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西の転生者
38.商店街
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システィーアは興奮気味に辺りを見回した。
「システィーア様、落ち着いて下さい」
「これが落ち着いていられますか!」
リプルに思わずそう返すと、フォトムが目を吊り上げて窘めてくる。システィーアは、だってと言いながら再び辺りを見回した。
建ち並ぶ店々に挟まれた道は、大通りと呼べる程の大きさはなかったが、それなりに人が行き交っている。そして道の突き当たりには、青い湖面が陽光を反射していた。
「私、こういう所に来たかったのだもの!」
システィーアとして生まれてから、初めての出歩きショッピングなのだ。港街フリューシェルでお預けをくらった分、当然、テンションも上がる。それに、ここへ連れて来られてから、初めての外出、初めてのお休みだ。嬉しくて嬉しくて、仕方がない。
システィーアは二人を連れて、あっちへフラフラ、こっちへフラフラ、目についたお店を片っ端から覗いていく。雑貨屋、文具屋、本屋に食品店に、玩具を売っているお店まである。どのお店も年代を感じさせる美しい建物で、それを見ているだけでも楽しい。
「あっ」
テラス席もあるカフェが目に入り、システィーアは二人の方を振り返った。
「あそこに行きたいわ!」
人の賑わう、趣のある石造りの店内へと入ると、店員の女性が声を震わせながらシスティーア達に対応する。
すぐに席へと通されて椅子に座ると、システィーアはすぐに室内を見回した。
「システィーア様、少し落ち着いて下さい」
リプルが苦笑しながら、隣に座るシスティーアを窘めた。向かい席に座るフォトムも、同じような顔をしてシスティーアを見ている。
「だって、カフェなんて初めて来たのだもの! 二人は初めてではなさそうね?」
「私は、幼い時に母がよく連れてきてくれたんです。でも、管理神官の見習いに選ばれてからなら、私も初めてです」
嬉しそうにリプルが微笑む。それを見たシスティーアも嬉しくて笑みが止まらない。
「やっぱり、リプルについて来て貰って良かったわ。フォトムはあまりイメージ無いけど、普段、カフェには行くの?」
「学生時分は」
「⋯⋯学生?」
「カフェの主な利用層は学院の生徒です。この商業区にはカフェが二店舗あるので、学生の時はどちらかを利用していました」
それを聞いて、システィーアはもう一度辺りを見回した。黒いコートのせいで集まる周りの視線を、なるべく視界に入れないようにしていた為、全く気が付いていなかった。
店内の埋まっている席には、青系統の服を着たお姉さん、お兄さんしかいない。
「⋯⋯もしかして、学生は青系統の色の服を着る決まりでもあるの?」
「決まりがあるわけでは無いのですが、昔から学院の生徒といえば青ですね」
フォトムが店員に注文をしてからそう答えた。
「まだお話ししていませんでしたが、システィーア様も来年は学院に入学することになっています」
「学院は十二歳からではなかったの?」
「早期入学の制度があるので、規定年齢より早くから学院に入る人もいます。システィーア様はその制度を使って、来年からは学院で学びます」
「システィーア様、私もシスティーア様と一緒に学院に入学するんです」
嬉しそうにリプルが言うのを見て、システィーアは少し驚いて彼女を見た。
「リプル、もしかして今、十二歳くらい?」
「私、十一歳ですよ」
システィーアは、自分と一回りは大きさの違うリプルをまじまじと見た。
「もっと年上だと思っていたわ」
「システィーア様もリーティア様も、小柄ですよね」
「そうなの? 年相応だと思っていたわ。そういえば、リーティアにはいつ面会出来るのかしら?」
