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魔の章 第六節
其ノ七 門
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「お姉様どうしたんですか? 元気ないですよ?」
リリーも含め、五人は現在イリスたちの言う〝門〟に向かっている。
先頭にイリス、それにくっつくようにリリー。
その後ろにルカとアリーシャが話しながらついていき、最後にフィーネという順番で並んでいるのだが……イリスとフィーネはあまりいい顔をしていない。
その理由ははっきりとしており、ルカとアリーシャの関係だろう。
どうやら二人は昨晩から延々と話し続けているらしい。それそこ、一夜の間同じ部屋で、だ。
イリスとルカの関係がどれほど深いのかは分からない。
しかし、この状況でイリスが二人に良い思いをしないことは明らかであり、そんな状況を最後尾から眺めているフィーネも、どういう感情でいればいいのか分からないのだろう。
「フィーさんどうしましょう。お姉様は話してくれず、二人はずっと訳のわからない話を続けている……私、いたたまれないです」
「うん。私もわからない」
フィーネとリリーに関しては、ただただ被害者でしか無い状況だ。
「〝門〟が見えた」
イリスの発言で、全員が視線を向ける。
主な背景は変わらず木々が並んでいるだけだが、五人の立つその目先には大きな湖畔がある。
日の光に当てられて青白く輝くその湖畔の先、木が不自然に切り開かれた空間があった。
その空間の中、艶のない真黒な建物がある。その質感は鉱石というよりも金属に近く、明らかに人工物だろう。
これが、三人の言う〝門〟と呼ばれた建物であることは間違いなさそうだ。
「壮観だな。まさしく技術の塊と言った所か。中を見るのが楽しみだ」
ルカと話していたアリーシャも、目の前に現れた興味の対象には目を輝かせている。
アリーシャとの会話を中断し、〝門〟のさらにその奥を見るような、遠い目をするルカの様子は、とても寂しそうだ
「中を見るのは構わない。使えないけど」
「ほう。なにか問題があるのか?」
イリスがアリーシャの顔を少しの間眺め、〝門〟に視線を戻す。
「……一度使うと、一年は使えなくなる。リリーのせい」
「お姉様ひどいです! 私はお姉様に会いたくてしかたなかったというのに……!」
イリスに怒って見せるリリーは、駄々をこねる子供のようだ。
「そうか、残念だな」
アリーシャはかなり残念がっているが、仮に使用できたとして、使っていたのだろうか。
「とりあえず中を見学させてもらおうか」
そう言いながら、アリーシャは〝門〟の入り口らしき四角い穴の中に入っていく。それに続いて、他の四人も順々に入っていった。
中に入り最初に視界に入るのは、外観とは反対にあらゆる色で彩られたその多くの溝だろう。
赤、緑、青、水、黄……他にもまだまだ多くの色が、幾何学模様を創り出している
所々、その溝が集まり円を作っている。その円に関してはおそらく、全ての色が混ざっているのか暗い虹のような色をどんよりと写している。
さらにその周辺には正方形の釦のようなものがあるが、用途は分からない。
イリスとリリーは、その空間の中でも、すべての光の集まる場所、部屋の最奥にあり眩く光る空間に座っていた。
ルカ、アリーシャに関しては入り口に最も近い円を見ながら、なにやら話し込んでいる。
「……つまらない」
アリーシャたちの行動を観察しながら、イリスが呟く。
「つまらないなら相手してくださいよ、お姉様ー」
「……めんどくさい」
空気を読まないリリーの言動に若干苛つきつつ、無愛想に返す。
しかし、ルカとアリーシャの行動はイリスからすれば目に余るだろう。
イリスが二人に向けるその視線は鋭く、彼女の怒りの度合いがよくわかる。
