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魔の章 第六節
其ノ五 二つの世界
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「それで、リリーは何しにきたの」
全員が家の中に入り、リリーとアリーシャが落ち着いた所、未だにアリーシャはフィーネのことを眺め続けている。
イリスの問いに、リリーが彼女に詰め寄りながら答える。
「お姉様に会いに来たんですよ? たまにはお姉様と会っていないと死んじゃいますからぁ」
リリーの言葉に、イリスとルカが頭を抱えてため息をつく。
「リリー、本当にそんな理由で〝門〟を使ったのか? 前も言ったよな、あれは何度も使っていいものじゃない──」
「ルカ、あなたにだけは注意されたくないですよ。お姉様と一緒にいるためにこちらに留まっているあなたには!」
「…………っ」
リリーの言葉に、ルカが目を背け言葉を詰まらせる。
その様子を見ているイリスは、少し嬉しそうにしている。
「すまないのだが〝門〟というのはなんだ? 先ほどから会話に何度か出ているようだが」
会話に間が開いた機を逃さずアリーシャが、おそらくずっと思っていたであろう疑問を尋ねる。
「ん? ああ、そうか悪かったな」
「〝門〟は私とルカたちの世界を繋ぐ、転移魔法の一種」
「あれは魔法とは違う。機械の力だ」
「魔法」
イリスとルカが、お互いの意見を投げ合う中アリーシャは考え込む。
「ごめんなさい。どうしても気になったことが……」
フィーネは二人の言い合いに入り込み、質問を挟む。
「さっきの話を聞いていると、まるで世界が二つはあるように聞こえたんだけど……」
二人の言い合いが一度止まり、フィーネに視線が集まる。
「そう、今住むこの世界は魔法が発展した世界。そして、機械の発展した世界として、ルカとリリーの生まれた世界がある。……本当はもう一つあったけど、今はない」
アリーシャとフィーネにとって、あるいはとても重要な情報だろう。
元の世界に戻る手がかりが見つかるかも知れない。
「アリー……?」
フィーネが声をかけると、考え込んでいたアリーシャも、頷いて二人に向き直る。
「その〝門〟と世界について、話を聞いても?」
アリーシャの言葉に二人が頷く。
リリーはいつのまにか部屋の中からいなくなっていたが、誰も気づいた様子はない。
「それならまず、私たちの出会いから話した方がいい」
イリスがそう言うと、二人の冒険譚を話し始める。
イリス、ルカはこの世界の端、小さな島で出会った。
それからお互いの事情を話し、共に旅をすることとなったらしい。その旅の途中でリリーとは出会ったと言う。
ルカは元の世界に戻らなければならず、旅の中で探していた時見つけたのが、〝門〟だと言う。
〝門〟は明らかに人工的な建物であり、誰がなんの目的で建てたのか、その方法さえもわからなかったらしい。
その後はルカの世界に行き、そこでも色々とあったらしいが、二人はあまり詳しい話をしようとはしなかった。
どちらの世界の話も、フィーネたちの世界とはまた異なる世界であることは明らかだ。
「──と、そんな所。それからはここで二人で暮らしてる」
「色々と興味深い話だった。感謝する」
言い終えた二人が懐かしそうに、寂しそうに虚空を見つめる姿は、哀愁の漂うものだった。
「やはり、話を聞くだけでは情報が足りないな。できればその〝門〟とやらをみてみたいのだが……」
「そんなに遠くないし、見るだけならすぐに行ける」
イリスの発言にアリーシャは表情を明るくして、食い気味でイリスに詰め寄っていく。
「ならすぐに行こう! それほど不可思議な建物ならば是非見てみたい」
「少し暗いけど、今からなら──」
「おねぇさまぁー」
部屋から姿を消していたリリーが、奥の部屋から勢いよく走ってきた。そのすぐ後ろから、ガトと呼ばれた黒猫もついてきているようだが、なにか関係はあるのだろうか?
「ガトがいじめてくるんです!」
「……なにやったの」
リリーに泣き付かれて、イリスも嫌そうにはしているが引き離しはしないのは、なにを言っていても彼女のことを嫌いではない証拠だろう。
「なにもないですよぉ。ガトが寝ていたので、ちょちょっと耳を触らせてもらっただけですぅ」
一般的な飼い猫であれば、少々耳を触った程度で怒りはしないだろう。元よりリリーは懐かれていなかったと言うことだ。
「ガト、耳くらいなら──なに? ……そう、二人と。でも──わかった」
イリスは相変わらず、会話をするような間を置きながらガトに話しかけている。
「ごめんなさい二人とも。ガトが二人と話したいらしい」
「我々と?」
「話すって……え、本当にイリスさん、猫と喋ってたの?」
イリスは、フィーネの発言に不思議そうに首を傾げる。
『本当に僕のことを覚えていないのかい?』
「へ?」
声変わり前の少年のような声。しかし、音は外からではなくフィーネの頭の中から聞こえているようだ。
「今のは? その猫なのか?」
ガトは若干首を傾げながら、おすわりの体制で二人を見つめている。
「ガトは人の言葉がわかる。言葉も喋れるよ」
「私聞いたことないですけどねー!」
イリスが当たり前のように言うと、リリーが拗ねたようにガトに向かって舌を出す。
「それじゃ、なんか二人とだけ話したいらしいから。少し離れる」
「俺もガトの声なんか数回しか聞いたことないぞ……」
ルカは悔しそうに吐き捨てながら、弱々しい足取りで部屋を出ていく。それに続いてイリス、リリーも退室する。
