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まさかのWデート
ストーリー30
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砂浜の人混みをすり抜けながら走るが、なかなか進藤さんに追いつけない。
「あっ進藤さん」
やっと追いついたと思ったら、もうホテルの前だった。私は進藤さんを呼び止めて、走り続けたせいで乱れた呼吸を膝に手を置き整える。
「はぁはぁ……進藤さん、美玲さんの部屋のキーです」
「わざわざ走って持ってきたのか」
「だって早く渡さなきゃって思って。でも進藤さん歩くの早すぎ、全然追いつけなかった」
私は笑いながら話す。そんな私を見て、進藤さんも顔が笑っていた。
「せっかくだから、ちょっと付き合え」
進藤さんはそう言ってホテルの中へは入らず、違う道を歩き始める。そして美玲さんがいないせいか、仕事モードではなくなっていた。
「どこに行くんですか?」
「さぁ、取り敢えず人の居ない場所か?」
「えっ?」
進藤さんは私の方を見て意味深に笑みを浮かべる。人の居ないところって……何をする気ですか!?
少し歩いて道を逸れた所に、海を一望できる場所があった。周りには誰もいない。私は柵に掴まり海を眺めた。
「潮風が気持ちいいですね~」
「そうだな」
進藤さんは柵に頭を付けて、珍しくため息をつく。何だか疲れるみたい。そうか、人の居ないところで休憩がしたかったんだ。
「お疲れですか?」
「あぁ、仕事モードは疲れるからな」
「美玲さんの前でも仕事モードなんですね」
「長年の癖みたいなものだ。勝手にスイッチが入るんだ」
「でも私や高瀬さんにはそのスイッチ入らないんですね」
「ナオトは付き合いが長いし、明日香には……仕事モードで接しても俺に何の得もないから勝手にスイッチが入らないんじゃないか?」
「あはは、何それ」
「もしかして、愛想良く接して欲しいのか?」
「私は……素の方がいいです」
「少し黙ってろ」
そう言って進藤さんは私の口を塞ぐように唇を重ねる。そしてすぐに唇が離れると私達は少し見つめ合い、今度は深く長く唇を重ねた。
夏の海は私を変える……
読んだ雑誌にそう書いてあった。
潮風に打たれ私は開放感に溢れているのか、場所も時間も忘れて進藤さんと深く長いキスを繰り返した。
そして唇が離れると、私の着ているパーカーをジッと見る。
「パーカーの下に水着を着ているのか?」
私が『そうですけど』と言うと、事もあろうに『見てみたい』と言い出した。
「な、何で」
進藤さんの言葉に私は頬を赤くさせ動揺する。その動揺を楽しむかのような笑みを浮かべ、進藤さんは私を見ていた。
「もう、分かりました」
私はパーカーのチャックをゆっくり下ろし上半身だけ水着を見せる。
「へぇ、ビキニか」
「だって可愛かったから、変?」
「いいんじゃないか。ただあまり他の男には見せたくないな」
「えっ?」
進藤さんは私の肩を持ち、クルッと私を後ろ向きにした。そしてそのまま進藤さんの手が私を覆う。
「やっぱり明日香の存在はいいな」
後ろから抱きしめている進藤さんが私の耳元でそっと呟く。
「どういう……意味?」
私はその言葉に反応して進藤さんの方を振り向く。
「別に。ただの褒め言葉だ」
進藤さんはそう言って振り向いた私のおでこに自分のおでこをコツンとする。私を必要としてくれているのが分かり嬉しかった。
だが、ここで余計な事が脳内に浮かび上がる。
「……日香、おい明日香。どうした?また何か余裕な事でも考えてるのか?」
「えっいや、あの……」
「今だけは俺の事だけ考えろ」
「うん」
私は進藤さんを見て微笑んだ。本当は別の事が頭をよぎったのだが、その事は言わなかった。
しばらく進藤さんは何も言わずに私を後ろから抱きしめていた。私もそっと進藤さんの手に触れ、幸せな時間を堪能した。時折くる海の香りを乗せたそよ風がとても心地良かった。
「なぁ明日香。名前を呼んでくれないか?」
「……ケイスケさん」
「『さん』はいらない。もう一回」
「うん……ケイスケ」
後ろから抱きしめられているから進藤さんの顔は見えないが、何となく微笑んでいるように感じた。
進藤さんが我に返ったような感じでパッと私に抱きついていた手を離した。突然離されたので、私は思わず進藤さんの方を振り向く。
その拍子にバランスを崩してしまい、よろけた私を進藤さんが支えてくれた。
「あ、ありがとうございます、進藤さん」
「もう名前で呼ばないのか。切り替え早いな」
進藤さんが声を出して笑った。凄くレアな光景を見ている気がする。
そして二人で柵に掴まり、海を眺めた。
私が未知の世界へ踏み出す事が出来たら、この関係は終わりなのかな。そう思うと胸の奥がモヤモヤした。
「あっ進藤さん」
やっと追いついたと思ったら、もうホテルの前だった。私は進藤さんを呼び止めて、走り続けたせいで乱れた呼吸を膝に手を置き整える。
「はぁはぁ……進藤さん、美玲さんの部屋のキーです」
「わざわざ走って持ってきたのか」
「だって早く渡さなきゃって思って。でも進藤さん歩くの早すぎ、全然追いつけなかった」
私は笑いながら話す。そんな私を見て、進藤さんも顔が笑っていた。
「せっかくだから、ちょっと付き合え」
進藤さんはそう言ってホテルの中へは入らず、違う道を歩き始める。そして美玲さんがいないせいか、仕事モードではなくなっていた。
「どこに行くんですか?」
「さぁ、取り敢えず人の居ない場所か?」
「えっ?」
進藤さんは私の方を見て意味深に笑みを浮かべる。人の居ないところって……何をする気ですか!?
