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砂の章
其ノ十 晩餐会
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「相変わらず無茶苦茶だな、助手くん」
愉快に笑うアリーシャの言葉を聞きながら、フィーネは目を閉じて砂嵐の中に潜り、蛇の頭が落ちたであろう周辺まで移動した。
「今ので終わったとは思えないし、念のため」
拳を持ち上げ、蛇の頭がありそうな場所を思い切り叩きつける。
「あれ」
彼女の拳は間違いなく地面に突き刺さったが、砂嵐の中にさらに砂が舞うだけの結果に終わる。
一旦落ち着き、その場に立ち竦み、次の動きを待つ。
大蛇はまた彼女の周囲を動き回り、警戒しているようだ。
あれだけの巨体が周囲を回っていれば、自ずと周りは大蛇の胴体に囲われ、先ほどではないにしろ砂嵐の勢いが緩やかになった。
フィーネはまだ目を開けれずにいるが、唐突に大蛇の動きが止まった。
それから少しの間をおき、彼女の後ろから大蛇の頭が勢いよく現れ、彼女に襲いかかる。
「その程度でわたしを──」
「助手くん真上に飛べ!」
アリーシャの唐突な指示にフィーネは驚き、しかし体はその指示に従っていた。
宙に体が浮く形になり、ただ自由落下に身を任せるほかなくなる。
しかし、襲いかかってきた大蛇の気配はそのまま彼女の下に残っている。
フィーネが意識を集中していると、驚いたように体を震わせ、少しだけ涙目になり、鼻をおさえた。
「なにこれ……!」
「そのまま叩きつけろ!」
フィーネは涙を流しながらも、アリーシャの指示に相変わらず無意識に応える。
体勢をできるだけ整え、落下しながら感覚で地面に触れそうになる瞬間に、拳を下に向かって叩きつける。
いつもほどの力は感じられないが、フィーネの拳が触れた先から、あらゆるものが弾け飛ぶ。
「なんか嫌な予感しかしないんだけど……」
フィーネは呟きながらわずかに嘔吐き、なんとか持ち堪える。
それから少ししてくると、あたりは明るくなり、砂嵐も徐々に消えていった。
「明るくなってきた」
「どうやらこの砂嵐もこの蛇の仕業だったようだな」
フィーネは目を閉じながらでも、日の光で状況を大体理解したのだろう。背負うアリーシャに顔を向け、尋ねる。
「アリー、もう目を開けても大丈夫なの?」
「ん? ああ。まあ、あまりお勧めはしないが、問題はないだろう」
アリーシャがどこかで聞いたような言葉を放つと、フィーネは若干嫌そうな顔はしたが、そのまま目を閉じているわけにもいかず目を開く。
「これ……」
砂嵐が止み、そこにあったのは広大な砂漠の中、見える範囲でかなり先まで残っている、大蛇の胴体。
胴体の先、おそらく大蛇の頭があったであろう場所には、引きちぎられた血肉が飛び散り、無残なことになっている。
蛇の胴体から飛び出す骨や内臓が飛び出しているのを見れば、フィーネの叩きつけがいかに強力だったのかは一目瞭然だろう。
「やっぱり蛇の死体だよね……」
「卒倒はしないようだな」
「虫じゃなければまあ……あまり気分の良いものじゃないけどね」
フィーネは自分の握り締めた拳を眺めながら、なにかを自分の胸に仕舞い込んだようだ。
「とりあえず目標は達成だな。集落の者たちに報告だ。こいつの死体に関しては後ほど考えることにしよう」
「そだね。安全だよって知らせないと」
おそらく、砂嵐がやんだことで状況は理解されているだろう。
それでも確実な報告のため、二人は集落へ向けて歩き出した。
「おかえりお姉さん!」
「ただいまオネちゃん」
二人が集落に戻り、最初に目に入ったのは涙で顔を濡らしながら満面の笑顔で迎えるオネの姿。
他にシャモ、サマクが待機していた。
「二人とも、本当に成し遂げてくれるとは……私たち全員の、心からの感謝を送らせていただきたい。本当にありがとう」
