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18.お花畑の作り方
レイさんの質問におじさんが頭を抱え、おじいちゃんの眉間のシワが倍増した。
「ソフィアはこだわりの強い頑固者で」
そんな中、語りだしたのはおばあちゃんだ。
「自分なりのルールがあるのよ。それに触れなければいい子。でも、そのルールが破られると大騒ぎ。あの子が幼い頃はなかなかに大変だったわ」
なんと。あの、恋でいっぱいのお母さんがそこまでこだわりの強い人だったとは。では、恋こそがお母さんのこだわりなの? もしや恋の達人? なんか違うな。恋の虜? いや、もっと離れたかも。
「……あいつは自分中心にしか考えられない子で、でも、女の子だし小さいしそんなものかと思っていたな」
おじさんが遠い目をしている。わがままな妹に振り回される日々だったのか。とりあえず、女の子だからというのはやめて。絶対違うから。
「お勉強も刺繍もダンスもちゃんとできるの。ただ、融通が利かないものだから、そこの頑固者とはよくぶつかっていたわ」
……もしかして、私に可愛げがないと言ったのは『お母さんに似て頑固で』という前置きがあったの⁉ ちょっとショックです。
「でも、年頃になってもそんな気質が抜けなくて、これでは嫁入りに支障が出そうだと心配になっていた頃にルパート……あなたのお父様と出会ったのよ」
ここで父登場! 駄目な予感しかしない。
「彼はフットマンとして雇ったのだけど、ソフィアの扱いがとても上手だった」
でしょうね? だって、お父さんはお母さん至上主義だもの。母のルールを誰よりも守っていたのだろうと想像がつく。
「それからのソフィアは目に見えて安定したわ。でも、すべてはルパートありきなのよ。彼が姫に誓いを立てる騎士のごとく振る舞うから心が満たされているだけ。……そんな世界を知ってしまったあの子は、普通の結婚に激しい拒否反応を見せるようになってしまった」
「……出会ってはいけない二人でしたね」
「フィリシアに言われるとYESとは言いづらいけど、でも、そうね。私達はあの二人を祝福することはできなかったわ」
「祝福なんぞできるものか!」
おじいちゃん、落ち着いて? あんまり怒ると具合が悪くなっちゃうよ?
「あんなものはままごとだろう!」
「そうねぇ。あなたがそうやって言うものだから、ママゴトじゃない! 私は本気よ! と、出ていってしまったのよね? お小遣いをすべて持って」
貴族のお小遣いっていくら? もしかして、二人がそれなりに生活できていたのは、当時はお金がちゃんとあったからなのかしら。
「探しに行くべきだったのでしょうね。でも」
「でも?」
「ちょっと私が血を吐いて倒れてしまって」
「は⁉」
ち……血? そんな、どうして。
「心労だとお医者様には言われたわ。胃に穴が開いてしまったの。二人が言い争うたびに胃がキリキリしていたのだけど、とどめ刺されちゃったわねぇ」
お母さん! 事件です! お母さんが気苦労をかけすぎるから、おばあちゃんが大変なことに‼
おじいちゃんが当時のことを思い出したのか、また涙目になっている。
「婚約発表の一カ月前に突然の失踪でしょう。先方に謝罪して、我が家有責での婚約破棄として慰謝料を払わなきゃだし、何よりも共同で行うはずだった事業をどうするのかを話し合って。婚約披露パーティーの招待状もすべて送り済みだったから、こちらも中止の連絡と詫び状を送らなきゃ、ああ、何よりもまずは捜索願いを出さないといけないじゃない! もう、何から手を付けていいのかパニックになっちゃったのよね」
おばあちゃんがつらつらと当時の出来事を語りながら、遠い目をしてたそがれてしまった。よほど大変だったのね。
「で、倒れた母上を見て父上まで顔面蒼白で立っていられなくなって寝込んでしまってね。倒れた二人の代わりに私が動くことになった」
「……ご愁傷さまでした」
「本当に。あの頃のことはあまり思い出したくないよ……」
「そうね。私との婚約も考え直したほうがいいのではとうちの両親が言い出して、私も焦ったわ」
あ、おばちゃんまで遠い目になった。
伯爵家の皆さんは仲良しだなと、見当違いなことを考えてしまう。
思わず私もそ呆然としていると、レイさんがちょいちょいと手招きして小声で教えてくれた。
「貴族にとって結婚は契約なことが多いんだ。だから、好きな人ができましたごめんなさいでは済まないんだよ」
「好きな人とは結婚しないの?」
「運がよければ?」
「運が悪いと?」
「とりあえず契約通りに結婚して子どもを作って、あとはお互い自由にしましょうと、影で愛人を作ったり。まあ、ちゃんと家族としてともに暮らす努力を惜しまない人もいるし、色々だろ」
愛って本当になんだろう。
お母さんは貴族として生きてきたのだから、自分が姿を消したら、残された家族がどれだけ大変になるのか知っていたんだよね? それでも自分の愛が一番だったのだから、私の苦労が見えないのも当然のことなのか。
