私のかわいい婚約者【完結】

nao

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14 結界

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どうして こんな事になっているのでしょうか?

私は今、一人掛けのソファーに座るエリィの両足の間に挟まれるようにして座っています。

エリィの両手はガッチリと 私のお腹を抱えていて、私は身動き出来ません。
(これって 恋愛小説に良くあるバックハグではないでしょうか?)

そして、エリィは今、私達2人を包むように「結界」なる物を展開しています。

私は身体全体でエリィの魔力を感じながら「結界」がどのようなものか 一生懸命イメージしています。

イメージしていますが…

はずかしい…

とにかく はずかしい…

お腹に回された エリィの手

私の耳元で「結界」の仕組みを教えてくれるイケボイス

もう ドキドキしすぎて死にそうです。



私が誘拐されてから エリィは私を守る為に 私が魔力を上手に使えるようになれば、自分自身を守る事ができると考え、この学園休学中に「結界」を教えてもらう事になりました。
私の傷が落ち着くのを待って 練習が始まりました。

「結界」は悪意のある者を寄せ付けず、悪意のある攻撃を跳ね返し、自分の身を守ってくれるそうです。

エリィによると、私にも魔力があるようで、それを上手に使う事ができれば 自分で自分の身を守れるようになるそうです。

でも、私は人を傷つけるのが怖くて、攻撃魔法を使うのが怖いと言うと、エリィは「結界」というものを教えてくれる事になりました。

エリィの説明を聞いて、
「それなら 私でも使えそうです。」
と、言う事で 今のこの状況なのですが…

恥ずかしすぎて、
ゼンゼン!
まったく!
集中 できません!

「カティ?聞いてますか?」

「ふぁ…ふぁい……」

返事もままならない。

私を見て エリィがクスクスと耳元で笑います。

頭が沸騰しそうです!

「私の魔力が わかりますか?」

「はい…エリィの魔力は少しヒンヤリとしていて 今の私にピッタリです。」

このまま 私の沸騰している頭を冷して下さい。

「では、この魔力を外に展開します。薄いベールを広げるように そして 何もかもを弾くように、誰もこの中に入って来れないようにイメージするんです。」

「はい…」

エリィの魔力が外側に広がって、固く固くなっていくのがわかります。

「エリィ、これ 中からだったら私にも触る事ができますか?」

「はい、大丈夫ですよ。」

私は ゆっくりと手を伸ばして、「結界」にそっと触れます。

「冷たい…」

「私は氷の属性が強いので、私が作る「結界」はこんなふうに冷たくなるようです。カティは雷の属性があるようなので 私の「結界」とは少し違った物になるかもしれませんね。」

「私の属性って雷なんですか?」

新事実にびっくりです。

「知らなかったんですか?」

「はい…神殿で魔力検査をした時、私の魔力はそれほど大きく無かったので、詳しい説明をあまり聞いて無くて…どうせ使えない物ならまぁいいか…と 思って…」

「あーーなるほど…」

エリィは納得したというようにうなづいて、私の魔力の事を説明してくれます。

「カティには ちゃんと魔力が有りますよ。確かに多くはありませんが、私が見た感じだと「結界」を1時間位 張る程度の魔力は有ります。」

「そうなんですか?」

「そうですね、何か嫌な事があった時なんかに 指先がパチッとなる事はありませんでしたか?」

「あ……有ります。」

「それって、魔力か漏れていたのかもしれません。」

「エリィみたいにですか?」

エリィは私の指摘に少し恥ずかしそうに ははは…と笑いました。

「そうですね、私みたいに感情が揺れると魔力が漏れてしまうのかもしれませんね。」

私は自分の手のひらをじっと見て、グーパー グーパーと、開いたり 閉じたりを繰り返しました。
(なんか 不思議…)

「じゃあ、今度はカティがやってみましょうか。カティに私の魔力を通した事で 私達はもう繋がっていますから、カティが魔力を引き出すのを誘導します。」

今、なんだか とっても親密な言葉を言われたような気がしましたが… 取りあえず 魔力です。魔力… 魔力…

私はお腹に回されたエリィの手の上に そっと自分の手を重ねました。
私の熱をエリィに移すようにイメージしていきます。
すると 手のひらに少しずつ熱が集まってくるような気がします。

手のひらがポカポカしてきました。
そして その熱が スーッとエリィの中に吸い込まれるような気がしました。

「カティの魔力は とても暖かくて優しいですね。」

そうして 私とエリィの身体の中で 2人の魔力が混ざり合い、重なり合って、グルグルと循環するのがわかります。

「今、2人の魔力が混ざり合って、グルグルと循環しているのがわかりますか?」

「はい…とても気持ちいいです…」

「このまま 外へ広げられますか?」

「外へ…」

私はさっきエリィがしていたように少しずつ魔力を広げてゆきます。

「その調子です。少しずつ ゆっくりと…とても上手ですよ。その広げた魔力を固くする事はできますか?」

「はい… 固く…  固く… 」

「今、私が作った「結界」の中にカティが作った一回り小さな「結界」ができています。私の外側の「結界」を解除します。カティはそのまま 自分の作った「結界」を維持して下さい。」