サマクとシャモが深く頭を下げ、オネちゃんもそれに倣う。
「私は大したことはしてないよ。みんなが無事でなによりだから」
「本当に、本当にありがとう」と涙を流しながら頭を上げる気配のない、男二人を宥めながら、みんなが集まっているという大広場に移動する。
それからは二人にとって怒涛の時間だっただろう。
広場についてみると、この集落にそれほどの人間がいたのかと思わされるほどに、大人数が忙しなく動き回っていた。
顔を合わせるたび、例外なく感謝の言葉を投げかけられ、二人が──主にフィーネが恥ずかしそうに対応する。
大体の人との挨拶も終わり、ある程度落ち着いてくると、多くの男たちが集落を出ていくのが確認できた。おそらく蛇の回収だろう。
蛇の回収が済み、とてつもなく大きかった蛇の死体は、その面影もないほどに分割されて運ばれていた。
その夜は蛇の肉を使い、集落総出での晩餐会となった。
集落の人間たちは二人への感謝と、久しぶりの肉を堪能し、フィーネは色んな料理を美味しそうに食べ歩いていた。
アリーシャはサマクらと話し込んでいたが、なにを話していたかはわからない。
空が暗くなり、気温が大分低くなってきた頃合いで晩餐会はお開きとなった。
「本当にもうでていくのか?」
晩餐会を終え、集落の人たちとも話しを終えると、アリーシャの発言で二人はそのまま集落を発つこととなった。
「ああ。これの充電も終わったからな」
「それ、電気で動いてたの?」
アリーシャが持つのは例の懐中時計型の機械。この砂漠に来てしまった元凶だ。
「電気とは違うが──そもそも私にもよくわからんのだ」
アリーシャが開発者としてあるまじき発言をすると、フィーネも不安な表情になる。
「せめて朝になってからでもいいと思うんだが……夜にこの砂漠を抜けるのは辛いぞ」
夜の砂漠は寒い。日中の高温と比べどちらの方が安全なのかは判断がつかないが、どちらも危険なことには変わりないだろう。
「安心してくれ。これでの移動はあまり時間や気候などは関係ないからな」
三人とも釈然としない風だが、実際に機械での移動を確認していなければ当然だろう。
そもそも立ち会った人間ですら、なんなのか分からないのだから。
「よく分からないが、気をつけてくれ」
サマクとシャモは不安そうにしつつも、二人なら大丈夫だろうと納得している様子だ。
オネは目を潤ませているが、二人に迷惑をかけないようにと励んでいるのが見てわかる。
「オネちゃん、大丈夫。私たちは強いから死んだりしないし、生きていればいつか会えるかもしれない。ね?」
「……私は大丈夫ですっ。お姉さんたち、頑張って……!」
色んな感情を抑えながら喋るオネの言葉は途切れ途切れで、その辛さがよくわかる。フィーネもその大きな瞳を若干潤ませている。
「オネちゃん、別れる時は涙じゃない。自分の一番の笑顔で見送るんだ!」
そう言って笑顔を見せるフィーネもまた、涙を抑え切れていない。
「──うんっ!」
オネの目から流された涙は、その感情を見て取れる。
しかし、その涙に反して彼女の見せる笑顔は、おそらく二人が見たオネの笑顔の中で最も輝いていたものだろう。
「さようなら、またいつか必ず!」
二人は別れを告げた後、寒い砂漠をある程度歩き、集落も目視できないあたりまできた。
「良かったんだな、助手くん」
「……寂しくないといえば嘘になるけど、私たちは元々この世界の人間じゃない。これが自然なことなんだよね?」
「……そうだな」
アリーシャが黒い腕輪をフィーネに渡す。
フィーネも、理解し腕輪をつける。……この腕輪はどこにもっていたのだろう。
「さあ、帰ろ。私たちの世界に」
「……? なにを言っているんだ助手くん。元の世界に戻る方法なんて知らないぞ。新たな世界へいくのだからな!」
「え? なにを──」
フィーネが問いかけると、言い切る前にアリーシャは機械の釦を押していた。
