私のかわいい婚約者【完結】

nao

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13 後悔

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カタカタと窓が鳴っている

窓の外は一面の銀世界

部屋の中だというのに少しも暖かくない

ここは最北の修道院

まだ暗いうちに起きて朝のお勤め(掃除)をする。
朝食後 片付けをして神に祈りを捧げる。

どうしてこんな事になってしまったのか
恋に目が眩んで私は家族に沢山の迷惑をかけた。

侯爵家に生まれて、父母に甘やかされて、愛されて、思いどうりにならない事なんて何一つ無かった。

学園に入って、初めての恋をした。
一目で彼の虜になった。

容姿も、家柄も、自分のすべてが完璧だと信じていた。
私に想いを寄せない男がいるなんて思いもしなかった。
誰もが私の虜になるものだと信じて疑う事も無かった。

なのに彼は私に一瞥もくれなかった。

こんなに私が想いを寄せているのに。
こんなに私が愛していると言っているのに。
こんなに私が彼を求めているのに。

彼はあっさりと私を振って、他の女の者になってしまった。

悔しかった。
負けたくなかった。
彼を振り向かせたかった。

私はとんでも無い悪女に成り下がっていた。

その結果
家は侯爵から子爵に落とされ、領地は半分になり、多額の借金をかかえ、私は家族に一生会うことも出来ないこんな辺境の修道院に送られてしまった。

この最北の地で、神に祈りを捧げながら ただ死を待つだけの日々。

「死にたい…」
「早く私を殺して下さい…」

毎日々々神に祈る。

昼食の後は部屋に籠もり内職をする
私はいつもハンカチに刺繍をしている。
出来た物は街へ卸され僅かなお金となって修道院の食費などにあてられる。

私の刺した刺繍はそれなりに街で人気があるらしい。
刺繍は得意だ。
いつも皆に褒められていた。

お母様と2人でお父様やお兄様にいつも刺繍をプレゼントしていたわ。
2人共とても喜んでくれて…
涙がこみ上げる…

お父様、お母様、お兄様…
ごめんなさい…
ごめんなさい…
ごめんなさい…
後悔してももう遅い…

パンが一つと具の入った温かいスープの夕食が済むと夜のお祈りの時間になる。

今日一日を無事に過ごせた事を神に感謝する。
でも、ひざまずき、両手を組んで私が神に祈るのは自分の死だ。

死にたい…
死にたい…
死にたい…
どうか一日も早く私を殺して下さい。
生きているのが辛い
いっそ侯爵令嬢のまま死んでしまえたら良かったのに…

お願いです 神様
どうか私を殺して下さい。



✢✢✢



神様はとても意地悪だ。
あれから20年が過ぎた。
私はまだ 生きている。

怖くて 自分で死ぬ事も出来ない。
一体 いつになったら死ねるのだろう
こんなに毎日神様に祈っているのに
神様はまだ 私を許してくれないのか

まだ 30歳半ばだというのに、私の髪は真っ白になり、肌にハリも艶も無く、皺くちゃで、手はアカギレでひび割れてまるで老婆のような容姿になってしまった。

時々 夢を見る

私が一番幸せで 光輝いていた頃の夢

もう一度 あの頃に戻れたら…

もう一度 あの頃に戻りたい…

もう一度…

そして、今日も私は神に祈る
後悔と共に

「殺して下さい」と…







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