フローラルの香りを纏うみらい――喪失の先で出会った、優しすぎる恋

一年前、最愛の兄を交通事故で亡くした高校一年生・立原なつき。

大切な人を失ったあの日から、なつきの時間はどこか止まったままだった。

迎えた命日。

兄との思い出が詰まった公園で、なつきは一人の青年と出逢う。

どこか哀しみを纏った大学一年生・辻はやて。

初対面のはずなのに――

次の瞬間、はやてはなつきを強く抱きしめた。

理由も分からないまま戸惑うなつき。

けれどその温もりは、不思議と拒めなかった。

やがて知る。

はやてもまた、同じ事故で最愛の弟を失っていたことを。

重なる喪失。
行き場のない痛み。

言葉にできない想いを抱えたまま、それでも二人は少しずつ距離を縮めていく。

泣いてしまう自分を、否定せず受け止めてくれるはやて。

そっと寄り添い、当たり前のように手を差し伸べてくるその優しさに、なつきの心は次第に惹かれていった。

けれど同時に、怖かった。
また、大切な人を失うかもしれないという恐怖が、胸の奥に消えずに残っていた。

そんな中で明かされる、はやての想い。
彼が幼い頃からずっと想い続けてきた相手が――なつき自身であったという事実。

まっすぐに向けられる想いに、戸惑いながらも心が揺れる。

けれど、自分にはそんな想いを受け止める資格があるのかと、なつきは立ち止まってしまう。

好きなのに、怖い。

離れたくないのに、近づくほどに失う未来を想像してしまう。

自信のなさから、思わずはやてを拒んでしまうなつき。

それでもはやては、何度でも手を伸ばしてくる。

――まるで、もう二度と離さないと誓うように。

一方で、親友・蓮が下した決断。

そして、はやての弟が遺していた想い。

それぞれの胸に残された大切な記憶が、少しずつ二人の背中を押していく。

過去に縛られたままでは、前には進めない。

それでも、忘れることなんてできない。
だからこそ――

失ったものを抱えたまま、それでも誰かを愛することを選ぶ。

すれ違いながらも重なっていく想いの先で、

二人は“あの日”を乗り越えるため、もう一度歩き出す。

これは、喪失の痛みを抱えたまま、それでも誰かを想うことをやめられなかった二人のピュアな優しい恋の物語。
24h.ポイント 313pt
0
小説 4,992 位 / 220,349件 BL 1,069 位 / 30,661件

あなたにおすすめの小説

愛さないと言われた妻、侍女と出て行く

菜花
ファンタジー
お前を愛することはないと夫に言われたコレットは、その日のうちに侍女のイネスと屋敷を出て行った。カクヨム様でも投稿しています。

わたくしの婚約者が病弱な幼馴染に縋り付かれた…あれ?

ぼん@ぼおやっじ
恋愛
ある日私の婚約者に幼馴染から連絡が来ました。 病気にかかって心細いから会いたいというのです。 これって最近聞いた… 私たち死一体どうなってしまうのでしょう…

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

何もしなかっただけです

希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。 それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。 ――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。 AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
【第19回恋愛小説大賞】で奨励賞を頂きました。投票して下さった皆様、読んで下さった皆様、本当にありがとうございました(^^) 「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです

唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。 すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。 「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて―― 一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。 今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。

病弱な妹に婚約者を奪われお城に居場所がなくなったので家出したら…結果、幸せになれました。

coco
恋愛
城に戻ってきた妹に、騎士兼婚約者を奪われた私。 やがて城に居場所がなくなった私は、ついに家出を決意して…?