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試運転⑤
「皆さん、お騒がせしました」
晃太がデザートのミルクアイスをアイテムボックスからだし、手分けして配膳。
「いえいえ、こちらがご馳走になったんですから」
「ああそうだな。あんなに旨いんだ、我慢出来ないのは仕方ないさ」
ロッシュさんとファングさんは笑って許してくれる。
Aの特産ミルクアイスが行き渡り、それぞれぱくり。
「うわあ、この氷菓子、うまあっ」
「ミルクの味が濃いっす」
「パクパクっ、んっ」
未成年組が大好評だ。アルスさんなんてあっという間に食べて、私ににこおっとアイスの器を差し出す。
「アルス、遠慮って言葉を覚えような」
ガリストさんが手付かずの自分のアイスを半分渡す。
「ん?」
アルスさんはキラキラの青い目で、こてん。くっ、かわいか。これが意図してやってないから、余計にかわいか。
「ユイさん、本当にあの依頼、もう出さないんすか? あ、出さないんですか?」
ハジェル君が最後の一口を食べて聞いてくる。
「依頼、あ、晃太のスキルアップね。そうやね、どうしようかね」
うーん。
「しばらくは出さないかな? 私達も上層階に行かないといけないしね」
「そおっすか」
ガックリと肩を落とすハジェル君。マアデン君まで。
「こら、ハジェル」
「だってリーダー」
「どうしたん?」
「だって、あの依頼の時、ケイコお母さんのご飯食べれるから、楽しみだったんす。あ、です」
母が嬉しそうに笑っている。
「なら、もしスキルアップが上手く行かなくなったら、あの依頼出して、手伝ってくれる?」
「「はいっ」」
あははん、シンクロしてる。
どちらにしても、しばらくは依頼をこなして、それから晃太の支援魔法のスキルアップや。まだDになるのには時間がかかるだろうし、更にCに上げるなら、あの依頼を出さざるを得ない状況になるはず。山風の皆さん、いい人達だし、仔達も懐いているからね。頼むなら、山風さんかな?
「ユイちゃん、俺も手伝う」
やめて、かわいか未成年。そんな純粋無垢に言われたら、三十路女の息が上がるがな。はーっ、はーっ。
「あんたどうしたん? 動悸ね?」
母が私のおかしな息づかいに、変な目をしている。隣の晃太が、聞かんどき、と言ってる。
「ちゃん付けされて、興奮しとるだけや」
「あんた、本当に張り倒すよ」
はーっ。
それから和やかにお話しして皆さんご帰宅。
「ケイコさん。急に押し掛けてしまったのに、たくさんご馳走になりました」
「ご馳走さまです」
「どれも美味しかったです」
「ケイコお母さん、ご馳走様でした」
「ケイコお母さん、美味しかったっすっ。あ、です」
山風の皆さんがペコリ。
「テイマーさんのお母さん、なんの手土産もないのに、ご馳走になりました」
「ご馳走さまです。ほら、アルス」
「また食べたい」
「アルスちゃん。ご馳走になったんだから、そのご挨拶よ」
「ん。ごちそうさま」
「奥さん、ご馳走になりました」
金の虎の皆さんもご挨拶したが、いざ帰る時に、アルスさんがごねる。
「いや、帰らない。ユイちゃんとこがいい」
ぷい、みたいな。
かわいかね。
「ダメだアルス、帰るぞ」
「そうよ、迷惑になるよ」
「今日は帰りましょうね」
「アルス、帰らないといかんぞ」
一斉に言われて、アルスさんがぶー。か、かわいか。
「ユイちゃんとこのご飯、美味しい」
あ、それね。ふふん、大分なれたよ。かわいか未成年の、ちゃん。
母が嬉しそうだ。
「また、遊びにおいで。美味しいの作っとくけんね」
母がそう言うと、アルスさんはにこおっ、と笑う。か、かわいかあ。マアデン君とハジェル君も後ろで自己主張して、母が笑っている。
「うん、バイバイ」
アルスさんは大人しくリィマさんの元に。
金の虎の皆さんがペコペコしながら帰って行く。
山風の皆さんもペコリして帰って行った。
「シュタインさん、やばいっすよっ」
「何がだよ?」
「ユイさん、あのホークって人に取られちゃいますよっ」
「ぶふっ、な、何を言ってんだよっ」
ハジェルの言葉にシュタインが噴き出す。
