100回目の口付けを

ぽんちゃん

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その後

45 本当の気持ち

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 全身が真っ赤になる僕を見て、優しく微笑んだユーリは、僕の髪を手に取って、物語の王子様のようにそっと口付ける。

 「会えない期間もずっとヴィーのことだけを考えてた。一度たりとも嫌いになったことはないよ。十年前から、俺の心はヴィーだけを想ってる。愛してるよ……」

 本当は会えない間、僕を憎んでいたんじゃないの?
 本当はナポレオン兄様のことが好きだったんじゃないの?
 本当は僕以外の人と朗読会をして、キスしていたんじゃないの?

 恋人になったとはいえ、僕自身も気付いていなかった、心の奥底にあった醜い感情。

 そんな嫌な感情が全て綺麗さっぱりとなくなって、ほろほろと涙が溢れる。嬉し泣きだ。

 「これからはずっと一緒にいようね、ヴィー」
 「うんっ、うんっ……」

 流れる涙をちゅっと吸ったユーリは、蕩けるような笑みを浮かべて僕をそっと押し倒す。

 舌を絡ませて口付けられて、幸せでいっぱいになる僕は、もう僕の元から離れないように、両手でユーリの両頬を包み込んで、深い口付けを強請り続けた。

 たっぷりと口付けてもらい、身も心もトロトロに溶かされる。

 光の束を集めたような金色の髪を掻き上げるユーリは、それはそれは色っぽくて、僕はとろんとしたまま大好きな恋人に魅入っていた。

 「ゆーりは、ほんと、かっこいいね……」
 「ん?」
 「何年も傍で見てるのに、ドキドキして、全然慣れない。毎日、当たり前のように、ユーリが好きって気持ちが、更新されていく……。僕の恋人は、かっこよすぎて困っちゃうよっ」

 えへへ、と笑うとユーリは眉間に皺を寄せていたけど、口許がひくひくと嬉しそうに動いていた。

 「あんまり可愛いことばっかり言ってると、ヴィーが嫌がっても抱くよ?」
 「………………僕、本当は、ユーリに抱かれたいよ?」
 「っ、」
 「でも、これ以上好きになったら、狂っちゃいそうだから……、結婚してからに、ンッ」

 驚いたように目を見開いたユーリは、僕の両手をシーツに縫いとめて、激しく口付ける。

 指を絡めてきゅっと強く握られた僕は、同じように握り返した。

 注がれる唾液をこくこくと必死に飲みながら薄らと目を開けると、熱の孕む黄金色の瞳と視線が交わる。

 静かに唇が離れて行き、透明な糸がつーっと二人を繋ぐ。

 それを追いかけて、愛おしい人の薄い唇にちゅうっとキスをして舐めとった。

 だらしない顔で口の端から涎を垂らす僕を見下ろすユーリは、怒りの孕む声色で僕の名前を呼ぶ。

 「初めては、絶対に優しくしたいと思っていたけど…………無理かも」
 「ん、いいよ……。僕、ユーリになら、何されても、きもちいいもん……」
 「っ……ここでも再度煽るのか。今のは最後の警告だったけど……もう、知らないからな? 泣いてお願いしても、許してあげないから」
 
 そう言って、ちょっと怒っていたユーリは、すごく優しく触れるだけのキスをした。

 口では許さないなんて言ってるけど、僕に触れる手はすごく優しい。

 首筋を舐めあげて、僕の上半身に、所有印をこれでもかとつけるユーリは、やっぱり怒っているみたいだ。

 「んっ……ゆーり……ふぁっ……」
 「真っ白な肌に、俺の赤い印がよく似合う」
 
 ピンと尖る胸の飾りを避けて、僕の顔を見ながら乳輪を舌でなぞるユーリは、凄まじい色香を放つ。

 「ぁっ……ぁぁっ……」
 「乳首も舐めて欲しい?」
 「ぅん……っ」
 「ちゃんと口に出してお願いして?」
 「っ……ゆーり、おねがぃ……」
 「何を?」
 「ぅぅっ…………ゆーりの舌で、僕のちくび……なめて? っんぁあっ!」

 胸の飾りをべろりと舐めあげて、じゅるじゅると音を立てて激しく吸われた僕は、たまらず腰を浮かせて甘ったるい声を出す。

 「あっ、あぁっ、ゆーりっ、激しっ……はぁっ」
 「何? もうイきそう?」
 「んっっ……う、ん……っ、」
 「まだ我慢して? 今イッたら、最後までもたないよ?」

 くすりと妖艶に笑うユーリは、右の飾りを指先でピンと弾き、左は優しく甘噛みする。

 左右違う刺激を与えられた僕は、気持ち良すぎてビクビクと身体を震わせる。

 「ふぅぅっ……もぅ、げんかぃ……あっ、ああっ! や、だめ……ゆーりっ……ひぁあっ! イクッ、イッちゃうっ! んんんぅーーっ!」

 胸の飾りを弄られただけで射精してしまった僕は、恥ずかしいやら気持ち良いやらで、元々悪い頭が更におかしくなっていた。

 「乳首だけでイッちゃうなんて、ヴィーは本当エロい身体だよね? 興奮する」
 「ん……ゆーりのせい。ぜんぶ、ゆーりがわるぃのっ」
 「はぁ…………可愛すぎ。ヴィーがそう言うなら全部俺のせいだな?」
 「ん。そう。ゆーりのせいで、僕、えっちな体になっちゃったの……」

 むっと口を尖らせると、なぜかユーリが悶え始めて、僕の横に突っ伏してコロコロと転がっていた。

 やっぱり僕の恋人は、かっこいいのにちょっとおかしなところがある。

 呼吸を整える僕は「やばい」を連呼して転がるユーリを生温かい目で見守るのだった。

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