少し歩いて道を逸れた所に、海を一望できる場所があった。周りには誰もいない。私は柵に掴まり海を眺めた。
「潮風が気持ちいいですね~」
「そうだな」
進藤さんは柵に頭を付けて、珍しくため息をつく。何だか疲れるみたい。そうか、人の居ないところで休憩がしたかったんだ。
「お疲れですか?」
「あぁ、仕事モードは疲れるからな」
「美玲さんの前でも仕事モードなんですね」
「長年の癖みたいなものだ。勝手にスイッチが入るんだ」
「でも私や高瀬さんにはそのスイッチ入らないんですね」
「ナオトは付き合いが長いし、明日香には……仕事モードで接しても俺に何の得もないから勝手にスイッチが入らないんじゃないか?」
「あはは、何それ」
「もしかして、愛想良く接して欲しいのか?」
「私は……素の方がいいです」
「少し黙ってろ」
そう言って進藤さんは私の口を塞ぐように唇を重ねる。そしてすぐに唇が離れると私達は少し見つめ合い、今度は深く長く唇を重ねた。
夏の海は私を変える……
読んだ雑誌にそう書いてあった。
潮風に打たれ私は開放感に溢れているのか、場所も時間も忘れて進藤さんと深く長いキスを繰り返した。
そして唇が離れると、私の着ているパーカーをジッと見る。
「パーカーの下に水着を着ているのか?」
私が『そうですけど』と言うと、事もあろうに『見てみたい』と言い出した。
「な、何で」
進藤さんの言葉に私は頬を赤くさせ動揺する。その動揺を楽しむかのような笑みを浮かべ、進藤さんは私を見ていた。
「もう、分かりました」
私はパーカーのチャックをゆっくり下ろし上半身だけ水着を見せる。
「へぇ、ビキニか」
「だって可愛かったから、変?」
「いいんじゃないか。ただあまり他の男には見せたくないな」
「えっ?」
進藤さんは私の肩を持ち、クルッと私を後ろ向きにした。そしてそのまま進藤さんの手が私を覆う。
「やっぱり明日香の存在はいいな」
後ろから抱きしめている進藤さんが私の耳元でそっと呟く。
「どういう……意味?」
私はその言葉に反応して進藤さんの方を振り向く。
「別に。ただの褒め言葉だ」
進藤さんはそう言って振り向いた私のおでこに自分のおでこをコツンとする。私を必要としてくれているのが分かり嬉しかった。
だが、ここで余計な事が脳内に浮かび上がる。
「……日香、おい明日香。どうした?また何か余裕な事でも考えてるのか?」
「えっいや、あの……」
「今だけは俺の事だけ考えろ」
「うん」
私は進藤さんを見て微笑んだ。本当は別の事が頭をよぎったのだが、その事は言わなかった。
しばらく進藤さんは何も言わずに私を後ろから抱きしめていた。私もそっと進藤さんの手に触れ、幸せな時間を堪能した。時折くる海の香りを乗せたそよ風がとても心地良かった。
「なぁ明日香。名前を呼んでくれないか?」
「……ケイスケさん」
「『さん』はいらない。もう一回」
「うん……ケイスケ」
後ろから抱きしめられているから進藤さんの顔は見えないが、何となく微笑んでいるように感じた。
進藤さんが我に返ったような感じでパッと私に抱きついていた手を離した。突然離されたので、私は思わず進藤さんの方を振り向く。
その拍子にバランスを崩してしまい、よろけた私を進藤さんが支えてくれた。
「あ、ありがとうございます、進藤さん」
「もう名前で呼ばないのか。切り替え早いな」
進藤さんが声を出して笑った。凄くレアな光景を見ている気がする。
そして二人で柵に掴まり、海を眺めた。
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