このままでいてもどうにもならない、と覚悟を決めたシスティーアは、数度、面会の要請を管理神官にしていた。けれどいつもケーヴィンが首を横に振るため、未だにまともに話すらできていない。ほっとする反面、管理神官に対する苛立ちが募る。
「申し訳ありません」
視線を落とすリプルと、謝罪を口にするフォトム。
「リーティア様を担当しているリーズから、体調を理由に許可が降りないのです」
「⋯⋯そうなのね」
フォトムとの何度目かのこのやりとりを通して、システィーアは管理神官の中にも序列があるのだろうと悟った。そしてどうやら一番力が強いのは、リーズのようだ。もしかしたら、年功序列なのかもしれない。
とすると、フォトムにお願いしても、真面目な彼を困らせるだけだろう。当然、見習いのリプルにも無理な話だ。
リーティアがどう言うつもりなのか、意思確認できれば今後どうすべきか少しは道筋ができるかもしれない。そう思っていたが、別の方法を探さなければいけないようだ。
まあ今はそれよりも、目の前のスィーツだ。
目の前に置かれた色とりどりのフルーツが盛り盛りになっているパフェを見て、システィーアは目を輝かせた。
隣で同じものを頼んだリプルも同様に頬を緩めている。
「食堂にもこういうものが並ぶといいのに」
スプーンに乗せて一口含むと、冷たくフルーティな甘さが広がる。システィーアは思わず声を上げた。
「システィーア様って、コメ以外のものも食べれたんですね」
意外そうな顔をしてこちらを見るリプルにそっぽを向いて、システィーアはつんと顎を上げた。
「リプルって時々失礼よね。食堂で食べるようになる前、自室で普通にパンを食べてたわよ?」
「そう言われて見れば、そうでしたね」
たははっとリプルが誤魔化し笑いをするので、システィーアはくすりと笑った。
「甘さが、疲れた心に染みるわね」
「確かにそうですね」
女の子同士で笑い合っているのを、向かい席に座るフォトムはコーヒー片手に苦笑いをしていた。
ふっと違和感を感じたのか、フォトムが急に視線をシスティーアの背後に向ける。
それに気づいてシスティーアが声をかけようとした矢先。
「システィーア」
低い、男の声がした。
「システィーア様、落ち着いて下さい」
「これが落ち着いていられますか!」
リプルに思わずそう返すと、フォトムが目を吊り上げて窘めてくる。システィーアは、だってと言いながら再び辺りを見回した。
建ち並ぶ店々に挟まれた道は、大通りと呼べる程の大きさはなかったが、それなりに人が行き交っている。そして道の突き当たりには、青い湖面が陽光を反射していた。
「私、こういう所に来たかったのだもの!」
システィーアとして生まれてから、初めての出歩きショッピングなのだ。港街フリューシェルでお預けをくらった分、当然、テンションも上がる。それに、ここへ連れて来られてから、初めての外出、初めてのお休みだ。嬉しくて嬉しくて、仕方がない。
システィーアは二人を連れて、あっちへフラフラ、こっちへフラフラ、目についたお店を片っ端から覗いていく。雑貨屋、文具屋、本屋に食品店に、玩具を売っているお店まである。どのお店も年代を感じさせる美しい建物で、それを見ているだけでも楽しい。
「あっ」
テラス席もあるカフェが目に入り、システィーアは二人の方を振り返った。
「あそこに行きたいわ!」
人の賑わう、趣のある石造りの店内へと入ると、店員の女性が声を震わせながらシスティーア達に対応する。
すぐに席へと通されて椅子に座ると、システィーアはすぐに室内を見回した。
「システィーア様、少し落ち着いて下さい」
リプルが苦笑しながら、隣に座るシスティーアを窘めた。向かい席に座るフォトムも、同じような顔をしてシスティーアを見ている。
「だって、カフェなんて初めて来たのだもの! 二人は初めてではなさそうね?」
「私は、幼い時に母がよく連れてきてくれたんです。でも、管理神官の見習いに選ばれてからなら、私も初めてです」
嬉しそうにリプルが微笑む。それを見たシスティーアも嬉しくて笑みが止まらない。