アリーシャとルカの声だけが、その狭い空間に響いており、フィーネはいたたまれないのかひたすら歩き続けている。
リリーは落ち着きがなく、一人右往左往しながら、たまにイリスに近づき追い返されている。
そんな空気の中、壁沿いに説明を続けていた二人が、イリスの前まで来ると足を止めた。
「ここがこの〝門〟の起動部分だ。イリス、ちょっといいか?」
ルカが声をかけると、イリスが二人を思い切り睨み返す。
しかし、この二人にはその感情を理解する器量はないだろう。
「……なに」
「いや、転移台を見たいと思ってな」
「…………そう」
語気を強くしながら、思い切り立ち上がりその台座から腰を上げた。
「悪いな。……これがこの〝門〟での最も重要な空間だ」
「……ここから君たちの言う、機械の世界とやらにいけると言うことか」
イリスが離れたのを確認すると、すぐに二人で話し始める。
そんな様子を真後ろで見ているイリスの表情は無表情だ。今の感情が判断できない。
「フィーさんどうしましょう。あれ、お姉様めちゃくちゃ怒ってますよぉ?」
落ち着きのなかったリリーがフィーネに近づき、焦ったように尋ねてくるが、彼女自身も困惑しているこの状況では、なにもできるはずもない。
「ふむ……大体理解した。〝門〟の機構、そして私との因果関係もな」
「なんだ? 因果関係……?」
「ああ……気にしなくていい」
アリーシャはそう返しながら、フィーネに視線を送る。
フィーネはその意図を汲み取りはしたようだが、それどころじゃないと首を横に振って返す。……すでにアリーシャは見ていなかった。
「皆が良ければこれで帰ろう」
「アリーシャの気が済んだなら俺は構わないが……俺の知ってることを簡単に説明しただけなんだけどな……」
ルカがアリーシャの理解力に嫉妬したのか、悔しそうにため息をついた。
「……かえる」
「私もこんなとこ長居したくないですー。帰りましょ!」
「……うん、かえろ」
意見は当然のように一致し、フィーネたちから順々に〝門〟から退出していく。
フィーネの表情はひどく疲れた様子だった。
リリーも含め、五人は現在イリスたちの言う〝門〟に向かっている。
先頭にイリス、それにくっつくようにリリー。
その後ろにルカとアリーシャが話しながらついていき、最後にフィーネという順番で並んでいるのだが……イリスとフィーネはあまりいい顔をしていない。
その理由ははっきりとしており、ルカとアリーシャの関係だろう。
どうやら二人は昨晩から延々と話し続けているらしい。それそこ、一夜の間同じ部屋で、だ。
イリスとルカの関係がどれほど深いのかは分からない。
しかし、この状況でイリスが二人に良い思いをしないことは明らかであり、そんな状況を最後尾から眺めているフィーネも、どういう感情でいればいいのか分からないのだろう。
「フィーさんどうしましょう。お姉様は話してくれず、二人はずっと訳のわからない話を続けている……私、いたたまれないです」
「うん。私もわからない」
フィーネとリリーに関しては、ただただ被害者でしか無い状況だ。
「〝門〟が見えた」
イリスの発言で、全員が視線を向ける。
主な背景は変わらず木々が並んでいるだけだが、五人の立つその目先には大きな湖畔がある。
日の光に当てられて青白く輝くその湖畔の先、木が不自然に切り開かれた空間があった。
その空間の中、艶のない真黒な建物がある。その質感は鉱石というよりも金属に近く、明らかに人工物だろう。
これが、三人の言う〝門〟と呼ばれた建物であることは間違いなさそうだ。
「壮観だな。まさしく技術の塊と言った所か。中を見るのが楽しみだ」
ルカと話していたアリーシャも、目の前に現れた興味の対象には目を輝かせている。
アリーシャとの会話を中断し、〝門〟のさらにその奥を見るような、遠い目をするルカの様子は、とても寂しそうだ
「中を見るのは構わない。使えないけど」
「ほう。なにか問題があるのか?」
