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しおりを挟む幼いフラヴィオが、心の支えだった母を亡くして三日が経った頃。
仕事を理由に毎日のように家を空けていた父が、愛人宅で過ごしていたことを知った。
そして、一月も経たずに父が愛人を邸に連れて来た時も、その相手にフラヴィオと一つしか歳が変わらない息子がいたことを知った時も、決して感情をあらわにしなかったフラヴィオが、友人に拳を振るっていた――。
右拳に初めて感じた痛み。
ドクドクと激しく鳴る心音と、目眩に襲われるフラヴィオだが、なんとか足を踏ん張っていた。
――父の愛人の息子を守るために。
静まり返る庭園に、春風が吹き込む。
頬を押さえ、唖然とした表情で倒れている友人を見下ろすフラヴィオの翡翠色の瞳は、今もなお怒りで燃え上がっている。
穏やかな性格で、喧嘩なんてしたことがないフラヴィオは、右手が痛くてたまらなかった。
それでも必死に痛みに耐える。
フラヴィオが殴った相手が、格上の侯爵子息だと頭ではわかっていた。
だが、止められなかった……。
この日を境に、フラヴィオの運命は大きく変わることになる――。
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