私のかわいい婚約者【完結】

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18 舞踏会

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レイクウッド領に来て一週間。

今日はアルファイド辺境伯様に招待されて、皆んなで舞踏会にやって来ました。

エリィのご両親とエリィと私の4人です。
アルバート君(弟)とリリアーナちゃん(妹)は まだ、デビュー前なのでお留守番です。

お義父様は、上下黒のスーツにお義母様の瞳と同じ エメラルドのタイピンとカフス、ハンカチーフを身に付けていらっしゃいます。

お義母様は銀髪が映える夜色のマーメイドドレスにお義父様の瞳と同じルビーの髪飾り そして、ルビーのネックレスとイヤリングを身に付けていらして、2人共 とても美しいです。

あまりにも美しくて、画家に絵姿を描かせて、後世に残したいくらいです!

エリィと私は、私の瞳の色のアクアマリンのような淡い水色のスーツとドレスでペアルックになっています。
そして、2人共、金で出来た揃いのアクセサリーを身に付けています。
エリィは金のカフス、タイピン、イヤーカフ。
私は金の髪飾り、ネックレス、ピアスです。
金は私の髪色に近いはちみつ色です。
父が、こちらに訪問すると決まった時に、社交の1つくらいあるだろうと、母に頼んで準備してくれました。
(お父様 お母様、ありがとうございます!)

エリィが、君の髪と同じ色だねって微笑んでくれます。(キャーーーッ♡)

私達 4人が会場に入ると、たくさんの視線がこちらに向きます。

ため息のような「ほーーーっ」と言う 声無き声が会場を満たしました。

美しすぎる3人に視線が集まります。
私1人 みそっかすで 何だか申し訳無いです。

そんな会場の雰囲気を気にする事も無く、エリィはずっとニコニコして、私を見つめて下さいます。
何だか、物凄く恥ずかしいです。

会場の中心でお客様のお相手をしている、アルファイド辺境伯様の元に向い、4人でご挨拶しました。

アルファイド辺境伯様は、背が高く、筋肉質で身体が大きく、腕がもりあがっていて、とても強そうです。
奥様も、背が高く、スラッとしていて、アルファイド辺境伯様と並ぶと、とても釣り合いが取れていて、見惚れてしまいました。

次期様であるジルベルト様はお母様にとても良く似ていらして、スラッとした美丈夫です。

エリィと仲良しの、次男ユリシーズ様の私達をからかう様な瞳に、エリィが軽く脇腹を小突いています。

もう一人、三男アレクセイ様はアルバート君や、リリアーナちゃんと同じ年で、まだデビュー前なので、今夜は欠席だそうです。
いつか、そのうち会えるでしょう。

一通り挨拶も済み、ダンスが始まりました。
当主のダンスが終わると、招待客も次々と踊り出します。
エリィと私も、ダンスの輪に入りました。

実は、エリィとちゃんとした舞踏会でダンスを踊るのは初めてなので、物凄く、緊張してきました。
手汗!ヤバいです!

エリィが とろけるような顔をして、私を見つめています。
甘い。とっても 甘いです。
私の顔、大丈夫でしょうか?
絶対に赤くなってる気がします。
あと、なんかくすぐったくて、ニヤけてしまいそうです!
エリィがステキすぎる!

エリィに見惚れて、ドキドキしている間にダンスが一曲終わりました。
あれ?いつの間に?
気分が舞い上がりすぎて、頭の中がフワフワしています。
そんな私を見たエリィが

「ちょっと 休憩しようか?」

そう言って バルコニーに連れ出してくれました。
外の風が、火照った顔に気持ちいいです。
エリィが 給仕から受け取って、甘くて冷たい果実水を手渡してくれます。
エリィは、軽く酒精の入った弱めの冷たいカクテルを飲んでいるようです。

そこに、またしても やって来ました。
カレン フェイブル!

「エリオス兄様、こんな所にいましたのね、探しましたわ。」

「カレン…何か用?」

エリィの声がとっても冷たいです。

「久しぶりに 私とも踊ってもらいたくて。さぁ 行きましょう!」

凄い… 先日 あれ程拒絶されてたのに、心臓 強すぎませんか?

