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どんなに同じ人を好きになっても、幸せにはなれない。
それに気づいた僕は、彼から距離を置こうとした。
だけど、どんなにしても、その繋がりは途絶えることがなかった。
そして、今、究極の選択を迫られている。

「昴流、俺と一緒に暮らさないか…
 君が好きなんだ」
めぐり合ってしまった出会いを断つことができないまま、東雲と僕は友人として付き合ってきた。
大学で出会ってから数年。
卒業し、就職をした僕たちは、大人になっていた。

僕は、この状況をどうしたらいいのか、わからなかった。
それは、今の僕も、やはり彼のことがずっと好きだったから。
だけど、彼を選んでも幸せになることができないと分かっている未来を選ぶことは、勇気が必要だった。
僕は、ずっと決めていた。
彼が、もし、僕に好意を向けたとしても、絶対に受けいれたりはしないと。
それは、なぜか。
彼が僕に好意を示しただけでも幸せなことだ。
それなのに、両想いという形になったとき、それ以上に悪いことが起こるのだと思うから。
せめて、僕は、彼が幸せになるのを、傍で見れたらいいんだ。
それが、友人としての立ち位置だとしても。

「東雲、それはたぶん…気の迷いだ…」
彼を傷つけると分かっている言葉をかけることを許して欲しい。
「東雲の周りには、たくさんの素敵な人がいるじゃないか…
 こんなつまらない僕をどうして?」

嬉しいよ、彼から気持ちを告げられるなんて、今まで経験したことがなかったから。
だけど、それは、同時に、自分の知らない未来が待ち構えているということだ。
良いことがあれば、悪いこともついてくる。
彼から逃げようとしている僕を、
「いいや、昴流。
 俺の周りは、俺自身を見ていない。
 それに比べて、君は、俺に対して誠実であり続けてくれた。
 ご機嫌を取るためだけの関係なんて、すぐにダメになるさ。
 君のその真っ直ぐなところが、俺は好きなんだ」
真っ直ぐに見つめる東雲の視線。
嬉しい…
だけど、その分、怖いんだ。

誰にも言っていない俺の秘密。
彼は、もし、それを打ち明けたら、どんな反応をするのだろう。

俺は、勇気をだして話をしてみた。
「…東雲、今から、僕が話すことを信じてくれとはいわない。
 だけど、僕の中の迷いの原因だから、聞いて欲しい。

 僕はね、幸せになることはできないんだよ」
悲しいけど、結末から話しておく方がいいだろう。
「僕はね、小さい頃から、ずっと幸せになれない夢ばかりみているんだ。
 それも、君と恋をする夢だ。
 まだ、出会ったことのない時から、君を知っていたんだよ。
 僕は…」
―?!
東雲が、驚いたような表情をしている。
当然だ。
初めて出会ったのに、こちらは、君のことを知っているのだから。
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