「で、本当に君がさっきの声を?」
フィーネがガトに向かって尋ねた。
全員が家の中に入り、リリーとアリーシャが落ち着いた所、未だにアリーシャはフィーネのことを眺め続けている。
イリスの問いに、リリーが彼女に詰め寄りながら答える。
「お姉様に会いに来たんですよ? たまにはお姉様と会っていないと死んじゃいますからぁ」
リリーの言葉に、イリスとルカが頭を抱えてため息をつく。
「リリー、本当にそんな理由で〝門〟を使ったのか? 前も言ったよな、あれは何度も使っていいものじゃない──」
「ルカ、あなたにだけは注意されたくないですよ。お姉様と一緒にいるためにこちらに留まっているあなたには!」
「…………っ」
リリーの言葉に、ルカが目を背け言葉を詰まらせる。
その様子を見ているイリスは、少し嬉しそうにしている。
「すまないのだが〝門〟というのはなんだ? 先ほどから会話に何度か出ているようだが」
会話に間が開いた機を逃さずアリーシャが、おそらくずっと思っていたであろう疑問を尋ねる。
「ん? ああ、そうか悪かったな」
「〝門〟は私とルカたちの世界を繋ぐ、転移魔法の一種」
「あれは魔法とは違う。機械の力だ」
「魔法」
イリスとルカが、お互いの意見を投げ合う中アリーシャは考え込む。
「ごめんなさい。どうしても気になったことが……」
フィーネは二人の言い合いに入り込み、質問を挟む。
「さっきの話を聞いていると、まるで世界が二つはあるように聞こえたんだけど……」
二人の言い合いが一度止まり、フィーネに視線が集まる。
「そう、今住むこの世界は魔法が発展した世界。そして、機械の発展した世界として、ルカとリリーの生まれた世界がある。……本当はもう一つあったけど、今はない」
アリーシャとフィーネにとって、あるいはとても重要な情報だろう。
元の世界に戻る手がかりが見つかるかも知れない。
「アリー……?」
フィーネが声をかけると、考え込んでいたアリーシャも、頷いて二人に向き直る。
「その〝門〟と世界について、話を聞いても?」
アリーシャの言葉に二人が頷く。
リリーはいつのまにか部屋の中からいなくなっていたが、誰も気づいた様子はない。
「それならまず、私たちの出会いから話した方がいい」
イリスがそう言うと、二人の冒険譚を話し始める。
イリス、ルカはこの世界の端、小さな島で出会った。
それからお互いの事情を話し、共に旅をすることとなったらしい。その旅の途中でリリーとは出会ったと言う。
ルカは元の世界に戻らなければならず、旅の中で探していた時見つけたのが、〝門〟だと言う。
〝門〟は明らかに人工的な建物であり、誰がなんの目的で建てたのか、その方法さえもわからなかったらしい。
その後はルカの世界に行き、そこでも色々とあったらしいが、二人はあまり詳しい話をしようとはしなかった。
どちらの世界の話も、フィーネたちの世界とはまた異なる世界であることは明らかだ。
「──と、そんな所。それからはここで二人で暮らしてる」
「色々と興味深い話だった。感謝する」
言い終えた二人が懐かしそうに、寂しそうに虚空を見つめる姿は、哀愁の漂うものだった。
「やはり、話を聞くだけでは情報が足りないな。できればその〝門〟とやらをみてみたいのだが……」
「そんなに遠くないし、見るだけならすぐに行ける」
イリスの発言にアリーシャは表情を明るくして、食い気味でイリスに詰め寄っていく。
「ならすぐに行こう! それほど不可思議な建物ならば是非見てみたい」
「少し暗いけど、今からなら──」
「おねぇさまぁー」
部屋から姿を消していたリリーが、奥の部屋から勢いよく走ってきた。そのすぐ後ろから、ガトと呼ばれた黒猫もついてきているようだが、なにか関係はあるのだろうか?
「ガトがいじめてくるんです!」
「……なにやったの」
リリーに泣き付かれて、イリスも嫌そうにはしているが引き離しはしないのは、なにを言っていても彼女のことを嫌いではない証拠だろう。
「なにもないですよぉ。ガトが寝ていたので、ちょちょっと耳を触らせてもらっただけですぅ」
一般的な飼い猫であれば、少々耳を触った程度で怒りはしないだろう。元よりリリーは懐かれていなかったと言うことだ。
「ガト、耳くらいなら──なに? ……そう、二人と。でも──わかった」
イリスは相変わらず、会話をするような間を置きながらガトに話しかけている。
「ごめんなさい二人とも。ガトが二人と話したいらしい」
「我々と?」
「話すって……え、本当にイリスさん、猫と喋ってたの?」
イリスは、フィーネの発言に不思議そうに首を傾げる。
『本当に僕のことを覚えていないのかい?』
「へ?」
声変わり前の少年のような声。しかし、音は外からではなくフィーネの頭の中から聞こえているようだ。
「今のは? その猫なのか?」
ガトは若干首を傾げながら、おすわりの体制で二人を見つめている。
「ガトは人の言葉がわかる。言葉も喋れるよ」
「私聞いたことないですけどねー!」
イリスが当たり前のように言うと、リリーが拗ねたようにガトに向かって舌を出す。
「それじゃ、なんか二人とだけ話したいらしいから。少し離れる」
「俺もガトの声なんか数回しか聞いたことないぞ……」
ルカは悔しそうに吐き捨てながら、弱々しい足取りで部屋を出ていく。それに続いてイリス、リリーも退室する。
「で、本当に君がさっきの声を?」
フィーネがガトに向かって尋ねた。
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