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目を凝らしてよく見れば、蜘蛛の一匹一匹が大型犬より一回り大きいくらいの巨大な蜘蛛で、移動速度は遅そうだけど、あんなのに捕まったら生きては帰れないというのは僕でも分かる。
「リッカルド! 今から僕が逃げ道を作るから、君はリアム君を頼む!」
メルヴィン先輩はそう言うと周囲を見回して出口となる通路を見付けると、そちらへ右手を突き出す。
「第四封印魔法解除――『炎』!」
右手を左から右へとなぎ払うように振ると、メルヴィン先輩の前方にた蜘蛛達が突然地面から噴き出た炎によって焼かれていくのが見えた。
キーキーッ! という鳴き声を出しながら、天井や通路の周りを塞ぐようにしていた蜘蛛達が散っていく。
「す、凄い……」
「今だっ、俺に付いて来い、リアム!」
「あ、はいっ!」
駆け出したリッカルド先輩の後を慌てて走る。
向かう先はまだ勢いよく炎が渦巻いているけど、僕達の後ろを走っているメルヴィン先輩が薄い膜のようなシールドを僕達に付けてくれたので、安全にその中を走ることが出来た。
炎に焼かれながらも僕達に向かってこようとする蜘蛛を、リッカルド先輩が剣に魔法を纏わせながら切り裂いていく。
全速力で走りながら、体術の授業で吐くまで毎日強制的に走らされている理由が分かった気がした。
ダンジョンに入ってもしものことがあった時、体力がなければ今のように走って逃げられないからだ。
学園に戻ったら、もっと走り込みをしようと心の中で誓いながら全力疾走をし続けた。
広い通路のようなところを三人でしばらく走り続け、蜘蛛以外の昆虫系の魔獣を二人の先輩達が倒しながら先が見えない道を進む。
どこに向かっているのか分からないけど、それでも立ち止まれない。
それでもそろそろ酸欠で意識がなくなりそうになってきたところで、ようやくリッカルド先輩が立ち止まる。
三人揃って荒い息を吐きながら、ある意味満身創痍だった。
僕は地面に崩れ落ち、両手を地面についてなんとか倒れるのを防ぐことが出来ている状態だったけど、メルヴィン先輩は地面に座って天井を仰ぐようにして目を閉じ、リッカルド先輩は剣を地面に突き刺して寄りかかるようにしながら何とか立っている状態だった。
「はぁっ、はぁ、はぁっ……リッカルド」
「っ、なに?」
「ちょっと、ヤバいことに気付いたんだけど」
「……これ以上にヤバいことってあるか?」
嫌なことを聞いたと顔を顰めるリッカルド先輩に、メルヴィン先輩は胸元からネックレスを取り出して「召喚使を何度も呼んでるのに、出てこないんだ」と言う。
「えっ、嘘だろ……」
「リッカルド、君は召喚魔を呼べる?」
「俺のは……あ、ダメかも」
自分の右腕にあるブレスレットに触れて召喚魔を呼ぶも、リッカルド先輩も呼べないみたいだった。
どうやら二人は『第九十九等級』の召喚使と『第九十五等級』の召喚魔がいるみたいで、召喚使・魔の依り代となるネックレスやブレスレットを持っていた。
「これは……キツイな」
「召喚使がいないから、封印魔法をこれ以上連発出来ないかも」
「俺もあいつがいないとこれ以上連続して魔法を使うのは躊躇うな。ここがどんなダンジョンなのかサッパリ分かんねーから、魔力は温存したい」
「そうだね。あ、そろそろ『浄化薬』を摂取した方がいい時間だな。それと体力を回復させる魔法薬も飲んでおこう。次にまた何が起こるか分からないから」
「はい」
言われた通りに浄化薬と体力回復薬を飲み、疲弊していた状態を戻す。
怖くて心臓がドクドクと脈打っているのを気付かない振りをしながら、顎に垂れてきていた汗を腕で拭って立ち上がり、先輩達の次の指示を待つ。
「これからどうしようか、リッカルド」
「ここにいても、また俺達の匂いを嗅ぎ付けた魔獣共が近寄ってくるはずだ。きっとどこかに外との連絡が繋がるを取れる場所があるはずだから、そこに……」
「っんぐ!?」