イリスがアリーシャの顔を少しの間眺め、〝門〟に視線を戻す。
「……一度使うと、一年は使えなくなる。リリーのせい」
「お姉様ひどいです! 私はお姉様に会いたくてしかたなかったというのに……!」
イリスに怒って見せるリリーは、駄々をこねる子供のようだ。
「そうか、残念だな」
アリーシャはかなり残念がっているが、仮に使用できたとして、使っていたのだろうか。
「とりあえず中を見学させてもらおうか」
そう言いながら、アリーシャは〝門〟の入り口らしき四角い穴の中に入っていく。それに続いて、他の四人も順々に入っていった。
中に入り最初に視界に入るのは、外観とは反対にあらゆる色で彩られたその多くの溝だろう。
赤、緑、青、水、黄……他にもまだまだ多くの色が、幾何学模様を創り出している
所々、その溝が集まり円を作っている。その円に関してはおそらく、全ての色が混ざっているのか暗い虹のような色をどんよりと写している。
さらにその周辺には正方形の釦のようなものがあるが、用途は分からない。
イリスとリリーは、その空間の中でも、すべての光の集まる場所、部屋の最奥にあり眩く光る空間に座っていた。
ルカ、アリーシャに関しては入り口に最も近い円を見ながら、なにやら話し込んでいる。
「……つまらない」
アリーシャたちの行動を観察しながら、イリスが呟く。
「つまらないなら相手してくださいよ、お姉様ー」
「……めんどくさい」
空気を読まないリリーの言動に若干苛つきつつ、無愛想に返す。
しかし、ルカとアリーシャの行動はイリスからすれば目に余るだろう。
イリスが二人に向けるその視線は鋭く、彼女の怒りの度合いがよくわかる。
アリーシャとルカの声だけが、その狭い空間に響いており、フィーネはいたたまれないのかひたすら歩き続けている。
リリーは落ち着きがなく、一人右往左往しながら、たまにイリスに近づき追い返されている。
そんな空気の中、壁沿いに説明を続けていた二人が、イリスの前まで来ると足を止めた。
「ここがこの〝門〟の起動部分だ。イリス、ちょっといいか?」
ルカが声をかけると、イリスが二人を思い切り睨み返す。
しかし、この二人にはその感情を理解する器量はないだろう。
「……なに」
「いや、転移台を見たいと思ってな」
「…………そう」
語気を強くしながら、思い切り立ち上がりその台座から腰を上げた。
「悪いな。……これがこの〝門〟での最も重要な空間だ」
「……ここから君たちの言う、機械の世界とやらにいけると言うことか」
イリスが離れたのを確認すると、すぐに二人で話し始める。
そんな様子を真後ろで見ているイリスの表情は無表情だ。今の感情が判断できない。
「フィーさんどうしましょう。あれ、お姉様めちゃくちゃ怒ってますよぉ?」
落ち着きのなかったリリーがフィーネに近づき、焦ったように尋ねてくるが、彼女自身も困惑しているこの状況では、なにもできるはずもない。
「ふむ……大体理解した。〝門〟の機構、そして私との因果関係もな」
「なんだ? 因果関係……?」
「ああ……気にしなくていい」
アリーシャはそう返しながら、フィーネに視線を送る。
フィーネはその意図を汲み取りはしたようだが、それどころじゃないと首を横に振って返す。……すでにアリーシャは見ていなかった。
「皆が良ければこれで帰ろう」
「アリーシャの気が済んだなら俺は構わないが……俺の知ってることを簡単に説明しただけなんだけどな……」
ルカがアリーシャの理解力に嫉妬したのか、悔しそうにため息をついた。
「……かえる」
「私もこんなとこ長居したくないですー。帰りましょ!」
「……うん、かえろ」
意見は当然のように一致し、フィーネたちから順々に〝門〟から退出していく。
フィーネの表情はひどく疲れた様子だった。
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