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ヘーゲルツ王立学園
はじめまして
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着いた学園はまさに圧巻だった。
広大な土地に、荘厳さを感じさせる豪奢な白と朱色の煉瓦。そして細かく装飾が凝らされた壁や床。
古代ギリシャの歴史的建造物にでもなれそうな感じだ。
人気のない門の前に誰か僕と同じようなローブを着た先生がいた。
「よく来たね。君が…アサギリ先生だね?」
「はい、朝霧志弦です!」
威厳があるにも関わらず優しげなその人はいかにも教師な感じがする。おそらくこの人が出迎えるといっていた教頭先生だ。
ちなみにここでは僕は異国の貴族設定だ。
多分平民として教師にしてもよかったのだろうけど、いくら平民も入学可能と言えど貴族だらけの学園での僕の立場を気遣ってくれたのか、苗字をつけることになった。そこで良い案がなかったのであまり気は進まなかったけれど元々の朝霧の名を使うことにしたのだ。
教師寮は学園のすぐ横にあり、その横に学園生用の寮がある。
それに、特設の魔法訓練場の棟と文官用と騎士用の棟がそれぞれある。
思わず見入っていると教頭先生が笑ってこちらを見ていた。
「ふふっ綺麗でしょう。私も最初赴任してきた時は驚きました。しかし未来を担う子供たちの学び舎としてはなかなか良い条件の揃った学校だと思いますよ」
「えぇ。そうですね。」
「そうそう、申し遅れました。私、ハリス・ディスマンドと申します。これからお願いしますね、アサギリ先生」
「こちらこそ、精一杯務めさせていただきますのでよろしくお願いします!」
その後、僕は寮に案内された。事前に大体の荷物は送っておいたのであとは簡単の荷解きだけだ。
寮の部屋はとても広かった。アレフガートさんのところと違ってあまり豪奢というわけではないが落ち着きのある部屋だった。
机や箪笥、ベッドなど必要なものは揃えてあり、とても快適だ。元の世界でいうアンティークの調度品など沢山あってそれも嬉しかった。
今日は初日ということもあって明日の朝礼で紹介がされるそうなので、持ってきた昼食を食べて寝ようとした。
しかし、その時ふと猫の鳴き声がした。
「猫…?」
「フニャ~~ン」
可愛らしく鳴きながら箪笥の中から出てきた猫は誰かの猫なのだろう。首輪が付いていた。
仕方ない、食べる前に職員室にでも届けよう。
そう思って猫を抱き上げ、地図を片手に出発した。
だけど思ったより早く猫の持ち主は見つかった。
職員室へ歩いているとき急に何者かに抱きつかれたのだ。
「俺のアリスティアちゃ~ん!!」
という言葉とともに。
そう言って僕の腕からあっという間に猫をとり、撫で回している。その人はボサボサの茶髪に丸眼鏡、そして白衣を着た30代くらいの男性だった。
猫は嫌がって顔や腕を引っ掻いているけれど、その人は嬉々として引っ掻かれている。
暫くそれを眺めていると不意にその人が猫と会話?を始めた。
「なになに?何処へ行ってたの~?…へぇ~そーなんだ!えっこの人!?」
ついに僕が理解出来る範疇を超えそうだったのでその場から立ち去ろうとすると呼び止められる。
「えっちょっちょっと待って!」
「へっ?」
「もしかして君がアサギリ?まじか。やった!ついに俺も先輩!!俺ねぇ~君と同じせんせーなんだ!さて!なんの教科でしょう!」
その人は猫を抱えながらいきなり問題をだしてきた。なんだかあちらのペースに巻き込まれた気がするがちゃんと考えてみる。
「えっと…数学、とか?」
「えっすっご~い!当たり!俺はね、数学担当のドリトンって言うんだ。そんでこの子は助手のアリスティアちゃん。よろしくな!」
「はい。よ、よろしくお願いします。」
