もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

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閑話 元Aランク冒険者

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「オルクがッ、オルクが襲って来るそうですッ」
 ギルドマスター部屋で、事務職員から、例のテイマーの到着報告を受けた。対応した中年男性職員が、報告に来て、すぐに別職員が飛び込んできた。
「どう言うことだ?」
 ウィークスが鋭く聞き直す。
「はい、例のテイマーからオルクが来るから対応してもらうようにと、若い冒険者が」
 ウィークスがギルドマスターのドナートと視線を見合わせる。
「俺が行く」
「頼む」
 ウィークスが剣を手に飛び出す。
 報告に来た職員から、外にテイマーの連れがいることを知る。
 確か、テイマーの連れは弟で黒髪黒目、かなりの容量のアイテムボックスを持っているとの情報がある。
 ギルドのロビーはごった返したいた。
 オルクの言葉に、みな、混乱している。
「報告に来た冒険者は?」
「彼です」
 ちらり、と見ると、若い冒険者はすくむ。
「おい、テイマーの連れは分かるか?」
「は、はい」
 若い冒険者は、ウィークスの迫力にビビりながら、ギルドの外に。
 外には、立派な黒毛の魔法馬。白い毛並みのウルフが3匹、ジャガーが2匹。黒髪黒目の男1人。その男は、手綱持ちの子供に、青いバンダナのウルフとジャガーを繋いでいる紐を託している。
「失礼」
「はい」
「テイマー殿の連れですか?」
「そうですが」
 男はウィークスの問いに答えるが、その目には警戒色が浮かんでいる。
「私は冒険者副ギルドマスターウィークスと申します」
 丁寧に挨拶するが、警戒色は消えない。
 それはそうだ。話に聞いたが、この男の姉はあちこちのギルドで情報共有されている人物だ。要注意人物だと、認識されているのを、感じているんだろうし、その姉を狙う輩も見てきたはずた。
「テイマー殿がオルクの迎撃に向かわれましたね?」
「そうです。私も今から姉を迎えに行きます」
「同行させて頂けませんか? オルク程度なら、私が倒せます」
 迷う男に、青いバンダナを巻いたウルフが吠える。
「わんわんっ、わんわんっ」
 尻尾を振って元気よく吠える。その姿を見て、男は決断する。
「分かりました、ただ一つお願いがあります。この子達を他の誰かが手を出さないように、見張っていただけますか?」
 男はアイテムボックスから、巨大な乳母車を出して、赤いバンダナのウルフ2匹とジャガー1匹を乗せて、手綱持ちの子供に託す。手綱持ちの子供は、巨大な乳母車に、目を輝かせている。
「承知した。おい」
「はい」
 知らせをした職員に目配せ。職員はすぐに手配に入る。
「乗ってください」
「ありがとうございます」
「ノワール、頼むばい」
 すでに人が引いている。
 驚くほど揺れない馬車。おそらく衝撃吸収の付与がされているのだろう。一個人が持つには、高級過ぎるが、流石、ドラゴンを一撃で倒した従魔を持つテイマーか。しかも個人で魔法馬を持っている。かなりの資産があるのだろう。
 馬車はノータを飛び出す。既に何人かの農夫達が逃げ込んできている。
「ノワールッ、姉ちゃんの所にッ」
「ブヒヒヒンッ」
 かなり賢い魔法馬のようだ。
 遠いが、飛び出してすぐテイマーを見つける。
「姉ちゃんッ」
 男が叫ぶ。
 まずいぞ。
 周りにオルクが迫っている。
 黒髪のテイマーの近くには、肝心の従魔がいない。農家らしき夫婦を守ろうとしている。しかも、テイマーが手にしているのは、なんとフライパン。
(嘘だろ、フライパン?)
 だが、テイマーの顔つきが変わる。
 覚悟を決めた顔だ。
 だが、次の瞬間、白いジャガーが飛び込んでくる。その突進で、数匹のオルクが、弾き飛ばされていく。一唸り、それから光を放ち、オルクを次々に倒していく。クリムゾンジャガーは魔法を操ると聞いたが、恐ろしい精度だ。全く無駄なく、全魔法が着弾する。
 もう、精度が高いくらいで表現出来ないほとだ。
 馬車がたどり着き、やっとテイマーの前に。
 フライパンを持って、オルクに対抗しようとしていたのは、ただの黒髪黒目の女性。
 自己紹介すると、向こうも丁寧に答えた。こちらには警戒色はない。
 オルクはすべて倒されていて、自分の出る幕はなかった。それから若い夫婦と小さな少女を保護。テイマーはジャガーと、オルクに拐われた赤ん坊の救出に向かう。なんとこの男、支援魔法が使えるようだ。支援魔法はなかなか貴重な存在だ。しかも、かなりの容量のアイテムボックス持ち。
(最高の後方職じゃないか)
 支援魔法があれば、戦闘の進みは変わる。かつて所属していたパーティーのリーダーが使えたので、その効果は身をもって理解している。リーダーは支援魔法だけに頼らず、自身も鍛え上げ、前衛として最前線でもその力を振るった。支援魔法、大容量のアイテムボックス、冒険者でパーティーを組むなら喉から手が出るほど欲しい人員だ。
 若い夫婦は血塗れだったが、ケガはなかった。
「ケガはどうした?」
 馬車の中で聞いてみた。なんと馬車の中に荷物はなく、ラグが敷かれ、ソファーが置いてあった。どこの貴族だ。
「さあ、気がついたら消えてました」
 夫婦は首を傾げている。
「ちょっといいか?」
 ウィークスは夫の服の匂いを嗅ぐ。
 ポーションだ。かつて、何度か世話になったポーション。
 よく見たら、夫婦共に、服の裂け具合と出血から、かなりの深手だったはず。そうなれば、単なるポーションのわけがない。
 それを夫婦に伝えると、かなり戸惑いの表情だ。
「ポーション代を支払えるか? 言葉だけでの謝礼ではすまん額だぞ」
 さあ、と顔色が悪くなる若い夫婦。
「いくらになりますか?」
「最低額、30万だな。2人で1本ではないだろう。おそらく2本は使っている」
「え、60万? そんなお金今はありません」
 怯える夫婦。確かに大金だ。それだけあれば、ノータならこの家族なら余裕を持って4ヶ月は生活できる。
「払えなければ、分割にしてもらうように、話を着けてやる。とにかく、今は赤ん坊の無事を祈れ」
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