私のかわいい婚約者【完結】

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15 レイクウッド領

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色々ありましたが 月日は流れ、私達は3年生になりました。

学園には暑い夏、1ヶ月程の長期休暇があります。
今年はその休暇を利用して、エリィの実家、レイクウッド領へ行きたいとリクエストしてみました。
エリィの快諾を得て、レイクウッド伯爵家に滞在させていただく事になりました。

去年 婚約してから早くも1年が過ぎました。

去年は 高位貴族クラスに編入したり
エリィと婚約したり
誘拐されたり
とても慌ただしかった為に ゆっくりと休暇を過ごす暇も無かったのです。
怪我をした私を気遣って、何処にも出かける事が出来なかったのです。

今年こそはと思い、早くからエリィにお願いしていたのです。

私はまだ、エリィのご両親に直接会ったことがありません。

レイクウッド領は 辺境でとても遠く、婚約は両家で手紙のやり取りと書類を交わしただけで、成立しましたから。
この 長期休暇を利用して、ぜひ、エリィのご両親や弟妹にご挨拶をしたいと思ったのです。

他にも、婚約後の契約事項に関して、滞り無く遂行されているかの視察や、今 開発中の化粧品の素材についてや、レイクウッド領で行われる夏の花祭りも楽しみです!
レイクウッド領では冬の雪まつり、夏の花祭りが 領の二大祭りと言われていて、観光の目玉になっていると エリィが教えてくれました。

レイクウッド領は 王都から北東に馬車で片道10日もかかる辺境の端にあります。
領地には、前人未到の霊峰アステカ山脈が横たわり、その麓には『魔の森』と言われる 魔獣の暮らす深い森が広がっています。

領地の半分以上を占める山と森、その更に麓に 扇のように僅かな平地が広がり、山からは大小いくつもの河が流れ込んでいます。

今から10年前、レイクウッド領では大雨が続き、至るところで河が氾濫し、領地は大きな打撃を受けました。
更に、森や山にエサが少なくなった事で魔獣が飢えて、麓の村を襲いました。そして 狂った魔獣が大群となり、スタンピートを起こし、領民を恐怖のどん底に落としました。

傭兵や冒険者、アルファイド領からの支援、国からの軍の出動など、出費が嵩み、今迄の蓄えと 国からの支援金だけでは追いつかず、辺境伯に大きな借金をする事になりました。

領民達の協力で少しずつ復興してきた矢先、今度は冷害がレイクウッド領を襲います。
ただでさえ少ない 穀物に大きな被害を被り、通年の半分しか収穫する事が出来ず、増々レイクウッド領は疲弊していきました。

借金ばかりが膨らみ、領内こそ 元に近い所まで復興してきましたが、借金を完済出来る程ではありませんでした。
なんとか利息を返しながら、領を治めているそうです。

今回、私との婚約で 領地の借金を完済し、今度からは投資をして、このレイクウッド領を豊かにしてゆく事を目標に 私達2人は 色々な政策を学園で考えてきたのです。

エリィに領内の良い所を教えていただいて、エリィがどれ程レイクウッド領を愛しているか、今迄の苦労がどんなに大変だったかを知りました。
彼の為に私が何が出来るのか、今回はじっくりと領内を視察して、色々と私に出来る事を考えたいと思っているのです。



✢✢✢



長期休暇に入ってすぐに、私達はレイクウッド領に出発しました。
旅は 滞り無く進み、予定どうり10日でレイクウッド領に着きました。

レイクウッド家に到着すると、エリィのご両親、弟妹、そして屋敷で働く人達が皆んなで 私達2人を迎えてくれました。

レイクウッド伯爵家は 古くて、小ぢんまりとしてはいますが、手入れが行き届いていて、キレイに掃除され、荒れた様子は1つもありません。
素朴で、温かい雰囲気のお屋敷でした。

