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閑話 山風
白い大型のウルフとジャガーが近々マーファに来るかもしれないが、従魔なので落ち着いて対応すること。絶対に手を出さないこと。その主人達に、絶対に絡まないこと。
そう冒険者ギルドから通達を受けたのは、冷蔵庫ダンジョンから出た次の日だった。
「リーダー、まさか」
シュタインが聞くと、リーダーであるロッシュが息をつく。
「ミズサワさん達だろうな。まあ、会ったら挨拶くらいなら大丈夫だと思うが」
ちらり、とマアデンとハジェルを見るロッシュ。
ケイコお母さん、レストランするのかな? と、ワクワクしている2人。
「おい、2人共、ミズサワさん達が来ても挨拶程度だぞ」
「「えーっ」」
げんこつを構えるロッシュを見て、あわてて、はい、と答えてる。
「まあ、でも2人の言いたいこと分かるよ。俺、あのカレーってのまた食いたいからなあ」
ラーヴが思い出すように言う。
「カレーかあ、確かに旨かったなあ」
シュタインも思い出すように言う。
たまたま、テーラーのパーカー親子の護衛途中で知り合ったミズサワ一家。初めて小型犬を見たが人見知りで触れなかった。犬が好きなシュタインには、ちょっと残念だったが。わざわざ冒険者を雇っての移動に、始めはおかしいと思ったが、好意で分けてもらったカレーが絶品だった。多分、今までで食べたなかでも一番だと思う。それから食事を提供してくれたが、全部絶品。甘味のある野菜、柔らかいパン、ハムも腸詰めも、噛んだらホロホロと崩れる柔らかい肉も、油で揚げた肉やエビも、スープも何もかも絶品だ。
ケイコお母さんがレストラン開いたら、真っ先に行こうと言ったハジェルの気持ちが分かる。また、食べたい、カレー。
ユリアレーナ入国直前、突然、声が聞こえると言い出した時は、おかしな人達かもと思ったが。いきなり魔の森に躊躇いなく飛び込んで行ったのには、驚いたし、寡黙そうなコウタが支援魔法を使えたのにも驚いた。
探しに行くと言ったロッシュに代わり、シュタインが手を上げて、遭遇したのがフォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーだ。そしてナーダリーグリズリー。冒険者人生、まだ10年ちょっとだが、まとめては絶対に見ることはない高ランクの魔物。ナーダリーグリズリーは息絶えていた。残り2体をユイからまさか世話するなんて言葉が出るとは思えなかった。だが、素人目からしても、フォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーの毛並みは艶はなく、そして痩せていた。だが、5匹の子供は可愛い。触りたいが、痩せているとはいえ、あの母親の前で触れない。恐ろしいからだ。
ミズサワさん達はなんの抵抗もなく、受け入れていた。どうやらミズサワさん達にはテイマー能力があるようだ。家族全員なんて聞いたことないが。問題なく、コミュニケーションを取っているから安心していた。ただ、触りたい、特にウルフの子供。雄はやんちゃのようで、ハジェルのポケットに食らいついていた。
アルブレンでの従魔契約の時に居合わせた時、ユイさんは怒っていた。馬車を買い取れと言われたことではない、5匹の子供を巻き上げようとしている事に怒っていた。
怒らせたら、苛烈な女性だと思ったが、だが、その根底は優しさだとシュタインは思う。ただ、5匹の子供を守ろうとしているだけだ。
(だって普通逆だろう。従魔が主人を守るものだろう)
「ようこそミズサワ家へ。心配せんでもよかけんね、私達がみんなを守るけんね」
そう言って、ユイさんはフォレストガーディアンとクリムゾンジャガーを抱き締めた。
その時、魔物なのに、なんて穏やかな顔をするんだろうと思った。