夜の砂漠は元より静寂に包まれていたのに、さらに静かになる。
「……っ。もう!」
フィーネが言葉を発するとそのまま意識を失い、目の前が暗闇に包まれていく。
愉快に笑うアリーシャの言葉を聞きながら、フィーネは目を閉じて砂嵐の中に潜り、蛇の頭が落ちたであろう周辺まで移動した。
「今ので終わったとは思えないし、念のため」
拳を持ち上げ、蛇の頭がありそうな場所を思い切り叩きつける。
「あれ」
彼女の拳は間違いなく地面に突き刺さったが、砂嵐の中にさらに砂が舞うだけの結果に終わる。
一旦落ち着き、その場に立ち竦み、次の動きを待つ。
大蛇はまた彼女の周囲を動き回り、警戒しているようだ。
あれだけの巨体が周囲を回っていれば、自ずと周りは大蛇の胴体に囲われ、先ほどではないにしろ砂嵐の勢いが緩やかになった。
フィーネはまだ目を開けれずにいるが、唐突に大蛇の動きが止まった。
それから少しの間をおき、彼女の後ろから大蛇の頭が勢いよく現れ、彼女に襲いかかる。
「その程度でわたしを──」
「助手くん真上に飛べ!」
アリーシャの唐突な指示にフィーネは驚き、しかし体はその指示に従っていた。
宙に体が浮く形になり、ただ自由落下に身を任せるほかなくなる。
しかし、襲いかかってきた大蛇の気配はそのまま彼女の下に残っている。
フィーネが意識を集中していると、驚いたように体を震わせ、少しだけ涙目になり、鼻をおさえた。
「なにこれ……!」
「そのまま叩きつけろ!」
フィーネは涙を流しながらも、アリーシャの指示に相変わらず無意識に応える。
体勢をできるだけ整え、落下しながら感覚で地面に触れそうになる瞬間に、拳を下に向かって叩きつける。
いつもほどの力は感じられないが、フィーネの拳が触れた先から、あらゆるものが弾け飛ぶ。
「なんか嫌な予感しかしないんだけど……」
フィーネは呟きながらわずかに嘔吐き、なんとか持ち堪える。
それから少ししてくると、あたりは明るくなり、砂嵐も徐々に消えていった。
「明るくなってきた」
「どうやらこの砂嵐もこの蛇の仕業だったようだな」
フィーネは目を閉じながらでも、日の光で状況を大体理解したのだろう。背負うアリーシャに顔を向け、尋ねる。
「アリー、もう目を開けても大丈夫なの?」
「ん? ああ。まあ、あまりお勧めはしないが、問題はないだろう」
アリーシャがどこかで聞いたような言葉を放つと、フィーネは若干嫌そうな顔はしたが、そのまま目を閉じているわけにもいかず目を開く。
「これ……」
砂嵐が止み、そこにあったのは広大な砂漠の中、見える範囲でかなり先まで残っている、大蛇の胴体。
胴体の先、おそらく大蛇の頭があったであろう場所には、引きちぎられた血肉が飛び散り、無残なことになっている。
蛇の胴体から飛び出す骨や内臓が飛び出しているのを見れば、フィーネの叩きつけがいかに強力だったのかは一目瞭然だろう。
「やっぱり蛇の死体だよね……」
「卒倒はしないようだな」
「虫じゃなければまあ……あまり気分の良いものじゃないけどね」
フィーネは自分の握り締めた拳を眺めながら、なにかを自分の胸に仕舞い込んだようだ。
「とりあえず目標は達成だな。集落の者たちに報告だ。こいつの死体に関しては後ほど考えることにしよう」
「そだね。安全だよって知らせないと」
おそらく、砂嵐がやんだことで状況は理解されているだろう。
それでも確実な報告のため、二人は集落へ向けて歩き出した。
「おかえりお姉さん!」
「ただいまオネちゃん」
二人が集落に戻り、最初に目に入ったのは涙で顔を濡らしながら満面の笑顔で迎えるオネの姿。
他にシャモ、サマクが待機していた。
「二人とも、本当に成し遂げてくれるとは……私たち全員の、心からの感謝を送らせていただきたい。本当にありがとう」
サマクとシャモが深く頭を下げ、オネちゃんもそれに倣う。
「私は大したことはしてないよ。みんなが無事でなによりだから」