「悪いけど、今日はカティ以外の女性と踊るつもりは無いよ。可愛い婚約者を1人にして、変な虫が近付いてきたら、大変だからね。」

そう言って、私の腰を引き寄せて、見せつけるように 私のこめかみにキスを落とします。

「エ… エリィ…?」

カレン様は悔しそうにこっちを睨んでいたけれど、私はエリィの行動が恥ずかしすぎて、顔が上げられません。

その時、会場からジルベルト様がこちらに向かってやって来ました。

「カレン!いい加減にしないと、うちを出入り禁止にするぞ!」

「ジル兄様!」

カレン様が嬉しそうにジルベルト様の名前を呼びます。

「男あさりは他所でやってくれないか。今日は エリオスにも 久しぶりに会えて気分がいいんだ。水をささないでくれ。ほらお前と踊りたそうな連中が 向こうで待ってるぞ。早く 行ってやると良い。」

ジルベルト様の塩対応に血の気が引く思いです。

「ひどい…ジル兄様。私はエリオス兄様と…」

「だから、エリオスは諦めろと言ってるんだ。いい加減にしないと、子爵に言いつけるぞ。いいのか?」

顔を赤くして、黙り込むカレン様。

分が悪いと思ったのか、カレン様は渋々とバルコニーから出て行きました。
早速 カレン様を取り囲む令息達に 笑顔を振りまいています。
変わり身の速さに驚いてしまいます。

「ジルベルト兄さん、助かったよ ありがとう。」

エリィが ジルベルト様にお礼を言っています。
その間も、エリィの手が 私の腰から離れる事はありません。

「構わないさ。せっかく来てもらったんだ。お前にも楽しんで欲しいからな。」

そして、私に向かって ニッコリと微笑み、ジルベルト様は

「2人共、ゆっくり楽しんでくれ。」

そう言って、バルコニーを後にしました。

そして、ジルベルト様と入れ替わるように1人の男性がやって来ました。

「やあ エリオス、久しぶりだね。」

ピンクゴールドの髪にピンクサファイアの瞳。少しタレ目の甘いマスクをした男性がエリィに親しげに声をかけます。彼の纏う色に既視感を覚え、嫌な予感がします。

チッ!  あれ?エリィ 今舌打ちしませんでしたか?

「… キース様、お久しぶりです。」

「そちらの美しいご令嬢を紹介してくれないのかい?」

その言葉を聞いて、エリィの気配が少しピリッとしたのを感じます。
(あれ?エリィ 冷気漏れてませんか?)

ふうーーーと1つ息をついて エリィが私をそばに引き寄せました。

「キース様、彼女は私の婚約者、カトリーヌ モルガン伯爵令嬢です。カトリーヌ、こちらは、キース フェイブル子爵令息です。カレンの兄ですよ。」

やっぱり!嫌な予感か当たりました。
恐ろしいほど良く似た兄妹です。

「こんばんは、カトリーヌ嬢。私はキース フェイブル。どうか キースと呼んで欲しいな。」

「はじめまして、カトリーヌ モルガンと申します。フェイブル様と呼ばせていただきますわ。」

「お近づきの印に、一曲お相手いただけませんか?」

さすが兄妹、おんなじ事言ってるわ。

「申し訳ありません。今日は私の婚約者とだけ 踊るつもりですの。エリオス様はとてもヤキモチ焼きですから、会場が凍りついてはいけないでしょう?」

「はは… たった一曲くらいで魔力が漏れるほど 嫉妬深くは無いだろう? エリオス。」

キース様はそう言ったけど、すでにエリィからはヒンヤリとした魔力が漏れていた。
それを見て、少々 引きつった表情になったキース様は

「やれやれ よほど婚約者の事が大事みたいだね。氷漬けにされる前に退散するよ。では、カトリーヌ嬢、又 会いましょう。」

そう言って、踵を返し、優雅に会場に戻って行った。

「エリィ。大丈夫ですか?」

私は 固く握られたエリィの拳を そっと両手で包んで ゆっくりと開かせました。

「カティ、すみません。ちょっと、我を忘れる所でした。」

「私を守ろうとしてくれたのですよね、私は嬉しかったですよ。」

「カティ…」

私の名を小さく呼んで、エリィはフンワリと私を抱きしめました。
私はエリィの背中に手を回して、ポンポンとエリィの気持ちをなだめるように、背中を軽く叩きました。

「それにしても、なんだか、容姿も性格も、ソックリなご兄妹ですね。」

「そうですね、2人共 『ハンター』ですから。」

「『ハンター』 ですか…」

「狙った獲物は逃さない。始末が悪いです。」

「私、目を付けられちゃいましたか?」

エリィの私を抱く腕に力がこもります。

「カティは、私が守ります。誰が来ようと、渡しません。」

「はい。誰にも渡さないで下さい。」

そう言って、私も エリィをギュッと抱きしめました。

「それに、エリィに教えてもらった「結界」もありますしね。あんな奴、返り討ちにしてやります。」

「ははは… それは頼もしいな。」

「安心しましたか?」

「はい。」

エリィの瞳を見つめる。
うん。大丈夫そうです。



エリィの瞳が優しく揺れて、2人の唇が重なりました。



















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