そして、抱き締めたユイさんが、すごく穏やかな顔で、ああ、これがこの人の本質なんだと。
そんな事を思い出した次の日。
3日間の休みでぶらぶらしていた時、人々のざわめきの先に、白い毛並みの大型犬、違うウルフが闊歩していた。
ミズサワさんだ。
声をかける、そうだ、挨拶くらいなら、いいはず。
向こうもすぐに気がついてくれて、宿の案内所まで同行した。
驚いた事に、フォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーの毛並みが、輝くように綺麗になっていた。触りたいが、生命の危機になるから諦める。
ゲンキと名付けられたフォレストガーディアンウルフが飛びかかってきたが、触れる切っ掛けになり、内心歓喜した。
その後、冷蔵庫ダンジョンに案内したり、ダンジョンの説明したり、冒険者ギルドに案内したり。お茶とケーキまでご馳走になった、旨かった。はな、と呼ばれる小型犬が足にすがりついてきた時に、ちょっと触ってしまったが、肉球がぷにっとしていたし、毛並みは柔らかい。すぐに連れていかれてしまって残念。
その後にギルドまで案内して、頭が2つもある蛇が出てきた時は開いた口が塞がらないし、冷蔵庫ダンジョン前で、クリムゾンジャガーが転がった時はどうしようかと思ったが。
マアデンとハジェルが来たが、時間的に帰らなくてはならない。
「シュタインさん、ズルイ」
「そおっすよ。一人だけケーキご馳走になって」
マアデンとハジェルがブーブー言った。
定宿に戻ると、冒険者ギルド職員が待ち構えていた。
リーダーのロッシュとシュタインだけが、冒険者ギルドに連れていかれた。
「シュタイン、何をした?」
「ミズサワさんに挨拶して、冷蔵庫ダンジョンとかに案内しただけだって」
心当たりはこれくらいだが、なし崩し的に案内しただけだ。向こうからダンジョンの件を聞かれたのだから。
事務局長のリティアさんが待ち構えていた。
「あのテイマーとどういった関係?」
ストレートに聞かれた。
「知り合い程度です」
ロッシュが答える。護衛依頼の際に知り合った程度。マーファにいる知り合いとなれば、自分達かパーカーさん達くらいのはず。
リティアさんは、少し考えて、ある提案をしてきた。
冒険者ギルド管理のパーティーハウスの御用聞きだ。
「もし、次の予定がなければ、受けてもらえないかしら?」
「何故ですか?」
「マーファの為よ。おそらく、彼女達はダンジョンに潜る間、残される両親の心配をするはず。冒険者ギルド管理のパーティーハウスならば、安全ですし。知り合いの貴方達が御用聞きなら安心するでしょうからね。こちらからの依頼ですから、引き受けてくれたら、報酬を上乗せしましょう」
ロッシュとシュタインは顔を見合せた。
山風は次にはっきりした予定はなかった。スカイランの軍隊ダンジョンにそろそろ挑戦しようか、どうするか、迷っていた。
少し考えて、ロッシュは御用聞きの依頼を受けた。
マアデンとハジェルのいい経験になるだろうからと。
3日間の休みが返上になったが、バタバタと引き継ぎを行った。
そんな中、シュタインはあまり知り合いでもない冒険者達から声をかけられた。引き抜きだ。
「俺は山風から抜ける気はない」
パーティーメンバーの引き抜きは原則禁止だ。
おかしいと思ったら、これだ。
「お前の新しい彼女の従魔、すげえから」
「はぃぃぃぃっ?」
あちこち案内したのが、誤解されたようだ。
「ないない、ないない、絶対ないない」
シュタインは否定した。
ユイさんは優しい人だけど、あの人に似合うのは包容力のある男性だろうと、シュタインは勝手に思っている。雰囲気的に、ユイさんは年上男性が似合うのでは、と。弟のコウタと同い年のシュタインは思う。確実に年上のユイさん。別に年上だからではないが、自分は不釣り合いだ。
しかも、あの2匹を受け入れて、その上であの2匹を納得させるような人物。
この世界に存在するか? そんな男?