「わかりました。」

私は自分の作った「結界」に集中します。

エリィの「結界」が外れてグラッとしましたが 何とか維持できました。
そしてどれくらいたったのでしょうか。
とても長いような気もしますし、短かったような気もします。

「そこまで!」

エリィの声にハッと我に返ります。

「結界」も霧散するように消えました。

「カティ 大丈夫ですか?」

フーーーッと一息ついて、大丈夫だとエリィに伝えます。

「今日はここまでにしましょう。体調を見ながら 少しずつ練習しましょう。この調子だとすぐに 1人でもできるようになりますよ。」

「本当に? そうだと うれしいです。」

後ろから抱きしめられていた腕が解かれ、エリィが私を素早く横抱きにしました。

「キャッ!」

「疲れたでしょう。少し休んで下さい。」

そう言って 私を寝台に寝かし、布団をかぶせてくれます。

「まだ 大丈夫ですよ?」

「ダメです。夕飯の仕度が出来たら起こして上げます。そばにいますから、安心して眠って下さい」

そう言って、優しく頭を撫で、額にキスをくれました。

「さぁ、眠って…」

なれない魔力操作で 少し疲れていたみたいです。私は 目を閉じると すぐに眠ってしまいました。


✢✢✢



あれから 毎日少しずつ練習を重ねたお陰で私は「結界」の一言ですぐに「結界」を張れるようになりました。
あまり 多くない魔力を効率よく使えるように 私一人を包むだけの小さな「結界」です。

そして、オリバーに試しに攻撃してもらうと…

「バチッ!!」

物凄い音がして、雷が出ました。

オリバーは軽くしびれたようになって、しばらく 動けなくなってしまいました。

「スタンガン…」

エリィが何か知らない言葉を呟いていましたが、オリバーを動けなくしてしまった私は、それどころではありません。

「オリバー! 大丈夫?!」

慌てて「結界」を外して オリバーに声をかけます。
オリバーは ピリピリ痺れる腕を回しながら、大丈夫だと言ってくれましたが、私は怖くて仕方ありません。
それなのに オリバーは私の「結界」を体感して、

「これなら犯人をすぐに拘束する事が出来ます!逃げられる心配もありません!」

そう言って 絶賛してくれました。

オリバー 本当に身体は大丈夫なんでしょうか?

エリィも 私の魔力が強くないから、調度いい感じで相手にダメージを与えていて死ぬ事は無いから安心していいと、言ってくれました。

「オリバー 本当に大丈夫なのね?無理してない?」

「ご心配無く!お嬢様。この「結界」自分の娘にも教えてやりたいくらいですよ!」

眩しいくらいの笑顔でそう言ってくれました。

「エリオス様、私にもこの「結界」教えていただけませんか?護衛にも役立ちそうです!」

「エリオス様 私にもお願いします。」

オリバーとロティがエリィに教えてくれと迫っています。

え?!チョット待って!
あれをあの2人にもするの?
それは チョットいやだわ…

「う~ん チョット考えさせてもらえるかな?」

困ったようにエリィが2人から距離を取ってる。

そりゃ そうよね。
あれを 2人にするのはチョット…



ところが、それから一週間後、2人が

「私達も 「結界」を張ることが出来るようになりました!!」

そう言って 報告してくれました。

えーーーー!!
うそ うそ うそ…

「あの…オリバーはイヤじゃ無かったの?」

「何がですか?」

「その…オリバーは エリオス様よりも身体が大きいし…その…」

「? ? ?」

オリバーは理由が解らないというように首をかしげています。

「お嬢様?」

「だから…その…男同士で…あの…」

あーーー  
なんて言えば良いのかしら…

「えーーーっと お嬢様が何を言いたいのか良くわかりませんが、私もロティも元々、少々 魔力が扱えましたので、展開のやり方さえわかれば、それほどむずかしいものではありませんでしたよ。2人でエリオス様の作る「結界」の中に入れていただいて、中から「結界」に触れて、魔力の流れを見ることですぐに 仕組みを理解できましたから。」

「えっ?それだけ?2人一緒に?」

「? はい? そうですよ?」

えっ?
えっ?
えっ?
じゃあ、あれは何だったの?
あんなに ピッタリくっついて…
あれ?
あれ?
あれ?

私の顔が、ドンドン熱くなっていきます。
きっと、誰が見ても 真っ赤になっているのがわかるでしょう。
案の定、ロティに熱があると心配されて、そのまま 寝台に放り込まれました。

私は、自分がエリィとやっていた「結界」レッスンがいかに甘々で熱々だったかを思うと、恥ずかしさに頭から湯気が出そうでした。

エリィってば!
エリィってば!










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