五年も笑わなかった辺境伯の娘が、追放された保育係の令嬢の前で初めて笑った
侯爵令嬢クラリスは、五年間、兄夫婦の公爵家で三人の御子の保育を任されてきた。表向きは「下女扱い」だったが、彼女の保育記録には毎日の歌・手作りの絵札・夜泣きの記録が綿密に綴られていた。「育児など侍女の手伝い。本物の貴族のすることではないわ」兄嫁の侮辱に、クラリスは保育記録帳を置いて去る。訪ねた先は、妻を亡くした辺境伯ロタールの屋敷だった。彼の娘リーリャは六歳、母を亡くして以来、誰の前でも笑わなかった。「五年、御子さま方を見続けたあなたなら、リーリャの心も読めるだろうか」ロタールの不器用な依頼に、クラリスは静かに頷く。春が来る頃、リーリャは初めて声を上げて笑った。クラリスの隣で、ロタールも気づくと微笑んでいた——五年ぶりに。
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2025/06/22
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