強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ

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裏-1

「おかえりなさい、ディオン」

 ようやく帰って来た彼は私を見るなり眉間にシワを寄せた。
 やっぱり差し入れが駄目だったのかしら。

 大股で私の側までやってくると、大きく腕が振り上げられ、

 そして───






「ラシェル、ただいま~~っ!!」

 旦那様は私を掻き抱くと、スンスンと猫吸い……ではなく、嫁吸いを始めました。

 そう。結婚して分かったことは、彼が溺愛体質の愛が重めなこと。

「ラシェルラシェルラシェルっ!
 どうして訓練場に来たんだ!?なぁ、何で!?
 それも差し入れだなんてっ!!
 あの有象無象の塵芥ちりあくた共が君の清らかな成分を摂取するなど許すまじっ!!君の一部がアイツらの血肉になったのかと思うと俺はっ!!!」
「ねえ、待って。差し入れがどうしてそんなにも不快な表現になるのよ」
「だって君のこの美しく滑らかな手が生地を捏ね、その柔らかな吐息を吹き込みながらラシェル成分満載の至高の作品へと成形されていったんだぞ!?」
「吹き込んでません。そんな不衛生な真似はしないわ」

 私成分って何。そしてまくし立てながらもチュチュチュッ、と指先にキスするのは止めて。

 何故この人はこうも変態臭いのか。誠実であれば許せると思っていたけど、これは許していい範囲なのかどうかが微妙です。
 私への愛が暴走し出すと、普段の無口さはどこへ行ってしまうのか、おかしな思考を垂れ流し状態になってしまうから困りもの。

「私は貴方の妻なのだから、騎士団への差し入れくらいしてもいいじゃない」
「駄目だ!俺のラシェルに懸想する輩を処さなくてはいけなくなるだろう!?」
「そんな奇特な男は貴方だけよ」

 というか、そろそろ放してほしい。

「こんなにも可愛い上に料理上手で更には俺の汗をそっと拭いてくれる天使のような優しさをあの獣達に見せつけるなんてっ!!」
「どれだけ色眼鏡を掛けてるのよ」
「ラシェルは俺のなのに……俺の、俺だけの……誰にも渡さない……」

 しまった。これは駄目なやつかも。
 大変、明日お休みじゃない。このままだと暴走して深夜までコース。下手をしたら朝までコースになってしまうわ。騎士の体力はヤバ過ぎる。

「ディー?こっちを向いて?」

 ちょっと落ち着けなきゃ私が死んじゃう。
 あらあら、すでに暗い瞳になってるし。

 まずは額に、それから頬にも。
 幼子にするような優しいキスをして。

「お仕事お疲れ様。今日はディーの訓練する姿を見てドキドキしたわ」
「えっ!?」
「私の旦那様はとっても格好良くて惚れ直しちゃった」
「えっ!えっ!?」
「いつもああやって訓練してるの?」
「あ、ああ、そうだ」
「まあ。詳しく聞いてもいい?貴方のことをもっと知りたいな」

 ちょっと甘えるように小首を傾げてみる。

「ラシェルが俺を欲している……ああ、語ろう。朝まででも君に語って聞かせよう!」

 いや、その朝までコースも嫌かな。
 でも首を傾げるくらいで彼が落ちるのは知っているけど不思議よね。
 私なんて十人並みなのに、どこにそんなにも惚れ込んでくれてるのやら。

「ラシェルがかわいいかわいいかわいいかわいい」

 スリスリと頬擦りをしながら呪文のように可愛いを繰り返す知能指数3くらいに低下したディオンだけど、それでも闇堕ちは防げたみたい。

「今日の夜ごはんはチキンの香草焼きよ。好きでしょ?」
「大好きだ。君が作ってくれるものなら仮令たとえ生肉でも完食してみせる」
「鶏肉はしっかり火を通さないとダメです」

 よし、今日は奮発してワインも出しちゃおう。そしてサクッと寝てもらいましょうね。









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