているが、アレフガートさんだ。
彼が側にいてくれている事実に胸がじんわりと温まる。
「ずっと…こ、ごに?」
声がかすれてうまく出ない。だけどどれ程自分が眠っていたのか気になった。
しかしそれを聞く前にある違和感に気づく。
「アレ゛、フ、ガトさん…?ご、れ…」
身体をみると、一番酷く裂けていたであろう脇の下の部分は光の精霊王様が直してくださったからか、傷なんてものはなかったもののようだけど、身体中そんな怪我してないでしょと思うところまでありとあらゆる場所に包帯が巻かれている。
だけど、一番驚いたのは足に鉄の枷がついていたことだ。
「やはり痛いか、何処が痛む?」
「ぞ、じゃっなぐ、で…、ごれ…は?」
「あぁそれか。俺はもう二度と、シヅルを外に行かせないと決めたんだ。」
「どっゆ、こと、です…か?」
「そのままの意味だ。無茶をして、こんなに自分の身体に傷をつけて。小さなうちから俺に縛り付けたら可哀想だからと我慢して自由にさせていたらこのザマだ。」
「え゛…」
「安心しろ。ここは俺の城だ。俺とお前だけだ。誰にも邪魔はできん。」
「な゛っ…!」
俺とお前だけ?他の人達は?外に出さないとは?どういうこと?
というか他の人達はどうなったの?
思わずベットから起き上がり降りようとする。
しかし、すかさず彼が僕の肩をベットに押し付け、彼がベッドに乗り上げてきた。そして身動きが取れないようにされる。
「どこに行こうとしてる…?まさか、逃げようとでも?」
「ち、が…。」
彼の鋭い眼光が僕を刺し、僕は動揺してうまく話せない。
「お前を傷つける奴はいないから、ここにいろ。」
「ほ、ほがのっみ、んな、あ…」
そういうと彼は途端に眉をこれでもかというほど顰める。
「なぜ?なぜそんなことを考える?ほかのやつの事なんて考えるな。大体ッほかのやつのことを助けたりするからこんなに酷いことになったんだろ。だから、もう、俺の事だけを考えていろ。」
「え゛……」
「ッ!」
不機嫌さを凝縮させ、すごみさえ感じる低音の声で僕に言い放った。
その言葉に固まってしまった僕を一瞥すると僕に背を向ける。
「とりあえず、怪我を早く治す事に専念しろ。」
ドアが大きな音をたてて閉じられる。
手が震えている。怖かった。今のアレフガートさんは。
いつもの僕を気遣うような落ち着く声色ではなかった。
というかほかのやつのことを考えるなって何?
なんであんなに怒っているの?
何が彼をあんなにしたんだ?
いつもと違うどこか暗い思い悩んだような表情につらそうに歪な感情を僕にぶつける彼に。
違う。僕がそうさせたんだ。
彼が僕の事を番として考え伝えてくれているのにもかかわらず僕は中途半端な態度をとり続け、挙句の果てにこれだ。
僕は彼に何も返せていない。ただ彼を苦しめるだけの存在だった。
やっぱり僕は消えた方がいい。
彼のためにならない。番としての役割を早く終えて、なるべく彼から早く離れるべきだったんだ。
そうだ。最初からそうすればよかったんだ。
大体こんなに醜い僕が彼の番だなんて方がおかしいんだ。
改めて自分を見つめなおしてみる。
くるくるでいつでも落ち着かない黒い髪に野暮ったいイメージを与える奥二重、全く整っていない鼻と口。そしてなかなか体力がつかない貧弱で貧相な身体。性格なんて根暗で辛いことから逃げる卑怯で姑息で汚い人間。
ほら、どこにもいいところなんてない。
弟みたいな可愛らしい子が彼にはふさわしい。
どうしようもなくなって、頭がこんがらがって、涙があふれてくる。
僕には泣く資格なんてないのに。
それでも止まらなくて、両手で頭を抱え前かがみになり、まるで吐くような格好で泣いた。
―――
風の精霊王シリルと光の精霊王ルシフェル
二人してシヅルの様子を水晶を通してシヅルを眺めている。
「あーあ。監禁とか最悪な状況じゃねぇかよ。」
「仕方ない。僕らにできるのはシヅルが考えられるようにある程度の傷をそのままにしておくことのみだった。」
「僕らじゃねぇ。それやったの俺な。」
「僕の助言がなかったらお前考えつかなかっただろ。」
「あ゛?んな事ねぇし。」
「まぁそれはおいておいてこの先どうするか、だ。このままではもっと不味い方向に向かって行くぞ。シヅルはたださえ自己評価が低くて自分を悪くしか見れていないのだから。」
「あの竜のやつもなぁ、やっぱシヅルを任せるにはちと未熟すぎんじゃねぇの?」
「…。」
その時二人の耳にある威厳を落ち着きを加えた声が届いた。
『ルシフェル、シリル。放っておきなさい。我らが干渉できるのは愛し子が求めてきたときのみ。』
「「ッ!かしこまりました…。」」
我らが主の言うことだ。従う他ない。
この網の目のように絡まった糸が解けますように。
そしてシヅルがどうか良い方向へと導かれますように。
二人の精霊王は願うのみであった。
体の節々が痛い。
だけどだんだんとぼやけた視界が良好になっていく。
「起きたか」
アレフガートさんの声だ。
久しぶりに聞いたからかどことなく固く感じだけれど、いつもの深みのある落ち着く声。
そばで僕の手を握っててくれたらしい。なんだか何処となく暗い眼をしているが、アレフガートさんだ。
彼が側にいてくれている事実に胸がじんわりと温まる。
「ずっと…こ、ごに?」
声がかすれてうまく出ない。だけどどれ程自分が眠っていたのか気になった。
しかしそれを聞く前にある違和感に気づく。
「アレ゛、フ、ガトさん…?ご、れ…」
身体をみると、一番酷く裂けていたであろう脇の下の部分は光の精霊王様が直してくださったからか、傷なんてものはなかったもののようだけど、身体中そんな怪我してないでしょと思うところまでありとあらゆる場所に包帯が巻かれている。
だけど、一番驚いたのは足に鉄の枷がついていたことだ。
「やはり痛いか、何処が痛む?」
「ぞ、じゃっなぐ、で…、ごれ…は?」
「あぁそれか。俺はもう二度と、シヅルを外に行かせないと決めたんだ。」
「どっゆ、こと、です…か?」
「そのままの意味だ。無茶をして、こんなに自分の身体に傷をつけて。小さなうちから俺に縛り付けたら可哀想だからと我慢して自由にさせていたらこのザマだ。」
「え゛…」
「安心しろ。ここは俺の城だ。俺とお前だけだ。誰にも邪魔はできん。」
「な゛っ…!」
俺とお前だけ?他の人達は?外に出さないとは?どういうこと?