「せっかく髪切ってユイさんが格好いいって言ってくれても、シュタインさん、アピール力が弱いっす」
「黙れ、つい最近まで未成年が」
「だって姉ちゃんが言っていたっす。アピールされなきゃ、言葉にされなきゃ、分からないって」
「ぐっ」
妙な説得力があるハジェルの言葉。
「そう言えば、ハジェルの姉さん、いつ祝福を受けるんだ?」
祝福を受ける、こちらの結婚式の意味がある。教会で親族、親しい人達が立会人となり祝福を受ける。ほとんどがそれで終了。金銭的に余裕があるか、社会的地位があるものはレストラン等を貸し切り食事をする。こちらで言う披露宴だ。
「2ヶ月後っす。あの、それでリーダー」
「分かっているさ、その頃にはマーファにいるようにするから心配するな」
「ありがとうございますっ」
ハジェルにとっては兄が父親で、姉が母親代わりだ。その姉が結婚するまでの行程で、相手の男性に、ずばあ、と言いはなっていた。
「まあ、ユイさん、そっち系には鈍そうだしなあ。ハジェルの言うことも一理あるんじゃないか?」
ラーヴが他人事だ。
「な、なんでそう言えるんだ? あ、相手は、その戦闘奴隷だし」
「お前なあ」
ため息をつくラーヴ。
「ユイさんとあの戦闘奴隷達の関係みたら、普通じゃないだろ? 奴隷相手でも『さん』や『ちゃん』だぞ。おそらく護衛していた時の延長みたいじゃないか。ユイさん、奴隷と言う扱いしてないし、多分自覚もなさそうだし」
ふう、と息をつくラーヴ。
「どんな理由であの魔法馬に乗るのか知らんが、数日内にはホークって奴と一緒に乗るだろ。そうなれば、ユイさんでも嫌でも意識するんじゃないか?」
「だからどうして?」
「あのさ、あんな馬にユイさんみたいな素人乗せるなら、後ろに乗せるわけないだろ? 前に乗せるだろ。そうなりゃ、すげえ密着だぞ」
想像する、ユイの後ろにホークが乗り、たくましい腕で包み込む。
「あー…………」
真っ赤になってるユイが簡単に想像できる。
「でも、あのホークって人が、ユイさんに気があるかどうか分からないんじゃないですか?」
マアデンが援護する。
「まあ、それならいいけどさ。確かに見た感じ、忠臣って感じだったけどさ。タオル渡して風邪引きますよって、どこかの夫婦みたいに見えたぞ。意識してなかったとしてもだ、俺にはそう見えた。しかもあの魔法馬を乗りこなして、男の俺でも格好よく見えたし」
「確かに、まさかあの魔法馬を乗りこなせるとは思えなかった。あれはかなりの騎乗能力だな」
ラーヴの言葉にロッシュが同意。
「ラーヴさんもリーダーもどっちの味方っすかっ。シュタインさんの甲斐性ピンチっす」
ガツンッ。
シュタインのげんこつが落ちる。
「お前、一言多いんだよ」
マアデンが呆れる。
「どちらにしても、俺達はどっちの味方じゃない。男女の仲なんて、関わるわけないだろ?」
「そうだな。シュタイン、まあ、頑張れや」
ロッシュ、ラーヴの妻帯者2名がなんともあっさりと応援。
かくん、と肩を落とすシュタイン。
「でも、もしユイさんとシュタインさんが仲良くなったら、コウタさんがうちに同行してくれるかもしれないっす。あのアイテムボックスに支援っす。それにきっとケイコお母さんがご飯持たせてくれるかもしれないっす」
一瞬止まる、ロッシュとラーヴ。
「それが無理でも、ユイさんなら弁当持たせてくれるかもしれないっす。カレー、食えるかも知れないっす」
「結局、食欲かよ」
シュタインがハジェルに突っ込み。
「だったら、シュタインさん、ユイさんが他の男と仲良くしてもいいんすか?」
「ぐっ」
ハジェルの指摘に詰まるシュタイン。
「もうよせハジェル。シュタインを焚き付けるな」
ロッシュがため息交じりにハジェルに注意。
「シュタイン、ユイさんをどう想うかは、お前の自由だ。ただ、向こうに迷惑だけはかけるなよ。それに、ユイさんの後ろに何が控えているか分かっているんだろ?」
魔の森の守護者、フォレストガーディアンウルフ。
通った後は血の道ができる、クリムゾンジャガー。
そして、ユリアレーナのご意見番、ダイチ・サエキ。
「ハードルが高い事は、分かっているさ」
息を吐き出すシュタイン。高位貴族でさえ、囲い込む、もしくは手に入れることが困難な女性だ。