「要するに、お花畑をあえて作ったわけではなく、自生した雑草が根強かっただけ?」
「ソフィアはこだわりの強い頑固者で」
そんな中、語りだしたのはおばあちゃんだ。
「自分なりのルールがあるのよ。それに触れなければいい子。でも、そのルールが破られると大騒ぎ。あの子が幼い頃はなかなかに大変だったわ」
なんと。あの、恋でいっぱいのお母さんがそこまでこだわりの強い人だったとは。では、恋こそがお母さんのこだわりなの? もしや恋の達人? なんか違うな。恋の虜? いや、もっと離れたかも。
「……あいつは自分中心にしか考えられない子で、でも、女の子だし小さいしそんなものかと思っていたな」
おじさんが遠い目をしている。わがままな妹に振り回される日々だったのか。とりあえず、女の子だからというのはやめて。絶対違うから。
「お勉強も刺繍もダンスもちゃんとできるの。ただ、融通が利かないものだから、そこの頑固者とはよくぶつかっていたわ」
……もしかして、私に可愛げがないと言ったのは『お母さんに似て頑固で』という前置きがあったの⁉ ちょっとショックです。
「でも、年頃になってもそんな気質が抜けなくて、これでは嫁入りに支障が出そうだと心配になっていた頃にルパート……あなたのお父様と出会ったのよ」
ここで父登場! 駄目な予感しかしない。
「彼はフットマンとして雇ったのだけど、ソフィアの扱いがとても上手だった」
でしょうね? だって、お父さんはお母さん至上主義だもの。母のルールを誰よりも守っていたのだろうと想像がつく。
「それからのソフィアは目に見えて安定したわ。でも、すべてはルパートありきなのよ。彼が姫に誓いを立てる騎士のごとく振る舞うから心が満たされているだけ。……そんな世界を知ってしまったあの子は、普通の結婚に激しい拒否反応を見せるようになってしまった」
「……出会ってはいけない二人でしたね」
「フィリシアに言われるとYESとは言いづらいけど、でも、そうね。私達はあの二人を祝福することはできなかったわ」
「祝福なんぞできるものか!」
おじいちゃん、落ち着いて? あんまり怒ると具合が悪くなっちゃうよ?
「あんなものはままごとだろう!」
「そうねぇ。あなたがそうやって言うものだから、ママゴトじゃない! 私は本気よ! と、出ていってしまったのよね? お小遣いをすべて持って」
貴族のお小遣いっていくら? もしかして、二人がそれなりに生活できていたのは、当時はお金がちゃんとあったからなのかしら。
「探しに行くべきだったのでしょうね。でも」
「でも?」
「ちょっと私が血を吐いて倒れてしまって」
「は⁉」
ち……血? そんな、どうして。
「心労だとお医者様には言われたわ。胃に穴が開いてしまったの。二人が言い争うたびに胃がキリキリしていたのだけど、とどめ刺されちゃったわねぇ」
お母さん! 事件です! お母さんが気苦労をかけすぎるから、おばあちゃんが大変なことに‼
おじいちゃんが当時のことを思い出したのか、また涙目になっている。
「婚約発表の一カ月前に突然の失踪でしょう。先方に謝罪して、我が家有責での婚約破棄として慰謝料を払わなきゃだし、何よりも共同で行うはずだった事業をどうするのかを話し合って。婚約披露パーティーの招待状もすべて送り済みだったから、こちらも中止の連絡と詫び状を送らなきゃ、ああ、何よりもまずは捜索願いを出さないといけないじゃない! もう、何から手を付けていいのかパニックになっちゃったのよね」
おばあちゃんがつらつらと当時の出来事を語りながら、遠い目をしてたそがれてしまった。よほど大変だったのね。
「で、倒れた母上を見て父上まで顔面蒼白で立っていられなくなって寝込んでしまってね。倒れた二人の代わりに私が動くことになった」
「……ご愁傷さまでした」
「本当に。あの頃のことはあまり思い出したくないよ……」
「そうね。私との婚約も考え直したほうがいいのではとうちの両親が言い出して、私も焦ったわ」
あ、おばちゃんまで遠い目になった。
伯爵家の皆さんは仲良しだなと、見当違いなことを考えてしまう。
思わず私もそ呆然としていると、レイさんがちょいちょいと手招きして小声で教えてくれた。
「貴族にとって結婚は契約なことが多いんだ。だから、好きな人ができましたごめんなさいでは済まないんだよ」
「好きな人とは結婚しないの?」
「運がよければ?」
「運が悪いと?」
「とりあえず契約通りに結婚して子どもを作って、あとはお互い自由にしましょうと、影で愛人を作ったり。まあ、ちゃんと家族としてともに暮らす努力を惜しまない人もいるし、色々だろ」
愛って本当になんだろう。
お母さんは貴族として生きてきたのだから、自分が姿を消したら、残された家族がどれだけ大変になるのか知っていたんだよね? それでも自分の愛が一番だったのだから、私の苦労が見えないのも当然のことなのか。
「要するに、お花畑をあえて作ったわけではなく、自生した雑草が根強かっただけ?」
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