「やっぱり、リプルについて来て貰って良かったわ。フォトムはあまりイメージ無いけど、普段、カフェには行くの?」
「学生時分は」
「⋯⋯学生?」
「カフェの主な利用層は学院の生徒です。この商業区にはカフェが二店舗あるので、学生の時はどちらかを利用していました」
それを聞いて、システィーアはもう一度辺りを見回した。黒いコートのせいで集まる周りの視線を、なるべく視界に入れないようにしていた為、全く気が付いていなかった。
店内の埋まっている席には、青系統の服を着たお姉さん、お兄さんしかいない。
「⋯⋯もしかして、学生は青系統の色の服を着る決まりでもあるの?」
「決まりがあるわけでは無いのですが、昔から学院の生徒といえば青ですね」
フォトムが店員に注文をしてからそう答えた。
「まだお話ししていませんでしたが、システィーア様も来年は学院に入学することになっています」
「学院は十二歳からではなかったの?」
「早期入学の制度があるので、規定年齢より早くから学院に入る人もいます。システィーア様はその制度を使って、来年からは学院で学びます」
「システィーア様、私もシスティーア様と一緒に学院に入学するんです」
嬉しそうにリプルが言うのを見て、システィーアは少し驚いて彼女を見た。
「リプル、もしかして今、十二歳くらい?」
「私、十一歳ですよ」
システィーアは、自分と一回りは大きさの違うリプルをまじまじと見た。
「もっと年上だと思っていたわ」
「システィーア様もリーティア様も、小柄ですよね」
「そうなの? 年相応だと思っていたわ。そういえば、リーティアにはいつ面会出来るのかしら?」
このままでいてもどうにもならない、と覚悟を決めたシスティーアは、数度、面会の要請を管理神官にしていた。けれどいつもケーヴィンが首を横に振るため、未だにまともに話すらできていない。ほっとする反面、管理神官に対する苛立ちが募る。
「申し訳ありません」
視線を落とすリプルと、謝罪を口にするフォトム。
「リーティア様を担当しているリーズから、体調を理由に許可が降りないのです」
「⋯⋯そうなのね」
フォトムとの何度目かのこのやりとりを通して、システィーアは管理神官の中にも序列があるのだろうと悟った。そしてどうやら一番力が強いのは、リーズのようだ。もしかしたら、年功序列なのかもしれない。
とすると、フォトムにお願いしても、真面目な彼を困らせるだけだろう。当然、見習いのリプルにも無理な話だ。
リーティアがどう言うつもりなのか、意思確認できれば今後どうすべきか少しは道筋ができるかもしれない。そう思っていたが、別の方法を探さなければいけないようだ。
まあ今はそれよりも、目の前のスィーツだ。
目の前に置かれた色とりどりのフルーツが盛り盛りになっているパフェを見て、システィーアは目を輝かせた。
隣で同じものを頼んだリプルも同様に頬を緩めている。
「食堂にもこういうものが並ぶといいのに」
スプーンに乗せて一口含むと、冷たくフルーティな甘さが広がる。システィーアは思わず声を上げた。
「システィーア様って、コメ以外のものも食べれたんですね」
意外そうな顔をしてこちらを見るリプルにそっぽを向いて、システィーアはつんと顎を上げた。
「リプルって時々失礼よね。食堂で食べるようになる前、自室で普通にパンを食べてたわよ?」
「そう言われて見れば、そうでしたね」
たははっとリプルが誤魔化し笑いをするので、システィーアはくすりと笑った。
「甘さが、疲れた心に染みるわね」
「確かにそうですね」
女の子同士で笑い合っているのを、向かい席に座るフォトムはコーヒー片手に苦笑いをしていた。
ふっと違和感を感じたのか、フォトムが急に視線をシスティーアの背後に向ける。
それに気づいてシスティーアが声をかけようとした矢先。
「システィーア」
低い、男の声がした。
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