文字の大きさ
大
中
小
88 / 877
連載
閑話 山風
白い大型のウルフとジャガーが近々マーファに来るかもしれないが、従魔なので落ち着いて対応すること。絶対に手を出さないこと。その主人達に、絶対に絡まないこと。
そう冒険者ギルドから通達を受けたのは、冷蔵庫ダンジョンから出た次の日だった。
「リーダー、まさか」
シュタインが聞くと、リーダーであるロッシュが息をつく。
「ミズサワさん達だろうな。まあ、会ったら挨拶くらいなら大丈夫だと思うが」
ちらり、とマアデンとハジェルを見るロッシュ。
ケイコお母さん、レストランするのかな? と、ワクワクしている2人。
「おい、2人共、ミズサワさん達が来ても挨拶程度だぞ」
「「えーっ」」
げんこつを構えるロッシュを見て、あわてて、はい、と答えてる。
「まあ、でも2人の言いたいこと分かるよ。俺、あのカレーってのまた食いたいからなあ」
ラーヴが思い出すように言う。
「カレーかあ、確かに旨かったなあ」
シュタインも思い出すように言う。
たまたま、テーラーのパーカー親子の護衛途中で知り合ったミズサワ一家。初めて小型犬を見たが人見知りで触れなかった。犬が好きなシュタインには、ちょっと残念だったが。わざわざ冒険者を雇っての移動に、始めはおかしいと思ったが、好意で分けてもらったカレーが絶品だった。多分、今までで食べたなかでも一番だと思う。それから食事を提供してくれたが、全部絶品。甘味のある野菜、柔らかいパン、ハムも腸詰めも、噛んだらホロホロと崩れる柔らかい肉も、油で揚げた肉やエビも、スープも何もかも絶品だ。
ケイコお母さんがレストラン開いたら、真っ先に行こうと言ったハジェルの気持ちが分かる。また、食べたい、カレー。
ユリアレーナ入国直前、突然、声が聞こえると言い出した時は、おかしな人達かもと思ったが。いきなり魔の森に躊躇いなく飛び込んで行ったのには、驚いたし、寡黙そうなコウタが支援魔法を使えたのにも驚いた。
探しに行くと言ったロッシュに代わり、シュタインが手を上げて、遭遇したのがフォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーだ。そしてナーダリーグリズリー。冒険者人生、まだ10年ちょっとだが、まとめては絶対に見ることはない高ランクの魔物。ナーダリーグリズリーは息絶えていた。残り2体をユイからまさか世話するなんて言葉が出るとは思えなかった。だが、素人目からしても、フォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーの毛並みは艶はなく、そして痩せていた。だが、5匹の子供は可愛い。触りたいが、痩せているとはいえ、あの母親の前で触れない。恐ろしいからだ。
ミズサワさん達はなんの抵抗もなく、受け入れていた。どうやらミズサワさん達にはテイマー能力があるようだ。家族全員なんて聞いたことないが。問題なく、コミュニケーションを取っているから安心していた。ただ、触りたい、特にウルフの子供。雄はやんちゃのようで、ハジェルのポケットに食らいついていた。
アルブレンでの従魔契約の時に居合わせた時、ユイさんは怒っていた。馬車を買い取れと言われたことではない、5匹の子供を巻き上げようとしている事に怒っていた。
怒らせたら、苛烈な女性だと思ったが、だが、その根底は優しさだとシュタインは思う。ただ、5匹の子供を守ろうとしているだけだ。
(だって普通逆だろう。従魔が主人を守るものだろう)
「ようこそミズサワ家へ。心配せんでもよかけんね、私達がみんなを守るけんね」
そう言って、ユイさんはフォレストガーディアンとクリムゾンジャガーを抱き締めた。
その時、魔物なのに、なんて穏やかな顔をするんだろうと思った。
そして、抱き締めたユイさんが、すごく穏やかな顔で、ああ、これがこの人の本質なんだと。