自分ではない、絶対ない。
一薙ぎで吹き飛ばされるだろう。
勘違いされたままなら、ミズサワさん達が迷惑だろうし、御用聞きとして動きにくくなる。
シュタインは必死に否定して回った。
そう冒険者ギルドから通達を受けたのは、冷蔵庫ダンジョンから出た次の日だった。
「リーダー、まさか」
シュタインが聞くと、リーダーであるロッシュが息をつく。
「ミズサワさん達だろうな。まあ、会ったら挨拶くらいなら大丈夫だと思うが」
ちらり、とマアデンとハジェルを見るロッシュ。
ケイコお母さん、レストランするのかな? と、ワクワクしている2人。
「おい、2人共、ミズサワさん達が来ても挨拶程度だぞ」
「「えーっ」」
げんこつを構えるロッシュを見て、あわてて、はい、と答えてる。
「まあ、でも2人の言いたいこと分かるよ。俺、あのカレーってのまた食いたいからなあ」
ラーヴが思い出すように言う。
「カレーかあ、確かに旨かったなあ」
シュタインも思い出すように言う。
たまたま、テーラーのパーカー親子の護衛途中で知り合ったミズサワ一家。初めて小型犬を見たが人見知りで触れなかった。犬が好きなシュタインには、ちょっと残念だったが。わざわざ冒険者を雇っての移動に、始めはおかしいと思ったが、好意で分けてもらったカレーが絶品だった。多分、今までで食べたなかでも一番だと思う。それから食事を提供してくれたが、全部絶品。甘味のある野菜、柔らかいパン、ハムも腸詰めも、噛んだらホロホロと崩れる柔らかい肉も、油で揚げた肉やエビも、スープも何もかも絶品だ。
ケイコお母さんがレストラン開いたら、真っ先に行こうと言ったハジェルの気持ちが分かる。また、食べたい、カレー。
ユリアレーナ入国直前、突然、声が聞こえると言い出した時は、おかしな人達かもと思ったが。いきなり魔の森に躊躇いなく飛び込んで行ったのには、驚いたし、寡黙そうなコウタが支援魔法を使えたのにも驚いた。
探しに行くと言ったロッシュに代わり、シュタインが手を上げて、遭遇したのがフォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーだ。そしてナーダリーグリズリー。冒険者人生、まだ10年ちょっとだが、まとめては絶対に見ることはない高ランクの魔物。ナーダリーグリズリーは息絶えていた。残り2体をユイからまさか世話するなんて言葉が出るとは思えなかった。だが、素人目からしても、フォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーの毛並みは艶はなく、そして痩せていた。だが、5匹の子供は可愛い。触りたいが、痩せているとはいえ、あの母親の前で触れない。恐ろしいからだ。
ミズサワさん達はなんの抵抗もなく、受け入れていた。どうやらミズサワさん達にはテイマー能力があるようだ。家族全員なんて聞いたことないが。問題なく、コミュニケーションを取っているから安心していた。ただ、触りたい、特にウルフの子供。雄はやんちゃのようで、ハジェルのポケットに食らいついていた。
アルブレンでの従魔契約の時に居合わせた時、ユイさんは怒っていた。馬車を買い取れと言われたことではない、5匹の子供を巻き上げようとしている事に怒っていた。
怒らせたら、苛烈な女性だと思ったが、だが、その根底は優しさだとシュタインは思う。ただ、5匹の子供を守ろうとしているだけだ。
(だって普通逆だろう。従魔が主人を守るものだろう)
「ようこそミズサワ家へ。心配せんでもよかけんね、私達がみんなを守るけんね」
そう言って、ユイさんはフォレストガーディアンとクリムゾンジャガーを抱き締めた。
その時、魔物なのに、なんて穏やかな顔をするんだろうと思った。
そして、抱き締めたユイさんが、すごく穏やかな顔で、ああ、これがこの人の本質なんだと。
そんな事を思い出した次の日。
3日間の休みでぶらぶらしていた時、人々のざわめきの先に、白い毛並みの大型犬、違うウルフが闊歩していた。
ミズサワさんだ。