先輩達の話を静かに聞いていた時、突然背中にドスッ、ドスッという衝撃が襲ってきた。
「リッカルド! 今から僕が逃げ道を作るから、君はリアム君を頼む!」
メルヴィン先輩はそう言うと周囲を見回して出口となる通路を見付けると、そちらへ右手を突き出す。
「第四封印魔法解除――『炎』!」
右手を左から右へとなぎ払うように振ると、メルヴィン先輩の前方にた蜘蛛達が突然地面から噴き出た炎によって焼かれていくのが見えた。
キーキーッ! という鳴き声を出しながら、天井や通路の周りを塞ぐようにしていた蜘蛛達が散っていく。
「す、凄い……」
「今だっ、俺に付いて来い、リアム!」
「あ、はいっ!」
駆け出したリッカルド先輩の後を慌てて走る。
向かう先はまだ勢いよく炎が渦巻いているけど、僕達の後ろを走っているメルヴィン先輩が薄い膜のようなシールドを僕達に付けてくれたので、安全にその中を走ることが出来た。
炎に焼かれながらも僕達に向かってこようとする蜘蛛を、リッカルド先輩が剣に魔法を纏わせながら切り裂いていく。
全速力で走りながら、体術の授業で吐くまで毎日強制的に走らされている理由が分かった気がした。
ダンジョンに入ってもしものことがあった時、体力がなければ今のように走って逃げられないからだ。
学園に戻ったら、もっと走り込みをしようと心の中で誓いながら全力疾走をし続けた。
広い通路のようなところを三人でしばらく走り続け、蜘蛛以外の昆虫系の魔獣を二人の先輩達が倒しながら先が見えない道を進む。
どこに向かっているのか分からないけど、それでも立ち止まれない。
それでもそろそろ酸欠で意識がなくなりそうになってきたところで、ようやくリッカルド先輩が立ち止まる。
三人揃って荒い息を吐きながら、ある意味満身創痍だった。
僕は地面に崩れ落ち、両手を地面についてなんとか倒れるのを防ぐことが出来ている状態だったけど、メルヴィン先輩は地面に座って天井を仰ぐようにして目を閉じ、リッカルド先輩は剣を地面に突き刺して寄りかかるようにしながら何とか立っている状態だった。
「はぁっ、はぁ、はぁっ……リッカルド」
「っ、なに?」
「ちょっと、ヤバいことに気付いたんだけど」
「……これ以上にヤバいことってあるか?」
嫌なことを聞いたと顔を顰めるリッカルド先輩に、メルヴィン先輩は胸元からネックレスを取り出して「召喚使を何度も呼んでるのに、出てこないんだ」と言う。
「えっ、嘘だろ……」
「リッカルド、君は召喚魔を呼べる?」
「俺のは……あ、ダメかも」
自分の右腕にあるブレスレットに触れて召喚魔を呼ぶも、リッカルド先輩も呼べないみたいだった。
どうやら二人は『第九十九等級』の召喚使と『第九十五等級』の召喚魔がいるみたいで、召喚使・魔の依り代となるネックレスやブレスレットを持っていた。
「これは……キツイな」
「召喚使がいないから、封印魔法をこれ以上連発出来ないかも」
「俺もあいつがいないとこれ以上連続して魔法を使うのは躊躇うな。ここがどんなダンジョンなのかサッパリ分かんねーから、魔力は温存したい」
「そうだね。あ、そろそろ『浄化薬』を摂取した方がいい時間だな。それと体力を回復させる魔法薬も飲んでおこう。次にまた何が起こるか分からないから」
「はい」
言われた通りに浄化薬と体力回復薬を飲み、疲弊していた状態を戻す。
怖くて心臓がドクドクと脈打っているのを気付かない振りをしながら、顎に垂れてきていた汗を腕で拭って立ち上がり、先輩達の次の指示を待つ。
「これからどうしようか、リッカルド」
「ここにいても、また俺達の匂いを嗅ぎ付けた魔獣共が近寄ってくるはずだ。きっとどこかに外との連絡が繋がるを取れる場所があるはずだから、そこに……」
「っんぐ!?」
先輩達の話を静かに聞いていた時、突然背中にドスッ、ドスッという衝撃が襲ってきた。
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