そういって僕の顔をじろじろと見てくる。ぶしつけな感じはするけれど、嫌な視線じゃなくて観察されているような、そんな感じだ。そうしておもむろに口を開いた。
「俺は全学年の数学のアルファクラスを持ってんだ!そういえばアサギリは?」
「えっと、僕は生物・魔獣学です。」
「あぁそ-いやなんか言ってたなぁ。なんか生物担当のやつが泣いて喜んでた」
なんで喜ぶんだ?僕はいろいろ事情があるものの一応評価されてここで教師をすることになったはずだ。
だから僕が同じ教科を担当するのは嫌がる気がする。実際前の世界ではそうだったし。
僕の心の中を読んだのかドリトン先生がニコニコしながら教えてくれる。
「いや、最近は学生の中にも安全に高月給で働ける文官を目指すやつが多いんだよ。そのせいで文官の必須科目の生物学をとるやつが増えてな。んで過酷な騎士になりたがる奴も魔獣について学んどかなきゃダメで生物をとるだろ?だから生物の教師はてんてこまいってな訳。」
「なるほど…。」
「まっそんな気張んなくて大丈夫だぞ!おっと時間がまずい。俺は行くな」
そういって去ろうと僕の前を通り過ぎようとした。その時、僕の手のひらに何かが滑り込まされた。
驚きつつ、なんとか握る。
なんだ、これ。なんかここで見るのはまずい気がする。本能的にそう感じて自分の寮の部屋に戻り、本で隠して開いてみる。
‐ アサギリへ。学園は危険だ。剣を持ち歩き、魔法をいつでも打てる状態にしておけ。ドリトン ₋
そのメッセージを読むとその紙は消えた。
カーチェスが言っていたことを思い出す。この学園は危険だ、と。
不穏な気配を残しつつシヅルの教師生活は始まった。
――
親愛なる読者様へ
同じことを繰り返してしまい申し訳ありません。
またしばらく投稿ができなくなります。
12月8日に5話更新します。
また、本日2話投稿する予定だったのですが難しくなりました。
お詫びにもなりませんがストックしておいた別作品の1話目をアップさせていただきます。
是非お読みください。
重ね重ねになりますが勝手な行動、まことに申し訳ありません。
広大な土地に、荘厳さを感じさせる豪奢な白と朱色の煉瓦。そして細かく装飾が凝らされた壁や床。
古代ギリシャの歴史的建造物にでもなれそうな感じだ。
人気のない門の前に誰か僕と同じようなローブを着た先生がいた。
「よく来たね。君が…アサギリ先生だね?」
「はい、朝霧志弦です!」
威厳があるにも関わらず優しげなその人はいかにも教師な感じがする。おそらくこの人が出迎えるといっていた教頭先生だ。
ちなみにここでは僕は異国の貴族設定だ。
多分平民として教師にしてもよかったのだろうけど、いくら平民も入学可能と言えど貴族だらけの学園での僕の立場を気遣ってくれたのか、苗字をつけることになった。そこで良い案がなかったのであまり気は進まなかったけれど元々の朝霧の名を使うことにしたのだ。
教師寮は学園のすぐ横にあり、その横に学園生用の寮がある。
それに、特設の魔法訓練場の棟と文官用と騎士用の棟がそれぞれある。
思わず見入っていると教頭先生が笑ってこちらを見ていた。
「ふふっ綺麗でしょう。私も最初赴任してきた時は驚きました。しかし未来を担う子供たちの学び舎としてはなかなか良い条件の揃った学校だと思いますよ」
「えぇ。そうですね。」
「そうそう、申し遅れました。私、ハリス・ディスマンドと申します。これからお願いしますね、アサギリ先生」
「こちらこそ、精一杯務めさせていただきますのでよろしくお願いします!」
その後、僕は寮に案内された。事前に大体の荷物は送っておいたのであとは簡単の荷解きだけだ。
寮の部屋はとても広かった。アレフガートさんのところと違ってあまり豪奢というわけではないが落ち着きのある部屋だった。
机や箪笥、ベッドなど必要なものは揃えてあり、とても快適だ。元の世界でいうアンティークの調度品など沢山あってそれも嬉しかった。