「はじめまして、エリオスの父、ジョージア レイクウッドです。お待ちしていました。」

エリィと同じ 赤味のある銀髪に、ルビーのような赤い瞳のお義父様が ニッコリ笑顔で 私の手を取り、挨拶して下さいました。

その後ろには、美しい銀髪にエメラルドの瞳、透けるような白い肌の絶世の美女が 優しい微笑みをたたえ、私にハグとキスを下さいました。
お義母様は女神様でした。

そして、美しいお義母様に良く似た弟妹達。

義弟のアルバート君は お義母様と同じサラサラ ストレートの銀髪にエメラルドの瞳。
そして、義妹のリリアーナちゃんもお義母様と同じサラサラ ストレートの銀髪ですが、瞳はペリドットのような若草色で、2人共とても綺麗です。

レイクウッド領では 多くの人が銀髪で 宝石のような美しい瞳を持っています。
その中でも 特にレイクウッド伯爵家の皆様は美しくて、とっても羨ましいです。

そして、美しい双子の弟妹を見ていると、私の商人魂がウズウズと踊りだしそうです。

(あーーー この美しい弟妹を もっともっと飾りたい!あんなものやこんなものを着せて、愛でたい!美しく着飾って、皆にお披露目したい!)

本当に皆様、素晴らしい美貌です!

私が妄想に浸っていると、隣からクスクスと笑い声が聞こえてきました。
見上げると、エリィが私を見て 笑っていました。
妄想しすぎて、ちょっぴり だらしない顔になっていたようてす。(あー 恥ずかしい)

「カティ、長旅で疲れただろう?部屋に案内するよ。夕食まで、少しゆっくりすると良い。」

「ありがとうございます。エリィ。」

私が案内された部屋は、エリィの隣の部屋で、客室では無く、家族のフロアに用意して下さいました。
家族として認めていただいたようでとても嬉しいです。

湯浴みをさせていただいて、サッパリして、ディナーの為のドレスに着替えます。
ディナーと言っても、家族だけの気楽な物だからと言う事でしたので、薄い水色の落ち着いた雰囲気のワンピースドレスを着て 食堂へ行きました。

ディナーは温かい雰囲気でとても楽しい時間を過ごす事が出来ました。

ご両親も弟妹も 私の話すエリィの事を 目をキラキラさせながら聞いてくれます。
私も気が昂ぶっていたのか、エリィがいかにステキな男性かを語るのに無中になってしまって、終始 もうやめてくれと顔を赤くしているエリィがとても可愛らしくて、褒めすぎて、エリィを少し困らせてしまったようです。
(だって 本当にステキなのだからしょうが無いですよね。)



✢✢✢



次の日、私とエリィは朝食後 馬に乗って、領内を周る事になりました。
馬車では入れない所もあると言う事で、馬です!二人乗りです!緊張します!

厩舎に2人、手を繋いで向い、今日 お世話になる馬に 人参をあげて
「ヨロシクね」と挨拶しました。
すると、ブルブルと鼻を鳴らして、返事をしてくれました。
とっても 可愛いです。

2人で乗るという事で、この厩舎で一番大きくて、力の強い子だそうです。

真っ黒でツヤツヤしていて、とても大きい子ですが、穏やかな目をしていて、とても 気立ての良い馬だと、馬番のおじいさんが説明してくれました。

名前はロロと言うそうです。
義妹のリリアーナが名付け親だそうです。

先にエリィがロロに跨り、私の手を取って、馬上に引き上げてくれます。
背中にエリィの温もりを感じながら、視察に出発しました。(恥ずかしい!手汗が止まりません!)

まず、領都で一番賑やかなマーケットに向かいます。
マーケットの入口にある馬車停にロロを預けて、2人手を繋いで、マーケットに入ります。
マーケットには、小さいながらも たくさんの店が並び、色々な食品、生活用品、衣料品などが、所狭しと並べられています。
エリィが1つ1つの商品を説明してくれます。

串にさされて焼かれているのは『魔の森』で取れた魔物の肉で、香ばしくて、いい匂いです。
『魔の森』と畑の境目に罠を張っておくと、ホーンラビットや、グレイトボアなどが、罠にかかるそうです。
あとは、冒険者が仕留めた大型魔獣なども屋台に並ぶようです。
主な産業が 魔物に関わる物が多く、ギルドには いつもたくさんの冒険者がいるそうです。
討伐された魔物は肉、魔石、毛皮、魔導具の素材などに分けられて、マーケットに並ぶそうです。

