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第二章
20.急転直下(4)
しおりを挟む「これからは私も君を身内扱いしようか」
「リシャール様?」
「客人だと思って見逃していたのが間違いだった。
これからは君を不出来な身内としてしっかりと面倒をみてあげるよ」
ニッコリと笑う顔がこんなにも怖いだなんて。
「……そういうところがベルティーユさんを泣かせたのでしょう?」
「悪いことをしたら叱る。当たり前のことだ。
それを恨むか感謝して改善するかは自分で選べばいい。
まあ、取り返しのつかないくらいの阿呆だったら切り捨てるだけだからね。
ブランシュもそうしなよ。逆恨みされるのは面倒だし、程々にいこう。そうしよう」
ミュリエルが面白いくらいに怯えています。
大切にされるのが当たり前だった彼女は、今初めて見捨てられる恐怖を知ったのでしょう。
リシャール様は結構な悪魔だわ。
「……そうね。これからも一応注意はするわ。
でも、それを聞いてどうするかはあなた次第。よく考えて行動なさいな」
「えと、そんなこと言われても分かんない……」
「分からなかったら分かるまで聞きなさいよ、拗ねて狡い小芝居をしないでね。
そんな嘘で味方を増やしても、結局バレて嘘つきのレッテルを貼られるだけなのよ?」
「可哀想に。騙されたベルティーユは私にも母上にも叱られて泣いていたぞ」
「あ…、だから冷たくなったの?」
いやいやいや。冷たくしてはいないでしょう?!
「冷たくないよ。普通になっただけだ」
「ベルティーユさんは今でも優しいと思うわよ。自分を特別だと思うなって言ったわよね?」
「ううっ、ふたりは怖いよおっ!」
「「だって怒っているから」」
あら、同じことを言ってしまったわ。
「そうだわ。ミュリエル、あなたはまだ私に謝罪をしていないのでは?」
ごめんなさいと泣いてはいたけど、あれはナタリーに叱られて怖くて言っていただけ。ここで甘やかすわけにはいきません。
「そうだね。本当は求められなくても言えないといけないけど。まさか、ここまで言われても謝れない。なんてことは、無いよね?」
だからそこで綺麗に微笑まないでください。
「……消えちゃえって言ってごめんなさい。階段から落としちゃってごめんなさい」
「許すのは今回だけよ。あと、また悪さをしたらナタリーに叱ってもらうわ」
「やっ、やだ!」
「ナタリーは優しいのよ?本当ならメイドがあんなことをしたら罰せられるのに、それを恐れずにあなたを叱ってくれたの。
ミュリエルは本気で叱られたからやっと私達の言葉が届いたのでしょう。
優しさを間違えないで。耳当たりの良い言葉だけが優しいわけじゃないわ」
6歳児に言っても難しいかもね。でも、ナタリーを恨まれたら困るもの。ここはちゃんと言っておかないと後が怖いわ。
「ミュリエル。好きの反対は嫌いじゃなくて無関心だって知っているか」
「むかんしん」
「どうでもいいってこと。だって好きじゃないなら相手にする手間が惜しいじゃないか。
本当にどうでもいい相手なら叱らない。無視すればいい。
だから君も、叱る価値もない駄目な人間にならないように頑張って?」
あ、泣いた。優しい王子様みたいだと思っていたのに、今は悪魔王子だと思っているのかもね。
悪女な姉と悪魔王子にやり込められているのだからちょっと可哀想な状況だわ。
「さて。一度にたくさん言っても無理だろうからこれで終わりましょうか」
「そうだね。ミュリエル、顔を洗っておいで。みんなでお茶にしよう」
「……え」
もう解放されると思ったのでしょうね。顔が引きつっています。
「知らないの?喧嘩したあとは仲直りしないと。そこまでがセットなんだよ」
「……え、やだ」
「何か言ったかな」
ニコニコと圧を掛けるのは止めてあげて。
「…………顔を洗って来ます」
「うん、行っておいで。15分以内ね」
「ゔっ、分かりました!」
ひらひら手を振る悪魔王子が強過ぎる。
「行こう、ブランシュ」
「リシャール様、ベルティーユさん達を呼びに行かないと」
「もう様はいらないよ」
「…でも」
「二人とも妹だと思うことにしたから」
あ、そういうこと?
「……リシャール兄様?」
「ふふっ、エルフェ先生の悔しがる顔が見られるかな」
「リシャール兄様は結構腹黒いよね」
「だって悪女の兄になったし?」
「もう。ほら、ロラン様とベルティーユさんを迎えに行きましょう」
「よし。二人にも自慢しようか」
「何を?」
「兄様呼びを」
なぜそれが自慢になると思うのか。
でも、この後本当にロラン様達がうるさかった。
結局、私は二人のことは呼び捨てに。ミュリエルは皆のことを、兄様、姉様と呼ぶことになりました。
こうして、やっとミュリエルとの不仲が終わりを迎えたのです。
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