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事例 壱 『コウシュ村』
弍拾玖
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足の速いアレから正攻法で逃げ切るのは無理だと判断した僕は、何とか機会がないかと走りながら辺りを見回した。
すると幾つかの角を曲がったすぐに、アレから一瞬の死角に入りそうな鳥居を見つけた。
すぐさまそれをくぐり、その先にあったお地蔵様像と塀の間に蹲って隠れる。
ゼーハー息を切らす音すら立てられない状況で、とにかく今は近くを彷徨いている『如何にも幽霊』から逃げ延びることを第一に考えなければ。
手で塞いだ口から音を立てないように呼吸し、とにかく耳に全神経を集中させる。
ペチャッ……ピチャッ……ポタポタッ……
どうやらアレはあっちに行ったりこっちに行ったり、この鳥居の近くを彷徨いているらしい。一向に遠ざかる気配を感じられない。
「っ……」
もうこうなったら調べものウンヌンには手が回せられない。己の命を守るべく逃げ仰せなければ。その意識だけで物事を考えていく。
「……?」
何かないか、と見える範囲を目で追うと、数メートル先の塀に真っ黒なモノがこびりついて見えた。
何故だろうか、僕はそれが『抜け穴』と知っている。以前ここから抜け出した気がするのだ。
あれ、この村には来たことがないのに、何故ここから抜け出した……? なんだ、なんだ、俺は、僕は……
そう混乱している間にも、嫌な音は響く。
ピチャ……アァ……ドコダ……
ココ力……
いや、今はそんなことを考えている暇はない。生き延びることが第一だから。
アレが立てる音が鳥居の前からずっと聞こえるようになってきたし、猶予はない、ということなのだろうか。
とにかく今はあの穴から抜け出して、そして、安全な場所にでも逃げ込んでからアレコレ考えても遅くはない。
(よし!)
雪を踏み締める足音を絶対立てないように、ユゥックリ、ユゥックリと動く。
ドコダ……コロシテヤル……
依然としてアレの声は鳥居の前で僕を探しているようで、ユックリ動かなければならない中、早く逃げ切りたい焦燥感にどんどん苛まれていく。
(よし、もう少し!)
そしてあともう二、三歩で穴に辿り着くところで、そんな気の緩みも相まって『サクッ』と雪を踏む足音を立ててしまった。
「ソコカァ……!!!」
アレにも居場所がバレ、こちらに向かって走ってくるのがこの目にも映る。
とにかくどこに出るか分からないが、一か八かこの穴をくぐるしかないだろう。這う這うでその穴を通り抜けると、その先は意外にも意外、森だった。
「アアァアアァァア!!!」
叫び声が聞こえてきたので振り返ってみると、アレも四つん這いで穴を抜けようとしていたのが見えた。
それがいつか見たホラー映画のようで、追い立てられる恐怖で胃から何かが出てしまいそうだった。
まあ、そんなこともしていられない状況なのだが。上がってくるブツを胃の中に収め、逃げの体勢になったその時。
シャンシャン……ピヨヨ~?……ドンドコドン!
アレにばかり気を向けていたからこそ、囃子隊の接近を許してしまったらしい。
「しまった!」
今まで全くと言っていいほど音も聞こえなかったから、油断してしまった。もう囃子隊は僕に手が届くくらいの範囲に迫ってきている。なんなら俺、囲まれている気がする。
シャンシャン……アアァア!……ドンドコ……ピヨヨ~?
囃子隊とアレに四方八方を囲まれ、万事休す。逃げるにも逃げられず、こちらに伸ばされる手を振り払うこともできず。
気の抜けた笛の音だけが最後に耳に残った。
すると幾つかの角を曲がったすぐに、アレから一瞬の死角に入りそうな鳥居を見つけた。
すぐさまそれをくぐり、その先にあったお地蔵様像と塀の間に蹲って隠れる。
ゼーハー息を切らす音すら立てられない状況で、とにかく今は近くを彷徨いている『如何にも幽霊』から逃げ延びることを第一に考えなければ。
手で塞いだ口から音を立てないように呼吸し、とにかく耳に全神経を集中させる。
ペチャッ……ピチャッ……ポタポタッ……
どうやらアレはあっちに行ったりこっちに行ったり、この鳥居の近くを彷徨いているらしい。一向に遠ざかる気配を感じられない。
「っ……」
もうこうなったら調べものウンヌンには手が回せられない。己の命を守るべく逃げ仰せなければ。その意識だけで物事を考えていく。
「……?」
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あれ、この村には来たことがないのに、何故ここから抜け出した……? なんだ、なんだ、俺は、僕は……
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ピチャ……アァ……ドコダ……
ココ力……
いや、今はそんなことを考えている暇はない。生き延びることが第一だから。
アレが立てる音が鳥居の前からずっと聞こえるようになってきたし、猶予はない、ということなのだろうか。
とにかく今はあの穴から抜け出して、そして、安全な場所にでも逃げ込んでからアレコレ考えても遅くはない。
(よし!)
雪を踏み締める足音を絶対立てないように、ユゥックリ、ユゥックリと動く。
ドコダ……コロシテヤル……
依然としてアレの声は鳥居の前で僕を探しているようで、ユックリ動かなければならない中、早く逃げ切りたい焦燥感にどんどん苛まれていく。
(よし、もう少し!)
そしてあともう二、三歩で穴に辿り着くところで、そんな気の緩みも相まって『サクッ』と雪を踏む足音を立ててしまった。
「ソコカァ……!!!」
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とにかくどこに出るか分からないが、一か八かこの穴をくぐるしかないだろう。這う這うでその穴を通り抜けると、その先は意外にも意外、森だった。
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囃子隊とアレに四方八方を囲まれ、万事休す。逃げるにも逃げられず、こちらに伸ばされる手を振り払うこともできず。
気の抜けた笛の音だけが最後に耳に残った。
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