分かっている。誰もが欲するのは、ユイではない、後ろにいる従魔達だ。
だが、シュタインにとって、従魔は二の次だ。
ただ、ユイが命の恩人だからじゃない。
見舞いに来てくれた時に、ユイは帰り際に引っ込みのつかなくなってしまったシュタインの手を、「お大事に」と両手で包み込んだ。ユイにしてみたら、なんてことない行動だったが。ユイを女性として意識していたシュタインが、完全に落ちた。
もう、ドラゴンを一撃にした従魔達を従えてるとか関係がない。ただ、ずっと手を繋いでいたいし、それ以上の事を考える。
ユイはわざわざ、身を屈めてシュタインの手を包んだ。その瞬間、見えてしまった。あの日、ゆったりとした襟元のシャツだったためか、はっきりシュタインは見てしまった。
くっきりと、ユイの胸元を。ちらり、と見えた、それを覆う、白いレースを。並ぶ、黒子まで、はっきりと。
女の裸を見たことがないわけでない。シュタインも健全な成人男性だし、女性と付き合った事もある。
だが、日頃ポンチョを纏い、首もとを見せないユイのそれはシュタインに衝撃を与えてしまった。
ユイとコウタが帰った後、真っ赤になって口を押さえていたシュタインを、病室に訪れたロッシュが発見。
「惚れたか?」
「あの状況で惚れるなって方が無理だろッ」
それからシュタインはユイを目線で追いかけているが、どうしたらいいものか分からない状態だ。子供じゃあるまいし、と思っていたが、アルストリアの出現でユイの男性経験のなさが露見。そうなると積極的にいってドン引きされたらどうしよう、と情けなく悩んだ。そうこうしているうちに、ユイは戦闘奴隷を購入して帰って来た。
そして、今日の魔法馬の乗馬だ。
ラーヴの言うことも、ハジェルの言うことも分かる。そしてマアデンの言うこともだ。まだ、あの戦闘奴隷のリーダーが、ユイに好意を抱いているか分からないし、立場を弁えている可能性が高い。まだ、ユイに仕えて時間は経ってないはずだし。様子を見るべきか?
(いいや、うかうかしていられない)
シュタインは首を振る。
(言葉にしないと伝わらない)
よし、とシュタインは腹を括った。
その後、冒険者特有の不規則な生活の為に、ユイになかなか会えず、シュタインはギリギリしていたと、見習い2人が証言したとかしないとか。
晃太がデザートのミルクアイスをアイテムボックスからだし、手分けして配膳。
「いえいえ、こちらがご馳走になったんですから」
「ああそうだな。あんなに旨いんだ、我慢出来ないのは仕方ないさ」
ロッシュさんとファングさんは笑って許してくれる。
Aの特産ミルクアイスが行き渡り、それぞれぱくり。
「うわあ、この氷菓子、うまあっ」
「ミルクの味が濃いっす」
「パクパクっ、んっ」
未成年組が大好評だ。アルスさんなんてあっという間に食べて、私ににこおっとアイスの器を差し出す。
「アルス、遠慮って言葉を覚えような」
ガリストさんが手付かずの自分のアイスを半分渡す。
「ん?」
アルスさんはキラキラの青い目で、こてん。くっ、かわいか。これが意図してやってないから、余計にかわいか。
「ユイさん、本当にあの依頼、もう出さないんすか? あ、出さないんですか?」
ハジェル君が最後の一口を食べて聞いてくる。
「依頼、あ、晃太のスキルアップね。そうやね、どうしようかね」
うーん。
「しばらくは出さないかな? 私達も上層階に行かないといけないしね」
「そおっすか」
ガックリと肩を落とすハジェル君。マアデン君まで。
「こら、ハジェル」
「だってリーダー」
「どうしたん?」
「だって、あの依頼の時、ケイコお母さんのご飯食べれるから、楽しみだったんす。あ、です」
母が嬉しそうに笑っている。
「なら、もしスキルアップが上手く行かなくなったら、あの依頼出して、手伝ってくれる?」
「「はいっ」」
あははん、シンクロしてる。
どちらにしても、しばらくは依頼をこなして、それから晃太の支援魔法のスキルアップや。まだDになるのには時間がかかるだろうし、更にCに上げるなら、あの依頼を出さざるを得ない状況になるはず。山風の皆さん、いい人達だし、仔達も懐いているからね。頼むなら、山風さんかな?
