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砂の章
其ノ六 みんなの願い
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「助手くん、待っていたぞ」
フィーネたちがアリーシャたちのいる家まで帰ると、すでに話し合いは終わっている様子だった。
「もう話はついたの?」
「ああ、色々と話をさせてもらった。結論から言えば、我々であの蛇と対峙することになった」
アリーシャがそういうと、男たちも前へ出てくる。
「先ほどは失礼なことばかり、本当に申し訳なかった」
「……あ、いや、こちらこそごめんなさい。感情的になりすぎちゃって……」
男たちは二人して深く頭を下げての謝罪だった。フィーネにくっついていたオネも、フィーネから離れ祖父らに倣う。
得意げにしているアリーシャは、一体何の話をしていたのだろうか。
「もう頭をあげて……私も悪かったんだから!」
二人はフィーネの顔を一度確認し、もう一度軽く頭を下げてからフィーネに向き直った。
「そういえば、自己紹介がまだだったね」
高齢の男が自分の胸に手を置き、続ける。
「私はこの集落の長をしているサマクという。こっちが息子のシャモ。気楽に呼んでもらって構わない」
「えっと、サマクさんとシャモさん……わかりました」
サマクが「呼び捨てでいいよ」と言うと、フィーネも戸惑いながら「わかった」と返す。
アリーシャはすでに名前を聞いているのだろう。何も確認することもなく、フィーネに視線を送り、話を促す。
「うん。えーと、もうアリーから聞いているかもしれないけど、私はフィーネっていいます。私のことも呼び捨てで大丈夫」
フィーネが軽く会釈すると、アリーシャが続ける。
「先ほども話したが、私の名はアリーシャだ。アリーと呼ぶのは助手くんの特権なので、できれば略さず呼んでいただきたい」
アリーシャの発言に、フィーネが戸惑うが、アリーシャは至って真剣に話している様子だ。
「……そしてもう一度確認するが、本当にさっきの案でいいんだな?」
「ああ、構わない。……と言うよりも、本当に大丈夫なのか、こちらが確認したい」
「さっきの案?」
三人ですでに話し合いは終わって、色々と取り決めもしたのだろう。フィーネは若干置いてけぼりになってしまっている。
「ああ。端的に言えば、あの蛇は私と助手くんの二人で倒すと言う話だ」
「はい?」
フィーネは予想外の言葉に驚き、首を傾げる。
「心配するな。私の見立てでは、あの蛇よりも君の方が遥かに強い。君一人で十分なはずだ」
「……まあ、アリーがそう言うなら……?」
「そうだろう。ただ、君一人では問題があるんだ」
「問題?」
アリーシャがサマクから眼鏡のようなものを受け取った。
「これは風防眼鏡だ。あの砂煙の中、目を覆ってくれる」
砂煙の中に入ってしまえば、なるほど確かに視界は最悪だろう。
「それは便利だけど、それの何が問題なの?」
「別にこの眼鏡に関してはなにも問題はないんだ。ただ、素材がな……」
アリーシャが視線を送ると、サマクが代わりに説明する。
「その眼鏡の素材には砂尾の皮を使っているんだ。この砂漠にはあまり動物が居なくてね」
「さび?」
砂尾……聴き慣れない名前だが、何の生物だろうか?
「砂尾はこの大砂漠を徘徊する蠕虫だ。黄色い皮に覆われて、あらゆる物を丸呑みする」
「ぜんちゅう……?」
「助手くん、わかりやすく言えば、我々が初めて遭遇した砂食虫のことだ」
どうやら、砂尾とはフィーネの脚によって粉々にされた、あの巨大な蠕虫のことのようだ。
だとすればフィーネからしたらたまったものじゃないだろう。
「それがあのいもむしの皮で……?」
「そうだ」
「いや! そんなの絶対つけない! つけないからね!」
フィーネが駄々をこねる。小柄な外見も相まって、小さな子供のようだ。
「わかっているさ。君につけろなんて言わない。だから一人では難しい、と言ったんだ」
「どう言うこと?」
アリーシャが手に持っていた眼鏡を頭に被り、フィーネをまっすぐ見つめる。
「私が助手くんの目として同行する」
「え」
フィーネはともかく、アリーシャの身体能力はおそらく人並みだろう。そのアリーシャがあの蛇と対峙できるとは考えにくい。
「だめ。アリーじゃ蛇の動きについていけないよ」
「だから君が私を背負ってくれ。いくら君でも状況がわからなければ万が一もありえてしまう」
確かに、いくら身体能力が高くても、相手を捕らえれないのであれば何もできないだろう。
それを加味した上でも、アリーシャが付いてくる方が危険な気はするが、頑固としてついてくる気でいるようだ。
「……わかった。けどアリーに危険が及ぶならすぐに逃げるからね」
「そんなことにはならないさ」
アリーシャはフィーネが負けるなどとは、微塵にも考えていないように見える。
フィーネに対し、無類の信用を持っているのだろうが、その信用が仇とならないことを願おう。
「と、いうことだ。これでいいのだろう?」
「あんたたちがいいのならこちらとしては助かる。夜が更けると寒くなって動きに支障も出るだろう。今夜はゆっくりして、明日お願いしたい」
「寒くなる?」
砂漠の夜は冷えるとは言うけれど、実際どの程度なのか、とりあえず今の二人の格好では寒そうではある。
「残念ながらこの集落に宿はない。が、オネもなついているようだし、この家に泊まるといい。さすがにその格好では凍えるだろうから、代わりになるものも探してみよう」
「そうか、助かる。夜をどうするか相談しようとは思っていたんだ」
「お姉さんお泊まり?」と喜ぶオネに、フィーネも「そうみたい」と笑って返す。
