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第3章

今を変える方法です

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 簡単な自己紹介を終え、服も乾いたので私達は探索を開始することになりました。

 と言っても、アカネさんとミリアさんを救い出す方法はまだ見つからないままです。

 無作為に動いて相手を刺激するのも悪手です。
 ここは慎重に動かなければ二人が危ない。

 それはわかっているのですが、やはり気持ちは焦ってしまいますよね。



『そこで私の出番よ!』

 シルフィードは胸を張り、ドヤ顔で『任せてちょうだい』と言いました。

 何か、現状を打破するような策があるのでしょうか?
 
『私とディーネの力を合わせれば、正解の扉を見つけることくらいはできるわよ』

 それは願ってもいない言葉です。

「どうやってか、方法を聞いても?」

『私は空と風の支配者だけれど、空間に関する事柄にも少しは通じているの。その私と、魔力の流れを誰よりも敏感に読み取ることができるディーネがいれば、亜空間に繋がる正解の扉を見つけ出せるってわけ』

 ウンディーネ曰く、亜空間に繋がるゲートはどこかにあるようです。
 しかし、こちらを惑わすためにフェイクのゲートがいくつも散りばめられており、どれが正解かわからない。そのため、魔力の淀みがある場所をしらみ潰しに調べて行くしかないと思っていました。


 それが一発でわかるようになる。
 それに加えて、ゲートの開通も可能と。


「……素晴らしい助っ人ですね」

 原初の精霊とだけでも強力な助っ人が出てきたと思っていましたが、まさか本当に現状を変えるだけの方法を知っているとは思いませんでした。

 本当に、ありがたいことです。

『私だけではなく、空間の精霊がいればもっと楽だったのだけれど……あの子はすっごい臆病で、絶対に人前には出ようとしないのよね』

「そんな精霊もいるのですね……一度、会ってみたいです」


 と、背後から強い視線を感じました。


『…………むぅ、リーフィア……それはどういう意味?』

 ウンディーネがこちらを睨んでいます。
 会ってみたいの一言で、変な勘違いをしちゃったみたいですね。

 嫉妬深いウンディーネも、いい。

「違いますよ。別にやましい思惑があってのことではありません。空間の精霊となれば、私の持つスキルと何らかの関係性があるのかなと、そう思っただけです」


 【マジックボックス】は神から与えられたスキルで、亜空間に物を収納することができます。
 ですが、この世界にはそのスキルとは別に【収納】という魔法もあると聞きました。それは空間魔法と呼ばれ、扱いがとても難しいらしく、【収納】を得ている者は珍しいのだとか。

 アカネさんからそんな話を聞いた時は「へぇーそうなのかー」と適当に受け取っていましたが、魔法が全て精霊による影響なのだと知った今、どの元素にも属さない特殊な精霊に興味を示しました。


『……本当?』

「ええ、本当ですよ。ウンディーネとアカネ以外に恋愛感情は抱きません。信じてください」

『…………わかった。リーフィアを、信じる』

 可愛い可愛い私の精霊は、今日も最高に可愛いです。
 語彙力が著しく低下していますが、仕方ないと思いましょう。


『ふふっ、泣き虫で人見知りだったディーネがここまで心を許すなんて……何千年と生きてきて、初めて見たわ』

「最初は酷かったですよ。私を呼んだくせに近づかないでと言ってくるし、会話もままならないし……まぁ、それで保護欲を掻き立てられて、今日も今日とて愛でたい気持ちでいるのですが」

『最高のマスターに出会えたみたいで、友人として安心したわ。ディーネは純粋で騙されやすいから、いつか変な男に引っかからないかと心配していたのよ』

「あ、それわかります。すっごい純情ですよね。その反応が可愛すぎて、つい苛めてしまいます」



 不意に頭上が冷気で満たされました。
 私とシルフィードは同時に咳払いして、すかさず別の話題に切り替えました。



「シルフィの申し出は、正直ありがたいです。ぜひ協力していただけますか?」

『私が言うのもなんだけど、そんな簡単に信じていいの? 騙そうとしているかもしれないわよ?』

 それを自分で言いますかと、私は苦笑します。
 まぁ、彼女からすれば、私が初対面の相手を簡単に信じたと思うでしょう。

 ですが、私はそんな単純な女ではありません。
 ちゃんとした理由があって、シルフィードを信じたのです。

「信じますよ、だって──」

 握りこぶしを作り、強い口調で言い切りました。



「ウンディーネを好きな人に、悪い人はいませんから!」

 瞬間、私の頭上に大規模の水球が落ちました。
 あり得ないほどの質量に、首が逝きかけたのは内緒です。


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