「ユイちゃん、俺も手伝う」
やめて、かわいか未成年。そんな純粋無垢に言われたら、三十路女の息が上がるがな。はーっ、はーっ。
「あんたどうしたん? 動悸ね?」
母が私のおかしな息づかいに、変な目をしている。隣の晃太が、聞かんどき、と言ってる。
「ちゃん付けされて、興奮しとるだけや」
「あんた、本当に張り倒すよ」
はーっ。
それから和やかにお話しして皆さんご帰宅。
「ケイコさん。急に押し掛けてしまったのに、たくさんご馳走になりました」
「ご馳走さまです」
「どれも美味しかったです」
「ケイコお母さん、ご馳走様でした」
「ケイコお母さん、美味しかったっすっ。あ、です」
山風の皆さんがペコリ。
「テイマーさんのお母さん、なんの手土産もないのに、ご馳走になりました」
「ご馳走さまです。ほら、アルス」
「また食べたい」
「アルスちゃん。ご馳走になったんだから、そのご挨拶よ」
「ん。ごちそうさま」
「奥さん、ご馳走になりました」
金の虎の皆さんもご挨拶したが、いざ帰る時に、アルスさんがごねる。
「いや、帰らない。ユイちゃんとこがいい」
ぷい、みたいな。
かわいかね。
「ダメだアルス、帰るぞ」
「そうよ、迷惑になるよ」
「今日は帰りましょうね」
「アルス、帰らないといかんぞ」
一斉に言われて、アルスさんがぶー。か、かわいか。
「ユイちゃんとこのご飯、美味しい」
あ、それね。ふふん、大分なれたよ。かわいか未成年の、ちゃん。
母が嬉しそうだ。
「また、遊びにおいで。美味しいの作っとくけんね」
母がそう言うと、アルスさんはにこおっ、と笑う。か、かわいかあ。マアデン君とハジェル君も後ろで自己主張して、母が笑っている。
「うん、バイバイ」
アルスさんは大人しくリィマさんの元に。
金の虎の皆さんがペコペコしながら帰って行く。
山風の皆さんもペコリして帰って行った。
「シュタインさん、やばいっすよっ」
「何がだよ?」
「ユイさん、あのホークって人に取られちゃいますよっ」
「ぶふっ、な、何を言ってんだよっ」
ハジェルの言葉にシュタインが噴き出す。
「せっかく髪切ってユイさんが格好いいって言ってくれても、シュタインさん、アピール力が弱いっす」
「黙れ、つい最近まで未成年が」
「だって姉ちゃんが言っていたっす。アピールされなきゃ、言葉にされなきゃ、分からないって」
「ぐっ」
妙な説得力があるハジェルの言葉。
「そう言えば、ハジェルの姉さん、いつ祝福を受けるんだ?」
祝福を受ける、こちらの結婚式の意味がある。教会で親族、親しい人達が立会人となり祝福を受ける。ほとんどがそれで終了。金銭的に余裕があるか、社会的地位があるものはレストラン等を貸し切り食事をする。こちらで言う披露宴だ。
「2ヶ月後っす。あの、それでリーダー」
「分かっているさ、その頃にはマーファにいるようにするから心配するな」
「ありがとうございますっ」
ハジェルにとっては兄が父親で、姉が母親代わりだ。その姉が結婚するまでの行程で、相手の男性に、ずばあ、と言いはなっていた。
「まあ、ユイさん、そっち系には鈍そうだしなあ。ハジェルの言うことも一理あるんじゃないか?」
ラーヴが他人事だ。
「な、なんでそう言えるんだ? あ、相手は、その戦闘奴隷だし」
「お前なあ」
ため息をつくラーヴ。
「ユイさんとあの戦闘奴隷達の関係みたら、普通じゃないだろ? 奴隷相手でも『さん』や『ちゃん』だぞ。おそらく護衛していた時の延長みたいじゃないか。ユイさん、奴隷と言う扱いしてないし、多分自覚もなさそうだし」
ふう、と息をつくラーヴ。
「どんな理由であの魔法馬に乗るのか知らんが、数日内にはホークって奴と一緒に乗るだろ。そうなれば、ユイさんでも嫌でも意識するんじゃないか?」
「だからどうして?」
「あのさ、あんな馬にユイさんみたいな素人乗せるなら、後ろに乗せるわけないだろ? 前に乗せるだろ。そうなりゃ、すげえ密着だぞ」
想像する、ユイの後ろにホークが乗り、たくましい腕で包み込む。
「あー…………」
真っ赤になってるユイが簡単に想像できる。
「でも、あのホークって人が、ユイさんに気があるかどうか分からないんじゃないですか?」
マアデンが援護する。
「まあ、それならいいけどさ。確かに見た感じ、忠臣って感じだったけどさ。タオル渡して風邪引きますよって、どこかの夫婦みたいに見えたぞ。意識してなかったとしてもだ、俺にはそう見えた。しかもあの魔法馬を乗りこなして、男の俺でも格好よく見えたし」