そんな事を思い出した次の日。
3日間の休みでぶらぶらしていた時、人々のざわめきの先に、白い毛並みの大型犬、違うウルフが闊歩していた。
ミズサワさんだ。
声をかける、そうだ、挨拶くらいなら、いいはず。
向こうもすぐに気がついてくれて、宿の案内所まで同行した。
驚いた事に、フォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーの毛並みが、輝くように綺麗になっていた。触りたいが、生命の危機になるから諦める。
ゲンキと名付けられたフォレストガーディアンウルフが飛びかかってきたが、触れる切っ掛けになり、内心歓喜した。
その後、冷蔵庫ダンジョンに案内したり、ダンジョンの説明したり、冒険者ギルドに案内したり。お茶とケーキまでご馳走になった、旨かった。はな、と呼ばれる小型犬が足にすがりついてきた時に、ちょっと触ってしまったが、肉球がぷにっとしていたし、毛並みは柔らかい。すぐに連れていかれてしまって残念。
その後にギルドまで案内して、頭が2つもある蛇が出てきた時は開いた口が塞がらないし、冷蔵庫ダンジョン前で、クリムゾンジャガーが転がった時はどうしようかと思ったが。
マアデンとハジェルが来たが、時間的に帰らなくてはならない。
「シュタインさん、ズルイ」
「そおっすよ。一人だけケーキご馳走になって」
マアデンとハジェルがブーブー言った。
定宿に戻ると、冒険者ギルド職員が待ち構えていた。
リーダーのロッシュとシュタインだけが、冒険者ギルドに連れていかれた。
「シュタイン、何をした?」
「ミズサワさんに挨拶して、冷蔵庫ダンジョンとかに案内しただけだって」
心当たりはこれくらいだが、なし崩し的に案内しただけだ。向こうからダンジョンの件を聞かれたのだから。
事務局長のリティアさんが待ち構えていた。
「あのテイマーとどういった関係?」
ストレートに聞かれた。
「知り合い程度です」
ロッシュが答える。護衛依頼の際に知り合った程度。マーファにいる知り合いとなれば、自分達かパーカーさん達くらいのはず。
リティアさんは、少し考えて、ある提案をしてきた。
冒険者ギルド管理のパーティーハウスの御用聞きだ。
「もし、次の予定がなければ、受けてもらえないかしら?」
「何故ですか?」
「マーファの為よ。おそらく、彼女達はダンジョンに潜る間、残される両親の心配をするはず。冒険者ギルド管理のパーティーハウスならば、安全ですし。知り合いの貴方達が御用聞きなら安心するでしょうからね。こちらからの依頼ですから、引き受けてくれたら、報酬を上乗せしましょう」
ロッシュとシュタインは顔を見合せた。
山風は次にはっきりした予定はなかった。スカイランの軍隊ダンジョンにそろそろ挑戦しようか、どうするか、迷っていた。
少し考えて、ロッシュは御用聞きの依頼を受けた。
マアデンとハジェルのいい経験になるだろうからと。
3日間の休みが返上になったが、バタバタと引き継ぎを行った。
そんな中、シュタインはあまり知り合いでもない冒険者達から声をかけられた。引き抜きだ。
「俺は山風から抜ける気はない」
パーティーメンバーの引き抜きは原則禁止だ。
おかしいと思ったら、これだ。
「お前の新しい彼女の従魔、すげえから」
「はぃぃぃぃっ?」
あちこち案内したのが、誤解されたようだ。
「ないない、ないない、絶対ないない」
シュタインは否定した。
ユイさんは優しい人だけど、あの人に似合うのは包容力のある男性だろうと、シュタインは勝手に思っている。雰囲気的に、ユイさんは年上男性が似合うのでは、と。弟のコウタと同い年のシュタインは思う。確実に年上のユイさん。別に年上だからではないが、自分は不釣り合いだ。
しかも、あの2匹を受け入れて、その上であの2匹を納得させるような人物。
この世界に存在するか? そんな男?