宿ももらい、アリーシャの懸念も解消された。
明日の蛇との対峙のため、二人は休養をとることにした。
フィーネたちがアリーシャたちのいる家まで帰ると、すでに話し合いは終わっている様子だった。
「もう話はついたの?」
「ああ、色々と話をさせてもらった。結論から言えば、我々であの蛇と対峙することになった」
アリーシャがそういうと、男たちも前へ出てくる。
「先ほどは失礼なことばかり、本当に申し訳なかった」
「……あ、いや、こちらこそごめんなさい。感情的になりすぎちゃって……」
男たちは二人して深く頭を下げての謝罪だった。フィーネにくっついていたオネも、フィーネから離れ祖父らに倣う。
得意げにしているアリーシャは、一体何の話をしていたのだろうか。
「もう頭をあげて……私も悪かったんだから!」
二人はフィーネの顔を一度確認し、もう一度軽く頭を下げてからフィーネに向き直った。
「そういえば、自己紹介がまだだったね」
高齢の男が自分の胸に手を置き、続ける。
「私はこの集落の長をしているサマクという。こっちが息子のシャモ。気楽に呼んでもらって構わない」
「えっと、サマクさんとシャモさん……わかりました」
サマクが「呼び捨てでいいよ」と言うと、フィーネも戸惑いながら「わかった」と返す。
アリーシャはすでに名前を聞いているのだろう。何も確認することもなく、フィーネに視線を送り、話を促す。
「うん。えーと、もうアリーから聞いているかもしれないけど、私はフィーネっていいます。私のことも呼び捨てで大丈夫」
フィーネが軽く会釈すると、アリーシャが続ける。
「先ほども話したが、私の名はアリーシャだ。アリーと呼ぶのは助手くんの特権なので、できれば略さず呼んでいただきたい」
アリーシャの発言に、フィーネが戸惑うが、アリーシャは至って真剣に話している様子だ。
「……そしてもう一度確認するが、本当にさっきの案でいいんだな?」
「ああ、構わない。……と言うよりも、本当に大丈夫なのか、こちらが確認したい」
「さっきの案?」
三人ですでに話し合いは終わって、色々と取り決めもしたのだろう。フィーネは若干置いてけぼりになってしまっている。
「ああ。端的に言えば、あの蛇は私と助手くんの二人で倒すと言う話だ」
「はい?」
フィーネは予想外の言葉に驚き、首を傾げる。
「心配するな。私の見立てでは、あの蛇よりも君の方が遥かに強い。君一人で十分なはずだ」
「……まあ、アリーがそう言うなら……?」
「そうだろう。ただ、君一人では問題があるんだ」
「問題?」
アリーシャがサマクから眼鏡のようなものを受け取った。
「これは風防眼鏡だ。あの砂煙の中、目を覆ってくれる」
砂煙の中に入ってしまえば、なるほど確かに視界は最悪だろう。
「それは便利だけど、それの何が問題なの?」
「別にこの眼鏡に関してはなにも問題はないんだ。ただ、素材がな……」
アリーシャが視線を送ると、サマクが代わりに説明する。
「その眼鏡の素材には砂尾の皮を使っているんだ。この砂漠にはあまり動物が居なくてね」
「さび?」
砂尾……聴き慣れない名前だが、何の生物だろうか?
「砂尾はこの大砂漠を徘徊する蠕虫だ。黄色い皮に覆われて、あらゆる物を丸呑みする」
「ぜんちゅう……?」
「助手くん、わかりやすく言えば、我々が初めて遭遇した砂食虫のことだ」
どうやら、砂尾とはフィーネの脚によって粉々にされた、あの巨大な蠕虫のことのようだ。
だとすればフィーネからしたらたまったものじゃないだろう。
「それがあのいもむしの皮で……?」
「そうだ」
「いや! そんなの絶対つけない! つけないからね!」
フィーネが駄々をこねる。小柄な外見も相まって、小さな子供のようだ。
「わかっているさ。君につけろなんて言わない。だから一人では難しい、と言ったんだ」
「どう言うこと?」
アリーシャが手に持っていた眼鏡を頭に被り、フィーネをまっすぐ見つめる。
「私が助手くんの目として同行する」
「え」
フィーネはともかく、アリーシャの身体能力はおそらく人並みだろう。そのアリーシャがあの蛇と対峙できるとは考えにくい。
「だめ。アリーじゃ蛇の動きについていけないよ」
「だから君が私を背負ってくれ。いくら君でも状況がわからなければ万が一もありえてしまう」
確かに、いくら身体能力が高くても、相手を捕らえれないのであれば何もできないだろう。
それを加味した上でも、アリーシャが付いてくる方が危険な気はするが、頑固としてついてくる気でいるようだ。
「……わかった。けどアリーに危険が及ぶならすぐに逃げるからね」
「そんなことにはならないさ」
アリーシャはフィーネが負けるなどとは、微塵にも考えていないように見える。
フィーネに対し、無類の信用を持っているのだろうが、その信用が仇とならないことを願おう。
「と、いうことだ。これでいいのだろう?」
「あんたたちがいいのならこちらとしては助かる。夜が更けると寒くなって動きに支障も出るだろう。今夜はゆっくりして、明日お願いしたい」
「寒くなる?」
砂漠の夜は冷えるとは言うけれど、実際どの程度なのか、とりあえず今の二人の格好では寒そうではある。
「残念ながらこの集落に宿はない。が、オネもなついているようだし、この家に泊まるといい。さすがにその格好では凍えるだろうから、代わりになるものも探してみよう」
「そうか、助かる。夜をどうするか相談しようとは思っていたんだ」
「お姉さんお泊まり?」と喜ぶオネに、フィーネも「そうみたい」と笑って返す。
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