「確かに、まさかあの魔法馬を乗りこなせるとは思えなかった。あれはかなりの騎乗能力だな」
ラーヴの言葉にロッシュが同意。
「ラーヴさんもリーダーもどっちの味方っすかっ。シュタインさんの甲斐性ピンチっす」
ガツンッ。
シュタインのげんこつが落ちる。
「お前、一言多いんだよ」
マアデンが呆れる。
「どちらにしても、俺達はどっちの味方じゃない。男女の仲なんて、関わるわけないだろ?」
「そうだな。シュタイン、まあ、頑張れや」
ロッシュ、ラーヴの妻帯者2名がなんともあっさりと応援。
かくん、と肩を落とすシュタイン。
「でも、もしユイさんとシュタインさんが仲良くなったら、コウタさんがうちに同行してくれるかもしれないっす。あのアイテムボックスに支援っす。それにきっとケイコお母さんがご飯持たせてくれるかもしれないっす」
一瞬止まる、ロッシュとラーヴ。
「それが無理でも、ユイさんなら弁当持たせてくれるかもしれないっす。カレー、食えるかも知れないっす」
「結局、食欲かよ」
シュタインがハジェルに突っ込み。
「だったら、シュタインさん、ユイさんが他の男と仲良くしてもいいんすか?」
「ぐっ」
ハジェルの指摘に詰まるシュタイン。
「もうよせハジェル。シュタインを焚き付けるな」
ロッシュがため息交じりにハジェルに注意。
「シュタイン、ユイさんをどう想うかは、お前の自由だ。ただ、向こうに迷惑だけはかけるなよ。それに、ユイさんの後ろに何が控えているか分かっているんだろ?」
魔の森の守護者、フォレストガーディアンウルフ。
通った後は血の道ができる、クリムゾンジャガー。
そして、ユリアレーナのご意見番、ダイチ・サエキ。
「ハードルが高い事は、分かっているさ」
息を吐き出すシュタイン。高位貴族でさえ、囲い込む、もしくは手に入れることが困難な女性だ。
分かっている。誰もが欲するのは、ユイではない、後ろにいる従魔達だ。
だが、シュタインにとって、従魔は二の次だ。
ただ、ユイが命の恩人だからじゃない。
見舞いに来てくれた時に、ユイは帰り際に引っ込みのつかなくなってしまったシュタインの手を、「お大事に」と両手で包み込んだ。ユイにしてみたら、なんてことない行動だったが。ユイを女性として意識していたシュタインが、完全に落ちた。
もう、ドラゴンを一撃にした従魔達を従えてるとか関係がない。ただ、ずっと手を繋いでいたいし、それ以上の事を考える。
ユイはわざわざ、身を屈めてシュタインの手を包んだ。その瞬間、見えてしまった。あの日、ゆったりとした襟元のシャツだったためか、はっきりシュタインは見てしまった。
くっきりと、ユイの胸元を。ちらり、と見えた、それを覆う、白いレースを。並ぶ、黒子まで、はっきりと。
女の裸を見たことがないわけでない。シュタインも健全な成人男性だし、女性と付き合った事もある。
だが、日頃ポンチョを纏い、首もとを見せないユイのそれはシュタインに衝撃を与えてしまった。
ユイとコウタが帰った後、真っ赤になって口を押さえていたシュタインを、病室に訪れたロッシュが発見。
「惚れたか?」
「あの状況で惚れるなって方が無理だろッ」
それからシュタインはユイを目線で追いかけているが、どうしたらいいものか分からない状態だ。子供じゃあるまいし、と思っていたが、アルストリアの出現でユイの男性経験のなさが露見。そうなると積極的にいってドン引きされたらどうしよう、と情けなく悩んだ。そうこうしているうちに、ユイは戦闘奴隷を購入して帰って来た。
そして、今日の魔法馬の乗馬だ。
ラーヴの言うことも、ハジェルの言うことも分かる。そしてマアデンの言うこともだ。まだ、あの戦闘奴隷のリーダーが、ユイに好意を抱いているか分からないし、立場を弁えている可能性が高い。まだ、ユイに仕えて時間は経ってないはずだし。様子を見るべきか?
(いいや、うかうかしていられない)
シュタインは首を振る。
(言葉にしないと伝わらない)
よし、とシュタインは腹を括った。
その後、冒険者特有の不規則な生活の為に、ユイになかなか会えず、シュタインはギリギリしていたと、見習い2人が証言したとかしないとか。
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