自分ではない、絶対ない。
一薙ぎで吹き飛ばされるだろう。
勘違いされたままなら、ミズサワさん達が迷惑だろうし、御用聞きとして動きにくくなる。
シュタインは必死に否定して回った。
そう冒険者ギルドから通達を受けたのは、冷蔵庫ダンジョンから出た次の日だった。
「リーダー、まさか」
シュタインが聞くと、リーダーであるロッシュが息をつく。
「ミズサワさん達だろうな。まあ、会ったら挨拶くらいなら大丈夫だと思うが」
ちらり、とマアデンとハジェルを見るロッシュ。
ケイコお母さん、レストランするのかな? と、ワクワクしている2人。
「おい、2人共、ミズサワさん達が来ても挨拶程度だぞ」
「「えーっ」」
げんこつを構えるロッシュを見て、あわてて、はい、と答えてる。
「まあ、でも2人の言いたいこと分かるよ。俺、あのカレーってのまた食いたいからなあ」
ラーヴが思い出すように言う。
「カレーかあ、確かに旨かったなあ」
シュタインも思い出すように言う。
たまたま、テーラーのパーカー親子の護衛途中で知り合ったミズサワ一家。初めて小型犬を見たが人見知りで触れなかった。犬が好きなシュタインには、ちょっと残念だったが。わざわざ冒険者を雇っての移動に、始めはおかしいと思ったが、好意で分けてもらったカレーが絶品だった。多分、今までで食べたなかでも一番だと思う。それから食事を提供してくれたが、全部絶品。甘味のある野菜、柔らかいパン、ハムも腸詰めも、噛んだらホロホロと崩れる柔らかい肉も、油で揚げた肉やエビも、スープも何もかも絶品だ。
ケイコお母さんがレストラン開いたら、真っ先に行こうと言ったハジェルの気持ちが分かる。また、食べたい、カレー。
ユリアレーナ入国直前、突然、声が聞こえると言い出した時は、おかしな人達かもと思ったが。いきなり魔の森に躊躇いなく飛び込んで行ったのには、驚いたし、寡黙そうなコウタが支援魔法を使えたのにも驚いた。
探しに行くと言ったロッシュに代わり、シュタインが手を上げて、遭遇したのがフォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーだ。そしてナーダリーグリズリー。冒険者人生、まだ10年ちょっとだが、まとめては絶対に見ることはない高ランクの魔物。ナーダリーグリズリーは息絶えていた。残り2体をユイからまさか世話するなんて言葉が出るとは思えなかった。だが、素人目からしても、フォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーの毛並みは艶はなく、そして痩せていた。だが、5匹の子供は可愛い。触りたいが、痩せているとはいえ、あの母親の前で触れない。恐ろしいからだ。
ミズサワさん達はなんの抵抗もなく、受け入れていた。どうやらミズサワさん達にはテイマー能力があるようだ。家族全員なんて聞いたことないが。問題なく、コミュニケーションを取っているから安心していた。ただ、触りたい、特にウルフの子供。雄はやんちゃのようで、ハジェルのポケットに食らいついていた。
アルブレンでの従魔契約の時に居合わせた時、ユイさんは怒っていた。馬車を買い取れと言われたことではない、5匹の子供を巻き上げようとしている事に怒っていた。
怒らせたら、苛烈な女性だと思ったが、だが、その根底は優しさだとシュタインは思う。ただ、5匹の子供を守ろうとしているだけだ。
(だって普通逆だろう。従魔が主人を守るものだろう)
「ようこそミズサワ家へ。心配せんでもよかけんね、私達がみんなを守るけんね」
そう言って、ユイさんはフォレストガーディアンとクリムゾンジャガーを抱き締めた。
その時、魔物なのに、なんて穏やかな顔をするんだろうと思った。
そして、抱き締めたユイさんが、すごく穏やかな顔で、ああ、これがこの人の本質なんだと。
そんな事を思い出した次の日。
3日間の休みでぶらぶらしていた時、人々のざわめきの先に、白い毛並みの大型犬、違うウルフが闊歩していた。
ミズサワさんだ。
声をかける、そうだ、挨拶くらいなら、いいはず。
向こうもすぐに気がついてくれて、宿の案内所まで同行した。
驚いた事に、フォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーの毛並みが、輝くように綺麗になっていた。触りたいが、生命の危機になるから諦める。
ゲンキと名付けられたフォレストガーディアンウルフが飛びかかってきたが、触れる切っ掛けになり、内心歓喜した。