今日は初日ということもあって明日の朝礼で紹介がされるそうなので、持ってきた昼食を食べて寝ようとした。
しかし、その時ふと猫の鳴き声がした。
「猫…?」
「フニャ~~ン」
可愛らしく鳴きながら箪笥の中から出てきた猫は誰かの猫なのだろう。首輪が付いていた。
仕方ない、食べる前に職員室にでも届けよう。
そう思って猫を抱き上げ、地図を片手に出発した。
だけど思ったより早く猫の持ち主は見つかった。
職員室へ歩いているとき急に何者かに抱きつかれたのだ。
「俺のアリスティアちゃ~ん!!」
という言葉とともに。
そう言って僕の腕からあっという間に猫をとり、撫で回している。その人はボサボサの茶髪に丸眼鏡、そして白衣を着た30代くらいの男性だった。
猫は嫌がって顔や腕を引っ掻いているけれど、その人は嬉々として引っ掻かれている。
暫くそれを眺めていると不意にその人が猫と会話?を始めた。
「なになに?何処へ行ってたの~?…へぇ~そーなんだ!えっこの人!?」
ついに僕が理解出来る範疇を超えそうだったのでその場から立ち去ろうとすると呼び止められる。
「えっちょっちょっと待って!」
「へっ?」
「もしかして君がアサギリ?まじか。やった!ついに俺も先輩!!俺ねぇ~君と同じせんせーなんだ!さて!なんの教科でしょう!」
その人は猫を抱えながらいきなり問題をだしてきた。なんだかあちらのペースに巻き込まれた気がするがちゃんと考えてみる。
「えっと…数学、とか?」
「えっすっご~い!当たり!俺はね、数学担当のドリトンって言うんだ。そんでこの子は助手のアリスティアちゃん。よろしくな!」
「はい。よ、よろしくお願いします。」
そういって僕の顔をじろじろと見てくる。ぶしつけな感じはするけれど、嫌な視線じゃなくて観察されているような、そんな感じだ。そうしておもむろに口を開いた。
「俺は全学年の数学のアルファクラスを持ってんだ!そういえばアサギリは?」
「えっと、僕は生物・魔獣学です。」
「あぁそ-いやなんか言ってたなぁ。なんか生物担当のやつが泣いて喜んでた」
なんで喜ぶんだ?僕はいろいろ事情があるものの一応評価されてここで教師をすることになったはずだ。
だから僕が同じ教科を担当するのは嫌がる気がする。実際前の世界ではそうだったし。
僕の心の中を読んだのかドリトン先生がニコニコしながら教えてくれる。
「いや、最近は学生の中にも安全に高月給で働ける文官を目指すやつが多いんだよ。そのせいで文官の必須科目の生物学をとるやつが増えてな。んで過酷な騎士になりたがる奴も魔獣について学んどかなきゃダメで生物をとるだろ?だから生物の教師はてんてこまいってな訳。」
「なるほど…。」
「まっそんな気張んなくて大丈夫だぞ!おっと時間がまずい。俺は行くな」
そういって去ろうと僕の前を通り過ぎようとした。その時、僕の手のひらに何かが滑り込まされた。
驚きつつ、なんとか握る。
なんだ、これ。なんかここで見るのはまずい気がする。本能的にそう感じて自分の寮の部屋に戻り、本で隠して開いてみる。
‐ アサギリへ。学園は危険だ。剣を持ち歩き、魔法をいつでも打てる状態にしておけ。ドリトン ₋
そのメッセージを読むとその紙は消えた。
カーチェスが言っていたことを思い出す。この学園は危険だ、と。
不穏な気配を残しつつシヅルの教師生活は始まった。
――
親愛なる読者様へ
同じことを繰り返してしまい申し訳ありません。
またしばらく投稿ができなくなります。
12月8日に5話更新します。
また、本日2話投稿する予定だったのですが難しくなりました。
お詫びにもなりませんがストックしておいた別作品の1話目をアップさせていただきます。
是非お読みください。
重ね重ねになりますが勝手な行動、まことに申し訳ありません。
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