「おいしい!」

甘辛いタレにつけながら直火で焼いた串焼きは香ばしく、臭みも無い柔らかい肉で とてもおいしいです。
エリィもニコニコして、串にかじりついています。

次に、アクセサリーの屋台に目が行きました。

「これって魔石ですか?」

赤、青、黃、緑、黒、紫。
色々な色の魔石が大きさごと、色ごとに分けられて、箱の中に入れられて、並んでいます。

「小さな魔物から取れた 小さい魔石はこうやって、アクセサリーの素材として売られているんです。女性は髪飾りや、ピアスやネックレス。男性は剣帯や武具に付ける御守りや、女性へのプレゼントなんかに買って行く者が多いんですよ。」

「綺麗ですね。ほら!これ。エリィの瞳と同じ色です。」

私が手に取ったのは ルビーのような赤い色で、少しいびつな円い小さな物です。
私はそれを買うことにしました。
すると、エリィが店主に言って私にそれを買って下さいました。

「これを カティに。」

小さな箱に綿を敷いて、真ん中に赤い魔石を乗せてくれました。

「ありがとうございます。」

私は エリィからそれを受け取り、もう一度、エリィの瞳と見比べます。

「同じですね。」

ニッコリと、エリィに向かって笑うと、エリィが少し照れていました。
なんだか、私もつられて照れてしまいます。



✢✢✢



店を出ると、私達は再び 馬に乗って郊外へ向かいました。

街を抜け、暫く行くと、平地いっぱいに広がる花畑が見えて来ました。
白、赤、青、ピンク、黄色、オレンジ。
色とりどりの花がきっちりと区画整理されて、美しい花のタペストリーになっています。
なんて綺麗なんでしょう。

この美しい花畑は 領で一番栽培されているじゃがいもの収穫時期以外の季節に 何か出来ないかと エリィが考えたもので、美しい花畑を作って、涼しい夏の観光の目玉にと発案したそうです。
お陰で、この時期、夏の避暑を求めてやって来る貴族や、裕福な平民達が お隣のアルファイド領からやって来るそうです。
観光の収益は麦を栽培するよりも多く、領民を潤しているそうです。

美しい花畑の中を2人でロロに乗ってゆっくりと進みます。
(これってデートじゃ無いですか?デートですよね?うん!デートです!私の中では、これは 仕事じゃなくてデートです!)

花畑の美しさを堪能し、更に進むと、『魔の森』の入口に差し掛かりました。
この辺りはまだ安全で 街の人達も薬草や、森の恵みを取りに訪れるそうです。

ロロから下りて、エリィが案内してくれたのは、私が今、開発中のシワ改善うるおいクリームの原料となっているネバーグラスの生息地でした。
こうして、実際に生えている所を見るのはとても勉強になります。

エリィとこうして 婚約出来た最初のきっかけとなった薬草に感慨もひとしおです。

他にも 森に自生している木の実やキノコ等を教えてもらいました。
それに、森に仕掛けられている魔物用の罠などの説明もしてもらいました。

この北端のレイクウッド領は夏が短く、冬になれば辺り一面雪に覆われ、家の中で過ごす日々が続くそうです。
長い冬を無駄にしないように、男性は冬でも雪下野菜を作ったり、雪まつりの準備をしたりするそうです。
女性は刺繍や手仕事などをして作った物を雪まつりで売るそうです。
女性陣が作る[恋が叶う御守り]は雪まつりのお土産の定番だそうです。

アルファイド領とレイクウッド領を繋ぐ一番大きな河に架かる橋の側にある広場で いくつもの大きな雪像や、雪の城、巨大滑り台などが作られ、その雪像を囲むように屋台が並び、夜には美しくライトアップされ、とても賑やかな3日間になるそうです。
ぜひ、一度見てみたいものです。

そして、ライトアップされた木々や雪像の下で若いカップルがプロポーズする光景が良く見られるそうです。
なんてロマンチックなのでしょう。
ここで結ばれた2人は幸せになるそうで、[恋が叶う御守り]もとても良く売れるそうです。

そろそろ帰る時間になりました。
夕日に染まる花畑を見ながら、私達は屋敷に戻りました。





    
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