その後、冷蔵庫ダンジョンに案内したり、ダンジョンの説明したり、冒険者ギルドに案内したり。お茶とケーキまでご馳走になった、旨かった。はな、と呼ばれる小型犬が足にすがりついてきた時に、ちょっと触ってしまったが、肉球がぷにっとしていたし、毛並みは柔らかい。すぐに連れていかれてしまって残念。
その後にギルドまで案内して、頭が2つもある蛇が出てきた時は開いた口が塞がらないし、冷蔵庫ダンジョン前で、クリムゾンジャガーが転がった時はどうしようかと思ったが。
マアデンとハジェルが来たが、時間的に帰らなくてはならない。
「シュタインさん、ズルイ」
「そおっすよ。一人だけケーキご馳走になって」
マアデンとハジェルがブーブー言った。
定宿に戻ると、冒険者ギルド職員が待ち構えていた。
リーダーのロッシュとシュタインだけが、冒険者ギルドに連れていかれた。
「シュタイン、何をした?」
「ミズサワさんに挨拶して、冷蔵庫ダンジョンとかに案内しただけだって」
心当たりはこれくらいだが、なし崩し的に案内しただけだ。向こうからダンジョンの件を聞かれたのだから。
事務局長のリティアさんが待ち構えていた。
「あのテイマーとどういった関係?」
ストレートに聞かれた。
「知り合い程度です」
ロッシュが答える。護衛依頼の際に知り合った程度。マーファにいる知り合いとなれば、自分達かパーカーさん達くらいのはず。
リティアさんは、少し考えて、ある提案をしてきた。
冒険者ギルド管理のパーティーハウスの御用聞きだ。
「もし、次の予定がなければ、受けてもらえないかしら?」
「何故ですか?」
「マーファの為よ。おそらく、彼女達はダンジョンに潜る間、残される両親の心配をするはず。冒険者ギルド管理のパーティーハウスならば、安全ですし。知り合いの貴方達が御用聞きなら安心するでしょうからね。こちらからの依頼ですから、引き受けてくれたら、報酬を上乗せしましょう」
ロッシュとシュタインは顔を見合せた。
山風は次にはっきりした予定はなかった。スカイランの軍隊ダンジョンにそろそろ挑戦しようか、どうするか、迷っていた。
少し考えて、ロッシュは御用聞きの依頼を受けた。
マアデンとハジェルのいい経験になるだろうからと。
3日間の休みが返上になったが、バタバタと引き継ぎを行った。
そんな中、シュタインはあまり知り合いでもない冒険者達から声をかけられた。引き抜きだ。
「俺は山風から抜ける気はない」
パーティーメンバーの引き抜きは原則禁止だ。
おかしいと思ったら、これだ。
「お前の新しい彼女の従魔、すげえから」
「はぃぃぃぃっ?」
あちこち案内したのが、誤解されたようだ。
「ないない、ないない、絶対ないない」
シュタインは否定した。
ユイさんは優しい人だけど、あの人に似合うのは包容力のある男性だろうと、シュタインは勝手に思っている。雰囲気的に、ユイさんは年上男性が似合うのでは、と。弟のコウタと同い年のシュタインは思う。確実に年上のユイさん。別に年上だからではないが、自分は不釣り合いだ。
しかも、あの2匹を受け入れて、その上であの2匹を納得させるような人物。
この世界に存在するか? そんな男?
自分ではない、絶対ない。
一薙ぎで吹き飛ばされるだろう。
勘違いされたままなら、ミズサワさん達が迷惑だろうし、御用聞きとして動きにくくなる。
シュタインは必死に否定して回った。
感想 854
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので、王都の端で小さな香水店を開きます 〜「匂いしか分からない無能令嬢」と捨てられましたが、実は人の嘘と運命を嗅ぎ分ける王国唯
鳳凰院暁月刃夜婚約破棄されたので、王都の端で小さな香水店を開きます
〜「匂いしか分からない無能令嬢」と捨てられましたが、実は人の嘘と運命を嗅ぎ分ける王国唯一の調香師でした〜
☆あらすじ☆
王太子から婚約破棄され、家族にも見捨てられた公爵令嬢リリアーナ。
妹をいじめた悪女。
匂いしか分からない無能令嬢。
王妃にふさわしくない女。
夜会場でそう笑われた彼女は、すべてを失った――はずだった。
けれどリリアーナの嗅覚は、ただ香りを嗅ぎ分けるだけのものではない。
人の嘘。
隠された悪意。
病の兆し。
呪いの残り香。
そして、運命の匂いまで嗅ぎ分ける、王国唯一の異能だった。
公爵家を出たリリアーナは、亡き祖母が残した王都の端の小さな香水店「夜明けの瓶」を開く。
最初は誰にも見向きされない店だった。