声をかける、そうだ、挨拶くらいなら、いいはず。
向こうもすぐに気がついてくれて、宿の案内所まで同行した。
驚いた事に、フォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーの毛並みが、輝くように綺麗になっていた。触りたいが、生命の危機になるから諦める。
ゲンキと名付けられたフォレストガーディアンウルフが飛びかかってきたが、触れる切っ掛けになり、内心歓喜した。
その後、冷蔵庫ダンジョンに案内したり、ダンジョンの説明したり、冒険者ギルドに案内したり。お茶とケーキまでご馳走になった、旨かった。はな、と呼ばれる小型犬が足にすがりついてきた時に、ちょっと触ってしまったが、肉球がぷにっとしていたし、毛並みは柔らかい。すぐに連れていかれてしまって残念。
その後にギルドまで案内して、頭が2つもある蛇が出てきた時は開いた口が塞がらないし、冷蔵庫ダンジョン前で、クリムゾンジャガーが転がった時はどうしようかと思ったが。
マアデンとハジェルが来たが、時間的に帰らなくてはならない。
「シュタインさん、ズルイ」
「そおっすよ。一人だけケーキご馳走になって」
マアデンとハジェルがブーブー言った。
定宿に戻ると、冒険者ギルド職員が待ち構えていた。
リーダーのロッシュとシュタインだけが、冒険者ギルドに連れていかれた。
「シュタイン、何をした?」
「ミズサワさんに挨拶して、冷蔵庫ダンジョンとかに案内しただけだって」
心当たりはこれくらいだが、なし崩し的に案内しただけだ。向こうからダンジョンの件を聞かれたのだから。
事務局長のリティアさんが待ち構えていた。
「あのテイマーとどういった関係?」
ストレートに聞かれた。
「知り合い程度です」
ロッシュが答える。護衛依頼の際に知り合った程度。マーファにいる知り合いとなれば、自分達かパーカーさん達くらいのはず。
リティアさんは、少し考えて、ある提案をしてきた。
冒険者ギルド管理のパーティーハウスの御用聞きだ。
「もし、次の予定がなければ、受けてもらえないかしら?」
「何故ですか?」
「マーファの為よ。おそらく、彼女達はダンジョンに潜る間、残される両親の心配をするはず。冒険者ギルド管理のパーティーハウスならば、安全ですし。知り合いの貴方達が御用聞きなら安心するでしょうからね。こちらからの依頼ですから、引き受けてくれたら、報酬を上乗せしましょう」
ロッシュとシュタインは顔を見合せた。
山風は次にはっきりした予定はなかった。スカイランの軍隊ダンジョンにそろそろ挑戦しようか、どうするか、迷っていた。
少し考えて、ロッシュは御用聞きの依頼を受けた。
マアデンとハジェルのいい経験になるだろうからと。
3日間の休みが返上になったが、バタバタと引き継ぎを行った。
そんな中、シュタインはあまり知り合いでもない冒険者達から声をかけられた。引き抜きだ。
「俺は山風から抜ける気はない」
パーティーメンバーの引き抜きは原則禁止だ。
おかしいと思ったら、これだ。
「お前の新しい彼女の従魔、すげえから」
「はぃぃぃぃっ?」
あちこち案内したのが、誤解されたようだ。
「ないない、ないない、絶対ないない」
シュタインは否定した。
ユイさんは優しい人だけど、あの人に似合うのは包容力のある男性だろうと、シュタインは勝手に思っている。雰囲気的に、ユイさんは年上男性が似合うのでは、と。弟のコウタと同い年のシュタインは思う。確実に年上のユイさん。別に年上だからではないが、自分は不釣り合いだ。
しかも、あの2匹を受け入れて、その上であの2匹を納得させるような人物。
この世界に存在するか? そんな男?
自分ではない、絶対ない。
一薙ぎで吹き飛ばされるだろう。
勘違いされたままなら、ミズサワさん達が迷惑だろうし、御用聞きとして動きにくくなる。
シュタインは必死に否定して回った。
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