「本当に、本当にありがとう」と涙を流しながら頭を上げる気配のない、男二人を宥めながら、みんなが集まっているという大広場に移動する。
それからは二人にとって怒涛の時間だっただろう。
広場についてみると、この集落にそれほどの人間がいたのかと思わされるほどに、大人数が忙しなく動き回っていた。
顔を合わせるたび、例外なく感謝の言葉を投げかけられ、二人が──主にフィーネが恥ずかしそうに対応する。
大体の人との挨拶も終わり、ある程度落ち着いてくると、多くの男たちが集落を出ていくのが確認できた。おそらく蛇の回収だろう。
蛇の回収が済み、とてつもなく大きかった蛇の死体は、その面影もないほどに分割されて運ばれていた。
その夜は蛇の肉を使い、集落総出での晩餐会となった。
集落の人間たちは二人への感謝と、久しぶりの肉を堪能し、フィーネは色んな料理を美味しそうに食べ歩いていた。
アリーシャはサマクらと話し込んでいたが、なにを話していたかはわからない。
空が暗くなり、気温が大分低くなってきた頃合いで晩餐会はお開きとなった。
「本当にもうでていくのか?」
晩餐会を終え、集落の人たちとも話しを終えると、アリーシャの発言で二人はそのまま集落を発つこととなった。
「ああ。これの充電も終わったからな」
「それ、電気で動いてたの?」
アリーシャが持つのは例の懐中時計型の機械。この砂漠に来てしまった元凶だ。
「電気とは違うが──そもそも私にもよくわからんのだ」
アリーシャが開発者としてあるまじき発言をすると、フィーネも不安な表情になる。
「せめて朝になってからでもいいと思うんだが……夜にこの砂漠を抜けるのは辛いぞ」
夜の砂漠は寒い。日中の高温と比べどちらの方が安全なのかは判断がつかないが、どちらも危険なことには変わりないだろう。
「安心してくれ。これでの移動はあまり時間や気候などは関係ないからな」
三人とも釈然としない風だが、実際に機械での移動を確認していなければ当然だろう。
そもそも立ち会った人間ですら、なんなのか分からないのだから。
「よく分からないが、気をつけてくれ」
サマクとシャモは不安そうにしつつも、二人なら大丈夫だろうと納得している様子だ。
オネは目を潤ませているが、二人に迷惑をかけないようにと励んでいるのが見てわかる。
「オネちゃん、大丈夫。私たちは強いから死んだりしないし、生きていればいつか会えるかもしれない。ね?」
「……私は大丈夫ですっ。お姉さんたち、頑張って……!」
色んな感情を抑えながら喋るオネの言葉は途切れ途切れで、その辛さがよくわかる。フィーネもその大きな瞳を若干潤ませている。
「オネちゃん、別れる時は涙じゃない。自分の一番の笑顔で見送るんだ!」
そう言って笑顔を見せるフィーネもまた、涙を抑え切れていない。
「──うんっ!」
オネの目から流された涙は、その感情を見て取れる。
しかし、その涙に反して彼女の見せる笑顔は、おそらく二人が見たオネの笑顔の中で最も輝いていたものだろう。
「さようなら、またいつか必ず!」
二人は別れを告げた後、寒い砂漠をある程度歩き、集落も目視できないあたりまできた。
「良かったんだな、助手くん」
「……寂しくないといえば嘘になるけど、私たちは元々この世界の人間じゃない。これが自然なことなんだよね?」
「……そうだな」
アリーシャが黒い腕輪をフィーネに渡す。
フィーネも、理解し腕輪をつける。……この腕輪はどこにもっていたのだろう。
「さあ、帰ろ。私たちの世界に」
「……? なにを言っているんだ助手くん。元の世界に戻る方法なんて知らないぞ。新たな世界へいくのだからな!」
「え? なにを──」
フィーネが問いかけると、言い切る前にアリーシャは機械の釦を押していた。
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