けれど、眠れない少女を救い、毒を盛られた貴婦人を助け、夫婦の嘘をほどいていくうちに、店は王都中の秘密が集まる場所になっていく。
そんな彼女の前に現れたのは、冷血公爵と恐れられる辺境公爵ヴァルト。
彼は王宮由来の呪いに蝕まれていた。
リリアーナは彼の呪いを解くため、契約婚約を結ぶことになる。
不器用すぎる公爵に守られ、時に振り回されながら、彼女は王宮に隠された大きな嘘へと近づいていく。
なぜ王太子は婚約破棄を急いだのか。
なぜ妹は姉を憎み続けるのか。
なぜ王宮には、焦げた薔薇の匂いが漂っているのか。
無能と捨てられた令嬢は、もう誰かの言いなりにはならない。
「私は、私の鼻で生きていきます」
香水店から始まる、婚約破棄令嬢の逆転恋愛ファンタジー。
ざまぁあり、契約婚約あり、冷血公爵の不器用な溺愛あり。
最後には、彼女を捨てた者たちが気づくことになる。
本当に失ってはいけなかったのは、彼女だったのだと。
王妃教育を辞退したら「困る」と国王陛下が直接迎えに来ました ~婚約破棄された私に、王太子ではなく国王陛下が求婚してきます〜
由香【全一話完結】
王太子の心変わりによって婚約を破棄された侯爵令嬢リリアーナ。
十年以上受け続けた王妃教育も辞退し、ようやく自由になれると思っていた。
ところが数日後、侯爵家を訪れたのは国王陛下本人。
「王妃教育を辞退されると困る。私の妃になってほしい」
努力を踏みにじった王太子はすべてを失い、選ばれたのは誠実に生きてきた彼女だった。
これは、年上国王に溺愛されながら、世界一幸せな王妃になるまでの逆転ラブストーリー。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
聖女って無給で無休なんですか?じゃあやらないです
こじまき異世界に聖女として召喚されたイラストレーターのチヒロ。しかし聖女には給料も休みもないことを知って「じゃあやらないです」と聖女就任を断る。
「国と人を救う崇高な仕事には、私どもからの感謝を捧げよう」
「心底いらないです」
異世界でまで、やりがい搾取されてたまるかよ。
※小説家になろうにも投稿しています
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまうリリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、悪役令嬢として断罪された少女が、「誰かの物語の脇役」ではなく、自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
妹を踏みにじった奴らに、復讐の花束を
楠ノ木雫 妹を傷つけたやつは誰だ。
隣国に嫁いだこの国の王女であり双子の妹でもあるクラリスが2年後に亡き人となって帰ってきた。死因すら伝えられず嫁ぎ先の墓にも入れてもらえずに隣国の使者が連れてきた。
この事実に信じられずにいると、クラリスが帰ってくる半年前に戻っていた。
一体隣国でクラリスの身に何があったのか。
絶対に、もうクラリスのあんな姿を見たくない。堅く決意し使節団の使者として隣国に乗りこむ事になった。
※一話で過激なシーンがあります。
【第1回新エンタメ小説大賞】にエントリー中です。
五年も笑わなかった辺境伯の娘が、追放された保育係の令嬢の前で初めて笑った
歩人(あゆと)侯爵令嬢クラリスは、五年間、兄夫婦の公爵家で三人の御子の保育を任されてきた。表向きは「下女扱い」だったが、彼女の保育記録には毎日の歌・手作りの絵札・夜泣きの記録が綿密に綴られていた。「育児など侍女の手伝い。本物の貴族のすることではないわ」兄嫁の侮辱に、クラリスは保育記録帳を置いて去る。訪ねた先は、妻を亡くした辺境伯ロタールの屋敷だった。彼の娘リーリャは六歳、母を亡くして以来、誰の前でも笑わなかった。「五年、御子さま方を見続けたあなたなら、リーリャの心も読めるだろうか」ロタールの不器用な依頼に、クラリスは静かに頷く。春が来る頃、リーリャは初めて声を上げて笑った。クラリスの隣で、ロタールも気づくと微笑んでいた——五年ぶりに。
【完結済】ワザと醜い令嬢をしていた令嬢一家華麗に亡命する
satomi醜く自らに魔法をかけてケルリール王国王太子と婚約をしていた侯爵家令嬢のアメリア=キートウェル。フェルナン=ケルリール王太子から醜いという理由で婚約破棄を言い渡されました。
もう王太子は能無しですし、ケルリール王国から一家で亡命してしまう事にしちゃいます!