というか他の人達はどうなったの?
思わずベットから起き上がり降りようとする。
しかし、すかさず彼が僕の肩をベットに押し付け、彼がベッドに乗り上げてきた。そして身動きが取れないようにされる。
「どこに行こうとしてる…?まさか、逃げようとでも?」
「ち、が…。」
彼の鋭い眼光が僕を刺し、僕は動揺してうまく話せない。
「お前を傷つける奴はいないから、ここにいろ。」
「ほ、ほがのっみ、んな、あ…」
そういうと彼は途端に眉をこれでもかというほど顰める。
「なぜ?なぜそんなことを考える?ほかのやつの事なんて考えるな。大体ッほかのやつのことを助けたりするからこんなに酷いことになったんだろ。だから、もう、俺の事だけを考えていろ。」
「え゛……」
「ッ!」
不機嫌さを凝縮させ、すごみさえ感じる低音の声で僕に言い放った。
その言葉に固まってしまった僕を一瞥すると僕に背を向ける。
「とりあえず、怪我を早く治す事に専念しろ。」
ドアが大きな音をたてて閉じられる。
手が震えている。怖かった。今のアレフガートさんは。
いつもの僕を気遣うような落ち着く声色ではなかった。
というかほかのやつのことを考えるなって何?
なんであんなに怒っているの?
何が彼をあんなにしたんだ?
いつもと違うどこか暗い思い悩んだような表情につらそうに歪な感情を僕にぶつける彼に。
違う。僕がそうさせたんだ。
彼が僕の事を番として考え伝えてくれているのにもかかわらず僕は中途半端な態度をとり続け、挙句の果てにこれだ。
僕は彼に何も返せていない。ただ彼を苦しめるだけの存在だった。
やっぱり僕は消えた方がいい。
彼のためにならない。番としての役割を早く終えて、なるべく彼から早く離れるべきだったんだ。
そうだ。最初からそうすればよかったんだ。
大体こんなに醜い僕が彼の番だなんて方がおかしいんだ。
改めて自分を見つめなおしてみる。
くるくるでいつでも落ち着かない黒い髪に野暮ったいイメージを与える奥二重、全く整っていない鼻と口。そしてなかなか体力がつかない貧弱で貧相な身体。性格なんて根暗で辛いことから逃げる卑怯で姑息で汚い人間。
ほら、どこにもいいところなんてない。
弟みたいな可愛らしい子が彼にはふさわしい。
どうしようもなくなって、頭がこんがらがって、涙があふれてくる。
僕には泣く資格なんてないのに。
それでも止まらなくて、両手で頭を抱え前かがみになり、まるで吐くような格好で泣いた。
―――
風の精霊王シリルと光の精霊王ルシフェル
二人してシヅルの様子を水晶を通してシヅルを眺めている。
「あーあ。監禁とか最悪な状況じゃねぇかよ。」
「仕方ない。僕らにできるのはシヅルが考えられるようにある程度の傷をそのままにしておくことのみだった。」
「僕らじゃねぇ。それやったの俺な。」
「僕の助言がなかったらお前考えつかなかっただろ。」
「あ゛?んな事ねぇし。」
「まぁそれはおいておいてこの先どうするか、だ。このままではもっと不味い方向に向かって行くぞ。シヅルはたださえ自己評価が低くて自分を悪くしか見れていないのだから。」
「あの竜のやつもなぁ、やっぱシヅルを任せるにはちと未熟すぎんじゃねぇの?」
「…。」
その時二人の耳にある威厳を落ち着きを加えた声が届いた。
『ルシフェル、シリル。放っておきなさい。我らが干渉できるのは愛し子が求めてきたときのみ。』
「「ッ!かしこまりました…。」」
我らが主の言うことだ。従う他ない。
この網の目のように絡まった糸が解けますように。
そしてシヅルがどうか良い方向へと導かれますように。
二人の精霊王は願うのみであった。
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